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本編

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 冬彦の舌が、あゆみの唇を割って口内を優しく撫でていく。歯列から舌へ、舌から歯列へ、口内をくまなく触れていく舌先の動きに、あゆみの鼻から吐息が漏れる。
 その甘やかな吐息に、冬彦も満足感を得る。吸い付くのではなく撫でるように、優しく深い口づけ。激しくはないが、主導権を握っているのが冬彦だからか、あゆみの膝から力が抜けそうなのに気づいて、冬彦はそっと腰に腕を回した。

「ん……ふ……ん」

 ちゅ……ちゅ、と水音がたち、あゆみの目が潤んでとろんとしてくる。冬彦は細く目を開けてそれを見て取り、唇を離した。
 あゆみが、は、と息を吐く。その頬に手を添え、逆の頬に軽くキスを落とす。

「……あゆみ」

 耳元で囁くと、あゆみが冬彦の首に腕を回した。
 しがみつくように首に抱き着くあゆみを受け止め、冬彦はその首筋にキスを落とす。

「ん、……ぅ、はぁ」

 舌先で首筋から耳までを舐め上げると、あゆみの切ない声が漏れた。耳たぶを甘噛みし、縁に沿うように舐めとると、あゆみが自分の手を口に添えて嬌声を抑えた。

(耳、弱いんだ)

 一度抱いておいてそれすら気付かなかったなどと、今までなかったことだ。おおいに反省しつつ、冬彦は手をあゆみの身体に這わせる。
 キスでだいぶ解れてはいるが、あゆみの身体はまだ緊張していると分かった。身体も心も無理をさせたくはないので、肩から肘をゆっくりと往復して撫でさする。
 あゆみの肌に触れる手に、唇に、想いを込めるようにしながら、優しく辿っていく。
 唇を寄せた耳は、外側から内側へ、やんわりと歯を立ててみたり、舌を這わせてみたりしながら、あゆみの反応を見る。

「お……のだくん、やだ……」
「嫌?」
「そ、それ……ぞわぞわ、する」

 冬彦は笑った。

「ぞわぞわって、この辺?」

 手で腰下のあたりを撫でる。ひゃわ、とあゆみが身体をびくつかせた。
 冬彦はくつくつ笑いながら、あゆみの唇にキスをする。あゆみは潤んだ目に精一杯の反意を込めて冬彦を睨んだ。
 冬彦はその恨めしげな視線を微笑で受け止め、あゆみの身体に回した腕を下げる。あゆみが戸惑っているうちにふわりと抱き上げた。

「わ、わ」
「暴れるなよ」

 冬彦は言いながら、ベッドへと向かう。あゆみは足が地面を離れて不安らしい。慌てて冬彦の首に抱き着いた。
 冬彦がそっとあゆみをベッドに横たえると、あゆみが困惑した表情で冬彦を見上げた。

「ちょ、ちょっとぉ」
「お姫様抱っこの方がよかった?」

 冬彦が至近距離で問うと、あゆみが反意を告げるように眉を寄せた。冬彦は笑う。

「……あゆみ」

 顔にかかった髪を耳後ろへよけてやり、頬にキスをする。
 あゆみがふ、と息を吐き出した。
 冬彦が顔を見ると、あゆみはどこか泣きそうな顔で冬彦の頬に手を伸ばした。
 そっと引き寄せられるに任せて顔を近づけると、あゆみがためらいがちに唇を重ねる。その唇が震えていることに気づき、冬彦はあゆみの目を覗き込んだ。

「……怖い?」

 あゆみは黙って頭を左右に振る。微笑もうとしたようだが、表情がくしゃりと歪んだ。
 冬彦の頭に手を回し、抱き寄せる。冬彦は目を閉じたまま、黙ってあゆみに抱きしめられた。

「……ふゆ、ひこ……くん」

 冬彦はあゆみの耳元でくすりと笑った。

「なに。あゆみ」
「ぅ……」

 おもむろに、あゆみが脚をすり合わせた。
 冬彦はその動きの理由を察して口角を上げる。

「あゆみ……」

 囁きながら、あゆみの眼鏡を外して枕元に置き、あゆみの脇腹を撫でる。
 最初はてのひらで揉むように触れていた動きを、指先だけにしてみたり、少しつまんでみたりと変えながら反応を見て、だんだんと触れる範囲を広げていく。
 あゆみの緊張が解れてきたことを見て取って、冬彦はその内股に手を伸ばした。
 ぴくりと反射的に膝を引き寄せようとしたあゆみの目を見つめると、おずおずと力を抜く。
 そこに拒否の色が見えないことを確認して、冬彦は微笑んで唇を重ねた。
 濃厚なキスと、内股を往復する手。
 もう片方の手は、肩甲骨と脇のあたりをそっと行き来する。
 あゆみの鼻腔から漏れる吐息はますます甘くなった。

