艶色談話

松丹子

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第四夜 学生に宿泊場所を提供した結果。

04

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「ん、ぅ、ふーー」
「はぁ……いっちゃんの唇、気持ちいい……」

 がっつり深く深くキスをされて、意識も飛びそうなくらいくらくらする。
 大輝は興奮に息を荒げつつ、隠せない性急さを自覚しているらしい。私のパジャマをまくし上げようか迷うように、布の上から身体をまさぐってくる。

「いっちゃん……いっちゃん」

 耳元で囁く声はかすれて切なげだ。ときどき当たる半身には屹立した熱を感じる。
 首もとにキスを落とし、頬を肩に擦り寄せて、切ない吐息をついた。

「はぁ……いっちゃんのにおいがする」

 嬉しげに言うとまた首もとにキスをする。
 大輝の手がおずおずとパジャマの裾を引き上げた。
 私は羞恥心に顔をそらす。
 情けないことにキスにすっかり感じてしまった身体は重く、自分の意思とは無関係にぐずぐずになりつつある。

 六歳も年下の大学生に主導権を握られるだなんて……
 それもあんなに可愛がっていた弟分に……

 思うが半ば現実逃避に近い。
 大輝の手はパジャマの裾から上衣の中へと入り、お腹の辺りを探ってくる。
 くすぐったがりの私はぴくんぴくんと反応してしまう。

「ちょ、だい、ふぁ」
「いっちゃん……くすぐったいの?」
「だ、やめ……」
「ふぅん」

 大輝は嬉しげに口元を緩め、私へのキスを再開した。
 手の動きは無骨なのに、濃厚なキスで溶かされて、ときどきぞくりと身体に痺れが走る。気付けば男に抱かれるときのそれと同じように腰がしなっていた。

「はぁ、ん、っ大輝」
「可愛い、いっちゃん」

 大輝は腹回りを往復していた手を、おずおずと引き上げた。

「……胸、さわってもいい?」

 その目は幼いときの面影を宿した上目遣いだ。

 ず、ずるい。こんなときに……

 私が黙ったままそっぽを向くと、大輝はやはりおずおずと、スポーツブラの上から胸をもんだ。
 カップの上からやわやわと揉むその手つきは確かに慣れない者のそれで、お互いが初めてだった元カレとの初体験を思い出す。四年の間ですっかりマンネリ化してしまったセックスも、思い返せば最初はこんな感じの……何とも言えない緊張があった。
 大輝の緊張が伝わってきて、私もそわそわと落ち着かない。ドキドキと高鳴る鼓動はそのせいだけではなく、身内に感じる罪悪感でもある。幼いときから知っている大輝。叔父さん叔母さんの子どもとしての大輝。

 一番身近なお姉さんだったから、恋と勘違いしているだけなんじゃないの?

 そんな思いは払拭しきれず、私を理性に引き留めようとする。

「いっちゃん……嫌?」
「嫌……ていうか……」

 戸惑っているのだ。弟分からこんな想いを打ち明けられることになるとも思っていなかった。
 でもそれも宿泊先を提供した自分の浅はかさによるのだから、自業自得といえばそうなのかもしれない。

「……大輝、寒くないの?」

 ふと、目の前の従弟がタオルを腰に巻いただけであることを思い出して心配になった。
 大輝は少し潤んだ目を弓なりに細めて笑うと、

「寒い。……いっちゃん、あっためて」

 言って、私を抱きしめた。
 厚い胸板が私の頬に当たる。
 あまりにリアルな男の身体に、一瞬息が止まった。
 それでもおずおずと手を伸ばし、背に回す。
 手をその背に這わせて、盛大に後悔した。
 浮き上がった肩甲骨。背筋の弾力。見ずとも分かる、美しい窪み。
 ぶわ、と顔が赤くなるのを自覚する。

 ーー筋肉やば。

 一応断っておくが、私は筋肉フェチではない。
 ではないが。だがしかし。
 そろりそろりと手を這わせ、大輝の肩に移動した。
 てのひらに包み込めないほどの大きな山がそこにあり、私の動きに反応してぴくりと動く。

