艶色談話

松丹子

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第二夜 台風で濡れネズミになった結果。

02

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「ん、ぅふ、ぁーー」

 濃厚なキスに溶かされて、私の頭はだんだんぼんやりしてきた。
 外では台風が窓を叩き、ときおりガタガタと音を立てる。

「はぁ、ん……」

 優しく太ももを撫でる手つきに、ぞわぞわと皮膚が粟立つ。

「ーー可愛い。感じてんの?」

 微笑む伊能ちゃんの顔は、至近距離で見ても全然遜色ない。
 ついついぽうっと見惚れると、またキスが降ってきた。

 あ、どうしよう。
 すごい、気持ちいい。

 くちゅくちゅと水気を帯びたキスの音と、窓の外で風雨が暴れる音だけが耳に届く。
 外の音がガタガタとうるさい分、二人の間でたつ音が一層濃厚に感じられた。

「ん、ーーはぁ」

 くちゅ、と音をたてて、伊能ちゃんの唇が離れる。
 唾液が糸引いて二人の唇を繋いだ。
 伊能ちゃんは妖艶に微笑むと、私の口の端ににじんだ唾液を舐めとる。

 ーーエロい。

 好みの容姿である彼の色気に、ぐらんぐらんと胸中が揺れる。

 こら、律子。
 あんたはそんなにあっさり男に抱かれるような女なのか。

 そう言い聞かせようとしながらも、伊能ちゃんのこの見た目に抗える精神力は、どうもなさそうだ。
 なんて、意志薄弱な女。佐川律子。
 でも……決定的なことを言わないまでも、そこはかとなく、私への想いを口にしていたような気がする。
 ーー希望的観測かもしれないけど。

「律」
「あ、ん」

 ちゅ、ちゅ、と伊能ちゃんは私の首筋を吸い、半袖の隙間から二の腕の内側を吸い、だんだんと唇を私の手先へと移動させていく。
 小指をぱくりと口に含まれて、舌先で愛撫されると、また私の口から甘い声が漏れた。
 伊能ちゃんが少し意地悪な目で笑う。

「感じてんの」

 囁くように言って、ぺろりと小指を舐めとると、今度は薬指へ。

「感度、いいんだ。律は」

 言いながらちろちろと薬指を舐め、口に含んで唇でしごき、ちゅぱ、と音をたてて出す。

「は、ぁ」

 私は自分の目が潤んできたことに気づいた。
 潤んでいるのは、そこだけじゃないことにも。

「律」

 伊能ちゃんの微笑みは官能的な色を帯びていて、私は少し震える。
 伊能ちゃんはその震えに気づいて、少し心配そうに首を傾げた。

「寒い?」
「う、ううん」
「そう?」

 言いながら、自分のTシャツを脱ぎ去る。

「ーー俺は暑い」

 笑う爽やかな顔の下に、思ったよりも筋肉質な身体がある。
 そういえば、昔は野球をやってたと言っていた。
 肩周りの力強さは、そういう経験から来るんだろうか、と思っていると、手を捕まれて伊能ちゃんの首もとに持って行かれる。

「律。お願いしていい?」

 あああ。その顔でそんなこと言われたら断れない。
 すっかりずぶずぶになりつつある自分に気づきつつも、その顔から目を離せない。
 伊能ちゃんは私の肘を優しく撫でて、微笑んだ。

「抱きしめて欲しいんだけど」

 伊能ちゃんは。
 いつでも、押し付けがましくないけど頼りになって。
 飲みに行くお店とかも、お任せしても全然嫌な顔せずに、しかもすごく素敵なところを見つけてくれて。
 仕事の愚痴とかも、適切なアドバイスをくれて。
 人に甘えることなんて、想像できなくて。

 だからだ、ということにしておいてほしい。
 私がほとんど何の考えもなしに、彼の頭を抱きしめたのは。



 ちゅ、と時々たつ水音と、身体を這う舌先の感覚。
 ぞわぞわと腰に抜ける快感に、私の口からは抑えられた嬌声が漏れる。
 その度に伊能ちゃんは嬉しそうに笑って、そこにキスを落とし、手であちこちを愛撫する。
 Tシャツはブラジャーの上までまくりあげられて。
 ズボンも履いたままで。
 もう濡れそぼっていると自分でわかる秘所には、全然手を触れる気配を見せない伊能ちゃんの愛撫に、私が先に降参してしまいそうだった。
 筒が太すぎる男物の短パンは、私が膝を上げるとほとんど足の付け根まで裾が上がってしまう。
 内股の筋のくぼみに、伊能ちゃんが舌先を這わせた。

「っ、はぁ」

 舌先は膝がわから中心へと近づいたが、さすがに茂みの奥までは届かない。
 でも、ズボンを脱がせずとも、そこから手を伸ばせば触れられることは、それまでの愛撫からなんとなく察していた。
 伊能ちゃんの手がそこに近づく度に、無意識に腰が浮く。
 それでも、伊能ちゃんは笑って腿の内側に手を引き戻すだけだ。
 そうした愛撫がしばらく繰り返されたとき、さすがに私が耐えかねた。

「い、伊能ちゃ、ん」
「何?」
「さ、触ってよぉ」

 膝から足の付け根までを、ゆっくりと往復する愛撫。

「触ってるよ?」

 伊能ちゃんはにこにこしていた。

「律のこと、堪能してる。肌、すべすべして気持ちいい」

 そ、そりゃどうも!

