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後日談5 ウェディングドレスの選び方(交互視点)
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翌朝、目を覚ますと、愛する人がすやすやと腕の中で眠っていた。
俺はゆっくりと腕を動かして、その身体を撫でていく。昨夜、身体を重ねた後、梢ちゃんはそのまま眠ってしまった。俺も本当はそのまま彼女の中でまどろんでしまいたかったけれど、風邪を引いてはまずいから、そして彼女は風呂に入っていないことを気にするだろうから、幸せなだるさを残した身体を無理矢理起こして、身体を拭いてパジャマを着せておいた。起きた時、少しでもさっぱりして感じられるように。
夢を見ているのか、梢ちゃんの閉じた目はときどき小さく震えた。うっすらと開いた唇からはわずかに白い歯が覗いている。すぅすぅと安らかな寝息が、俺の心を和ませた。
許されるものなら、このまま梢ちゃんの寝顔を見て一日を過ごしたい――けど、それは許されない。今日はお得意様がご来店予定だし、いざというとき休めるようにするためにも、日頃の勤務態度はそれなりの評価を得ておかなければいけない。
ゆっくりと、頭の下の腕を引き抜いた。
梢ちゃんが、少しだけ開いていた唇を閉じる。起こしたかと動きを止めたけれど、起きてはいないらしい。
梢ちゃんの唇の端が、わずかに引き上がる。
――どんな夢、見てるの。
ふにゃりとした幸せそうな寝顔に、俺の頬もつられて緩んだ。横に頬杖をついて、しばらくその顔を見つめた。剥き出しの肩からずるりと布団が落ちる。
梢ちゃんにはきちんと服を着せたけれど、自分は面倒くさかったから、ほとんど裸のままだ。年齢よりも幼く見えるのは、寝ているときも起きているときも変わらないけれど――昨夜の姿は――
――勝くん。
ほとんどすすり泣いていた梢ちゃんは、荒い息の合間に俺の名を呼び続けた。その切羽詰まった声は、聞いたこともないくらいにエロくて、それなのに無邪気で、コントロールの利かない自分の身体に戸惑っているみたいだった。
その声を思い出して、自分の腕に顔を埋める。馬鹿みたいな感想だけど、昨日の夜の梢ちゃんは、最高だった。今までで一番、最高のセックスだった。
どうしてあんなによかったんだろう。互いの気持ちが重なったんだろうか。タイミング? それとも、ウェディングドレスとタキシードのせい?
そういえば、ドレスを着た梢ちゃんに、俺はいつもよりも何度もきれいだと言った。かわいいと言った。梢ちゃんは照れ臭そうだったけれど、まんざらでもない顔をしていた。着替える度に俺の言葉を期待するようなまなざしは、少女のようにかわいかった。
今までも、甘い空気になったときや前戯の中で、そういう言葉を囁いたことはあった。けれど、一日通して、彼女にそう伝え続けたのは初めてだ――もしかしたら、それが彼女の心と身体を解したのかもしれない。
そんな風に考えて、理性で気持ちを落ち着けようとしたけど無理だった。自分の腕の中に顔を隠して、ゆっくりとため息をつく。ただでさえ朝の元気を取り戻している下腹部は、昨夜の梢ちゃんの姿態を思い出して期待に高ぶっていた。
――けど、ここは梢ちゃんの家だ。まさかトイレを借りてひとりで興じるわけにもいかない。
数度、深呼吸を繰り返して、顔を上げる。隣を見やると、すやすやと聞こえる寝息にまた締まりなく頬が緩む。
ほんとに――なんでこう――可愛いんだろう。
俺はその頬にそっと口づけて、眠りを妨げないようにゆっくりとベッドから降りた。時計を見ると、もうそろそろ起きて準備をすべき時間だ。
またうっすらと唇の開いた梢ちゃんの髪を優しく撫でて、身支度を始める。王子様、と言った昨夜の彼女の表情を思い出した。
王子様、なんてあまりにも俺には不似合いだと思うけど、梢ちゃんのためなら何にでもなろう。
緩んだ口元のまま起き出して、シャツやネクタイはいつもよりもきっちりと身につけた。