「……いっちゃん」

 囁く声と共に、耳横にキスが下りてきた。

「どこでも、好きにさわっていいよ。いっちゃん、昔オリンピックで水泳選手見て、萌えーとかって言ってたよね。いっちゃんの好みの身体になれるのかなって、俺水泳始めたんだ」

 私は大輝の肩回りを探っていた手をぴくりと止めた。おずおず大輝の顔を見ると、彼は優しい笑顔を私に向けている。
 それは弟分の笑顔というより、愛する女を前にした男の笑顔だった。

「……大輝……」

 言葉を失った私の頬を、大輝の両手が包み込む。

「俺はもう何年も前から、ずっといっちゃんのものだよ。いっちゃんの好きにして。……その代わり、俺にたくさん、好きって言わせて」

 大輝は唇に触れるだけのキスをした。その唇がわずかに震えていることを感じて、私の胸が締め付けられた。

「好きだよ、好き。いっちゃんが大好きーー」

 大輝の手がパジャマのボタンを外しはじめる。上から順に、丁寧だけど震える指で。

「大輝ーー」

 私のためらいを飲み込むように、また濃厚なキスが降りてきた。



「んーーふ、ぁ……」

 濃厚なキスと、無骨な愛撫。胸をやわやわと揉み、脇腹を撫で、腰回りを撫でてお尻を揉む。
 どうすれば女が感じるかを知らない従弟は、私の反応だけを頼りに手を動かす。
 その手は、わざとなのかためらっているのか焦らしているのか、いっこうにズボンの中に入ることはなかった。
 知らずくねる腰を自覚しながら、それが歯痒くなってくる。

「……大輝」
「何?」

 気恥ずかしげな、嬉しそうな目で見られて、思わず下腹部が疼いた。

「……あの」

 自分の願望を言葉にするのはためらわれ、それでも下半身にときどきぶつかる大輝自身は間違いなく私の中心を求めている。

 ……ええい!

 私は大輝の身体にしがみつくと、反転しようと力を込めた。
 ……が、私の力ではちっとも動きそうにない。
 大輝は、きょとんとしてから目をまたたかせ、笑う。

「いっちゃんが上になる? いいよ」

 大輝は私の腰と背に手を回し、優しく反転した。

「いっちゃん……好きにして」

 気恥ずかしげに頬を染める男を見つつ、私は覚悟を決めた。
 大輝の腰のタオルを取り去ると、屹立がぴくんと跳ねる。
 すっかり立派なそれにごくりと生唾を飲むと、私はゴムを手にしようとベッドから離れかけ、大輝に手を捕まれた。

「これ。……使って?」

 にこりと差し出されたのは小さな箱。私は思わず眉を寄せる。

「計画的犯行……?」
「言ったじゃない、ずっとこうしたかったって」

 会話の間にも、大輝自身がときどきぴくんと震える。

「いっちゃん……ちょうだい?」

 大輝はまた、私がつい甘やかしてしまうあの顔をした。



 大輝にゴムを装着すると、私は自分の下着を取り去り、局部へといざなう。
 先端だけを数度出し入れする内にも、大輝は息を乱して質量を増した。

「あぁ、はぁ、いっちゃぁん」

 私を呼ぶ余裕のない声音にちょっときゅんとする。

 ……こういうパターンは初めてだけど、悪くないかも……

 新しい世界が開けてしまいそうな予感に、期待と不安が脳裏をよぎる。

「ああ……はやく……はやくぅ」

 まだ入口を往復するだけの動きに、大輝が嫌らしく腰をくねらせた。
 水泳で鍛えられた肉体美。そのしなる動きに、ぞわぞわと下腹部が痺れる。

「わ、わかった。いくよ。……」

 私は少しずつ、大輝をその身に沈ませていく。質量を保ったそれはぴくんぴくんとうごめきながら私の中へ沈んでいった。

「っあ、はぁ、ああ、気持ちい……いっちゃんっ、動いて、動いてよぅ」

 騎乗位の経験などほとんどない私は、とりあえず前後に腰をくねらせた。
 くちゅくちゅと接合部分から水音が響く。私の体重がかかっている分、普通よりも深く入っているはず。
 自分で動いているから私自身はそこそこ気持ちがいいのだが、大輝にとっては違うらしい。そわそわと落ち着かなげにしていたが、耐えかねたように息を吐き出した。