 私の目はますます潤んで、そわそわと落ち着かない。

「あ、そっか」

 伊能ちゃんの手は、ブラジャーに覆われた双丘へと伸びた。

「こっちに触ってほしいってこと?」

 ブラジャーのステッチをたどり、下着越しに頂きをつまみ上げる。

「ぁんっ」

 思わず漏れ出た嬌声に、慌てて手で口を覆った。
 伊能ちゃんは嬉しそうに声をあげて笑う。

「可愛い。律」

 言いながら、Tシャツをさらに上に引き上げて、ブラジャーの縁の上に口づけた。

「ごめんね。直接触ったら、もう歯止めが効かなくなりそうで」

 伊能ちゃんは言いながら、ブラジャーの上からはむ、と頂きをくわえた。
 はむはむ、と口を動かして、下着越しに乳首を刺激する。

「ぁ、んんっ」

 ここまでしておいて、歯止めも何もあるか!

 と言いたい気持ちはヤマヤマだけれど、彼にモノをおねだりするまでの勇気はない。
 でも、それにしたって、この寸止め感が辛かった。

「律ーー律」

 首もとへのキスを繰り返しながら、伊能ちゃんは胸元から脇腹をさする。
 耳元に唇を落とし、片手はまた、腿の内側を往復する。

「はぁ、ん……」
「可愛い声……感じてくれてるの、嬉しいよ」

 言いながら、伊能ちゃんは短パン越しに、私の秘所に硬いものを当てた。

「ゃ、ん」

 それがズボンをまとったままの彼自身だと気づき、私は思わず身体を震わせる。

「ね。わかる? こんなになっちゃった。律があんまり可愛いから……」

 言いながら、痛てて、とズボンの前をくつろげた。それでも下着から一物を出すことはなく、私のズボンも引き下ろすこともなく、熱の固まりを布越しに押し当てる。

「繋がりたいけど、我慢するよ。律もびっくりしただろうし、俺も心の準備できてないし……ゴムもないし」

 言いながら、布越しに互いの性器をこすっている。

「は、ぁ……律……挿れたい……」

 上擦った伊能ちゃんの声は、艶を増していてドキドキした。私は布越しにそこをさすられる度にぴくんぴくんと腰を浮かせ、小さな吐息を漏らす。
 秘所の上の蕾をかするたび、私が一際動揺するので、伊能ちゃんはくすりと笑った。

「そろそろ、イキたい?」

 私は喘ぎすぎて喉がカラカラになっていた。頷くと、伊能ちゃんの微笑みが強くなる。

「指、挿れてもいい?」

 言いながら、私が頷くより先に、彼の中指は私の中に入っていた。
 もう片方の指が、私の口に入ってくる。

「噛まないでね」

 笑いながら伊能ちゃんは言って、口と密壺を掻き回し始めた。ときどきたつ水音に、私は思わず喘ぎ、潤んだ目で伊能ちゃんを見つめる。

「律の穴、上も下も犯してる」

 伊能ちゃんは嬉しそうに、興奮していた。

「気持ちいい? 律。俺の指」

 ぐちゃぐちゃぬちゃぬちゃと音を立てる指の動きは、定期的に私のいいところをこする。その度に腰を浮かせ喘ぐ私の口の端に、伊能ちゃんがキスを落とした。

「あったかいよ、律の中。あったかくて、柔らかくて……俺の指、ぐちょぐちょに濡らして、飲み込んでる」

 私は彼の卑猥な言葉を聞くのが恥ずかしくて、小さくかぶりを振った。伊能ちゃんがそれを見て取るや手を止める。

「やめる?」

 私は懇願するような目で、ふるふると首を振った。伊能ちゃんはまたにこりとして、愛撫を再開する。

「可愛い、律。えっちな身体だね。……今日は無理だけど、今度は、させてくれる?」

 伊能ちゃんは言うと、蜜壺の上の蕾に硬くなった自身をぐりぐりと押し当てた。指での愛撫は辞めずに問われ、私はこくこくと頷く。
 伊能ちゃんはますます嬉しそうに微笑んだ。

「嬉しいな、約束だよ。ーー今日は、指でイカせてあげるね」

 言うや、愛撫は掻き回す動きから出し入れするそれに変わった。指は知らぬ間に二本に増やされ、奥をガツガツと突く。
 同時にいきり立った彼自身で蕾をぐりぐり押し潰され、私は一気に高ぶっていった。

「っ、あ、あ、ぁ、い、イッちゃう、いのぅ、ちゃん、あっ」
「いいよ、イッて。可愛い。律、えっちな顔してる。俺ので感じて。気持ち良くなって」

 伊能ちゃんも余裕なさそうに上擦った声で答えながら、奥を突く速度を上げた。

「ぁあ、あああ、ああ、あ、ん!」

 達するときの喘ぎ声は、一際大きく部屋に響いた。
 窓の外では、まだ台風による強風が、ガタゴト音をたてていた。
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