梢ちゃんが起きたとき――あの寝ぼけ眼で、俺に見惚れてくれることを、ちょっとだけ期待しながら。
俺はゆっくりと腕を動かして、その身体を撫でていく。昨夜、身体を重ねた後、梢ちゃんはそのまま眠ってしまった。俺も本当はそのまま彼女の中でまどろんでしまいたかったけれど、風邪を引いてはまずいから、そして彼女は風呂に入っていないことを気にするだろうから、幸せなだるさを残した身体を無理矢理起こして、身体を拭いてパジャマを着せておいた。起きた時、少しでもさっぱりして感じられるように。
夢を見ているのか、梢ちゃんの閉じた目はときどき小さく震えた。うっすらと開いた唇からはわずかに白い歯が覗いている。すぅすぅと安らかな寝息が、俺の心を和ませた。
許されるものなら、このまま梢ちゃんの寝顔を見て一日を過ごしたい――けど、それは許されない。今日はお得意様がご来店予定だし、いざというとき休めるようにするためにも、日頃の勤務態度はそれなりの評価を得ておかなければいけない。
ゆっくりと、頭の下の腕を引き抜いた。
梢ちゃんが、少しだけ開いていた唇を閉じる。起こしたかと動きを止めたけれど、起きてはいないらしい。
梢ちゃんの唇の端が、わずかに引き上がる。
――どんな夢、見てるの。
ふにゃりとした幸せそうな寝顔に、俺の頬もつられて緩んだ。横に頬杖をついて、しばらくその顔を見つめた。剥き出しの肩からずるりと布団が落ちる。
梢ちゃんにはきちんと服を着せたけれど、自分は面倒くさかったから、ほとんど裸のままだ。年齢よりも幼く見えるのは、寝ているときも起きているときも変わらないけれど――昨夜の姿は――
――勝くん。
ほとんどすすり泣いていた梢ちゃんは、荒い息の合間に俺の名を呼び続けた。その切羽詰まった声は、聞いたこともないくらいにエロくて、それなのに無邪気で、コントロールの利かない自分の身体に戸惑っているみたいだった。
その声を思い出して、自分の腕に顔を埋める。馬鹿みたいな感想だけど、昨日の夜の梢ちゃんは、最高だった。今までで一番、最高のセックスだった。
どうしてあんなによかったんだろう。互いの気持ちが重なったんだろうか。タイミング? それとも、ウェディングドレスとタキシードのせい?
そういえば、ドレスを着た梢ちゃんに、俺はいつもよりも何度もきれいだと言った。かわいいと言った。梢ちゃんは照れ臭そうだったけれど、まんざらでもない顔をしていた。着替える度に俺の言葉を期待するようなまなざしは、少女のようにかわいかった。
今までも、甘い空気になったときや前戯の中で、そういう言葉を囁いたことはあった。けれど、一日通して、彼女にそう伝え続けたのは初めてだ――もしかしたら、それが彼女の心と身体を解したのかもしれない。
そんな風に考えて、理性で気持ちを落ち着けようとしたけど無理だった。自分の腕の中に顔を隠して、ゆっくりとため息をつく。ただでさえ朝の元気を取り戻している下腹部は、昨夜の梢ちゃんの姿態を思い出して期待に高ぶっていた。
――けど、ここは梢ちゃんの家だ。まさかトイレを借りてひとりで興じるわけにもいかない。
数度、深呼吸を繰り返して、顔を上げる。隣を見やると、すやすやと聞こえる寝息にまた締まりなく頬が緩む。
ほんとに――なんでこう――可愛いんだろう。
俺はその頬にそっと口づけて、眠りを妨げないようにゆっくりとベッドから降りた。時計を見ると、もうそろそろ起きて準備をすべき時間だ。
またうっすらと唇の開いた梢ちゃんの髪を優しく撫でて、身支度を始める。王子様、と言った昨夜の彼女の表情を思い出した。
王子様、なんてあまりにも俺には不似合いだと思うけど、梢ちゃんのためなら何にでもなろう。
緩んだ口元のまま起き出して、シャツやネクタイはいつもよりもきっちりと身につけた。
梢ちゃんが起きたとき――あの寝ぼけ眼で、俺に見惚れてくれることを、ちょっとだけ期待しながら。
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