「うぅ、いっちゃん、俺も動くねっ」

 言うや、大輝は彼を跨ぐ私の腰をつかんで下から突き上げた。
 がつがつと奥を貪られ、私の胸が揺れる。

「あっ、は、ぁう!」
「はぁっ、はぁ、あっ、……いっちゃ、ぁあ、くぅっ」

 数度突き上げると、大輝は私の腕を引き寄せ抱きしめた。
 中にあった圧迫がわずかに縮む。

「っ、はぁ、はぁ、はぁ……あー、もったいない……」

 何がもったいないというのだろう。そう思っていると、

「せっかくいっちゃんと繋がれたのに……もっと長く繋がりたかった……」

 私をぎゅうと抱きしめる、その身体はしっとりと汗ばんでいる。
 私がその肩をさすると、大輝は私の手をやんわりと包んだ。
 手に頬を擦り寄せ、丸い目で私をじっと見つめる。

「いっちゃん」
「……何?」
「もっとしたい。いい?」

 問いかけるその目は少年のようだが、私の中に入ったままの彼自身は気付けば質量を取り戻しつつある。
 思わず腰を引こうとしたとき、大輝が私をかかえてくるりと反転した。
 あっさり組み敷かれ、鼻先にキスを落とされる。

「今日は、いっぱいいっちゃんの身体のこと勉強するね。最初は下手っぴかもしれないけど、満足してもらえるようにがんばるから」

 ちゅ、ちゅ、と私の身体にキスを落とす大輝は、すでにひとつ目の弱点として学んだらしいお腹回りをやんわりと探っている。

「ちょ、だい、き」

 ぴくんぴくんと反応するのは表面だけでなく、まだ彼と繋がったままの中もだ。
 私の反応に、大輝は嬉しそうな笑顔を見せた。

「嬉しい。ああ、俺いっちゃんの中にいるんだ。すごい嬉しい。嬉しいから、すぐ復活しちゃう」

 大輝は一度ずるりと自身を出して、ゴムをつけかえた。
 ずいぶん手早いものだと思った私の視線に気づいた彼は、照れ臭そうに笑う。

「練習できることは練習しといたんだよ。いっちゃんにはやく追いつけるように」

 邪気のない笑顔で言いながら、私の秘部の入口にその先端を添えた。

「いっちゃん。いっちゃんのいいところ、たくさん教えて」

 ぬるぬると私の中から出てくるものをこすりつけ、大輝が私の中に再び沈んでいく。

「んぁ……」

 私の口から甘い声が漏れた。

「可愛い……いっちゃん……」

 ずんずんと奥まで、大輝が入っていく。
 かと思えば、とたんに申し訳なさそうに眉尻を下げた。

「……ああ、ごめん」
「な、なに?」
「やっぱり、もう一回好きにさせて」

 もう一回だけって?

 言葉に含みを感じて首を傾げる私の中に、大輝は残りを一気に挿し入れた。

「ぁっ」

 私の声をキスで飲み込み、大輝は微笑む。

「気持ちいい、いっちゃんの中。こんなに気持ちいいなんて思わなかった」

 大輝は嬉しそうに言って、腰を動かしはじめる。
 リズミカルな水音と肌の触れ合う音が部屋に満ちる。

「ぁ、あ、ん、ぅ、はぁ」
「ああ、最高……いっちゃん、気持ちいいよ……」

 ずるずると上に上がっていく私の身体を、私の膝を押さえて止める。
 ゆさゆさと揺すぶっていた動きはだんだんと激しさを増し、大輝はガツガツと私を穿った。

「は、ぁ、ああ、あん!」
「いっちゃん、いっちゃん、いっちゃ、ああ、あ!」

 二度目に果てるときも、大輝は私をしっかりと抱きしめた。

「はぁ……はぁ……気持ちよかった……」

 疲れを知らぬ若者は、二度の吐精を経て、むしろ爛々と目を輝かせている。自身を引き抜くと、爽やかな笑顔で私を見やった。

「次は、いっちゃんの気持ちいいところ、勉強させてね」

 その夜がどれだけ長くなるのかと、私は恐怖に胸を押さえた。
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