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第一部
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部活が終わった後スマホを見ると、中学の友達からメッセージが来ていた。
【○日、久しぶりに皆にアイス屋さんに行かん?】
元女バス部のメンバーへの一斉送信だ。私が返す前に、数人が了解の旨返事をしている。
【了解。でも午前中部活】
【じゃあおやつの時間にしよー!】
【えー!うち午後から部活やもん!】
【食べに行くなら午後やろー】
賑やかなメールについつい笑顔になる。
六人いたメンバーのうち、私を含む三人は高校でもバスケ部に入り、一人はハンドボール部に入った。残る二人は文化部だ。
「友達?」
マイコが私の顔を覗き込んで来る。マイコも女バスで、ポイントガードだ。背の高い私はゴール下でセンターを任されている。
「うん。元中の友達」
私は言いながらスマホをポケットにしまう。マイコはそっか、と微笑んだ。
駅まではバスで十五分、歩いて三十分かかる。都内から来たときには、車社会の距離感の違いに戸惑ったものだが、今では慣れっこだ。
「バス行ったとこやね。どうする?」
「歩く?」
「いいけど。タフやねぇ」
「お互いね」
さっきまで部活で走り回った後だ。他の部員がバスを待つ横を、声をかけながら歩いていく。
「ぐっちゃん、マイマイ、おつー」
三年のリョウヘイ先輩が手を上げて笑った。
「おつですー」
私とマイコも笑顔を返す。
歩きながら、ちらりとマイコを見た。
先輩たちが離れた頃合いを見計らって、声を潜める。
「よかったね、挨拶できて」
「っるさい」
顔を赤らめたマイコは私の背中を叩いた。同じポイントガードのリョウヘイ先輩に、マイコは憧れている。
私は笑いながら、照れているその顔を覗き込んだ。
「何!」
怒ったように言われて、
「可愛いなあと思って」
「あー! もう!」
マイコはぶんぶんと腕を振った。腕の動きに合わせて、ボブショートが揺れる。
マイコの髪は剛毛のくせっ毛らしい。それにストレートパーマをかけて、ボブショートに切って、内巻きにパーマをかけているそうだ。ざっくりしているように見えて、女の子らしいところがある。
「恋する乙女だねぇ」
マイコはむくれて見せた。
「それ言うなら、山ちゃんって、ぐっちゃんのこと、好きだよね」
「はあ? 何それ」
「何それ、やないよ。今日だって声かけてたやん」
「いや、がんばれって言っただけだよ。何でそれで好きとかなるの」
「だって、山ちゃん、女子に声かけたりせんやん」
「そうかなぁ。でも話しやすいよ」
「だからそれは、ぐっちゃんだからやろ」
「うん。だから、女扱いされてないからかもよ」
「えええー」
私に言いくるめられて、マイコがむくれた。私はその顔を見て笑った。
「それにしても、コーチ、人気だよね」
私が嘆息混じりに言うと、
「そうやね。彼女おるんやし、ぐっちゃんにヤキモチ妬かんでもいいのにね」
「だよねぇ。そう思うよねぇ」
言いながら、私は思い出す。
「彼」にも当時、彼女がいた。今は「彼」の妻になっている。
見に来てくれと言った練習試合に、たまたま東京から「彼」に会いに来ていた彼女も来てくれた。
笑顔の素敵な可愛い人で、お似合いの二人だった。
だから、逆にあんまり、悔しさはなかった。
「ぐっちゃん、修学旅行の自由行動どこ行こうか」
「そうだねぇ。あんまり遠くに行くと、移動で時間かかっちゃうもんね」
「そうやねぇ。蟹食べたいなぁ、蟹」
「色気より食い気だねぇ」
「そりゃ、先輩もおらんし」
「言うー」
私たちは言いながら笑い合う。駅までの道は三十分どころか四十分くらいに伸びたけど、二人で話しながら歩いていると、全然長く感じなかった。
【○日、久しぶりに皆にアイス屋さんに行かん?】
元女バス部のメンバーへの一斉送信だ。私が返す前に、数人が了解の旨返事をしている。
【了解。でも午前中部活】
【じゃあおやつの時間にしよー!】
【えー!うち午後から部活やもん!】
【食べに行くなら午後やろー】
賑やかなメールについつい笑顔になる。
六人いたメンバーのうち、私を含む三人は高校でもバスケ部に入り、一人はハンドボール部に入った。残る二人は文化部だ。
「友達?」
マイコが私の顔を覗き込んで来る。マイコも女バスで、ポイントガードだ。背の高い私はゴール下でセンターを任されている。
「うん。元中の友達」
私は言いながらスマホをポケットにしまう。マイコはそっか、と微笑んだ。
駅まではバスで十五分、歩いて三十分かかる。都内から来たときには、車社会の距離感の違いに戸惑ったものだが、今では慣れっこだ。
「バス行ったとこやね。どうする?」
「歩く?」
「いいけど。タフやねぇ」
「お互いね」
さっきまで部活で走り回った後だ。他の部員がバスを待つ横を、声をかけながら歩いていく。
「ぐっちゃん、マイマイ、おつー」
三年のリョウヘイ先輩が手を上げて笑った。
「おつですー」
私とマイコも笑顔を返す。
歩きながら、ちらりとマイコを見た。
先輩たちが離れた頃合いを見計らって、声を潜める。
「よかったね、挨拶できて」
「っるさい」
顔を赤らめたマイコは私の背中を叩いた。同じポイントガードのリョウヘイ先輩に、マイコは憧れている。
私は笑いながら、照れているその顔を覗き込んだ。
「何!」
怒ったように言われて、
「可愛いなあと思って」
「あー! もう!」
マイコはぶんぶんと腕を振った。腕の動きに合わせて、ボブショートが揺れる。
マイコの髪は剛毛のくせっ毛らしい。それにストレートパーマをかけて、ボブショートに切って、内巻きにパーマをかけているそうだ。ざっくりしているように見えて、女の子らしいところがある。
「恋する乙女だねぇ」
マイコはむくれて見せた。
「それ言うなら、山ちゃんって、ぐっちゃんのこと、好きだよね」
「はあ? 何それ」
「何それ、やないよ。今日だって声かけてたやん」
「いや、がんばれって言っただけだよ。何でそれで好きとかなるの」
「だって、山ちゃん、女子に声かけたりせんやん」
「そうかなぁ。でも話しやすいよ」
「だからそれは、ぐっちゃんだからやろ」
「うん。だから、女扱いされてないからかもよ」
「えええー」
私に言いくるめられて、マイコがむくれた。私はその顔を見て笑った。
「それにしても、コーチ、人気だよね」
私が嘆息混じりに言うと、
「そうやね。彼女おるんやし、ぐっちゃんにヤキモチ妬かんでもいいのにね」
「だよねぇ。そう思うよねぇ」
言いながら、私は思い出す。
「彼」にも当時、彼女がいた。今は「彼」の妻になっている。
見に来てくれと言った練習試合に、たまたま東京から「彼」に会いに来ていた彼女も来てくれた。
笑顔の素敵な可愛い人で、お似合いの二人だった。
だから、逆にあんまり、悔しさはなかった。
「ぐっちゃん、修学旅行の自由行動どこ行こうか」
「そうだねぇ。あんまり遠くに行くと、移動で時間かかっちゃうもんね」
「そうやねぇ。蟹食べたいなぁ、蟹」
「色気より食い気だねぇ」
「そりゃ、先輩もおらんし」
「言うー」
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