「ん……ふぅ……」

 開いた窓から風が入ってくる。
 それはもう真夏の夜に感じたような熱風ではないが、ふわりと揺れたカーテンを見やり、冬彦は苦笑した。

「どうか……した?」
「やっぱり、クーラーつけような」

 あゆみが目をまたたかせて冬彦を見上げる。冬彦はあゆみの髪をなでて微笑んだ。

「声とか音とか、外に漏れたら嫌だし」

 あゆみがはっと目を開いたのを見て笑いながら、冬彦は腕を伸ばし、窓を締める。

「暑いけど、我慢して」

 言いながら、冬彦はシャツを脱ぎ去った。

「あゆみも脱ごっか」
「い、いい、まだいいっ」
「まだ、ね」

 冬彦はくつくつ笑って、あゆみの頬にキスする。

「あゆみ……」

 首筋に唇を寄せながら、あゆみの部屋着の裾に手を滑り込ませる。あゆみがぷくりと身体を強張らせた。冬彦は笑う。

「くすぐったい?」

 あゆみは黙って首を振るが、その顔は真っ赤になっている。

「……じゃ、気持ちいい?」

 あえて優しく囁くと、あゆみが目を潤ませて冬彦を見つめた。本人なりには批難の視線のつもりらしいが、すっかりとろけたその目では意味もない。
 無言を肯定と見て微笑む。軽いキスを交わしながらあゆみの脇腹から腰周り、膝へと手を這わせ、内股をさすってまた脇腹へと戻す。ゆっくりとその動きを繰り返しながら、手はときどきあゆみの中心をかすめた。重ねた唇はだんだんと深くなり、あゆみの吐息にはときどき小さな嬌声じみた声が混じる。その度、冬彦の半身にぞわぞわと熱が集まるのを感じた。

(はやく……挿れたい)

 思う自分を律する。先日は経験もないあゆみを身勝手に抱いたのだから、今度は自分が我慢すべきだ。
 かすめるように触れていた恥部に、徐々に大胆に触れていく。重ねていた唇を喉元や耳横へ寄せ、ときどき名前を囁くと、あゆみが甘い吐息を漏らす。
 首筋に舌を這わせて鎖骨を吸い上げ、身体を撫でさする指先をときどきズボンの中へ滑り込ませる。あゆみが膝を合わせようとしたのを感じ取って、ズボンの上からあゆみの中心を指で辿る。指先をそっと上下させると、あゆみがときどきぴくりと跳ねた。再び唇を重ねつつ、そこを優しく撫でさする。

「んっ……ふ、……んんっ……ゃ……」
「かわいいよ、あゆみ」

 耳元で囁くと、あゆみが熱い吐息と共に小さな嬌声を漏らした。冬彦はそれを聞きながら、もう片方の手を服の裾から中へと差し入れる。

「普段寝るときもしてるの?」
「ふ、……何が……?」
「ブラ」

 言いながら、下着のワイヤー部分を指で伝う。あゆみが熱い吐息を漏らす。その目はいつ涙を流しても不思議ではないほどに潤み、目元は赤く染まっていた。その顔を見ると冬彦自身が暴走してしまいそうなので、極力見ないようにしていたのだが、つい目が合ってしまった。下腹部に集まった熱が震える。

「……し、してない」
「ふぅん」

 冬彦は言いながら、あゆみの背中に手を回してホックを外した。ふわりと下着が浮き上がる。

「で、夏場は窓全開で寝てるわけ?」
「え……うん」
「ふぅぅん」

 冬彦は意味ありげなあいづちを打つ。左手指はあゆみの股を撫で、右手で胸をやんわりと揉んだ。

「……柔らかくて気持ちいい」
「や、やだ、そういうこと言わないッ……!」

 恥ずかしがって抵抗するあゆみに冬彦は笑うと、服と下着をしっかりと胸上までめくり上げた。右手で胸をやわやわと揉みつつ、もう片方の丘を舌先で愛撫する。

「っや、ぉのだく……」

 批難の声に冬彦は欲情する。口元は自然と笑んだ。口を開いて乳輪全体を口に含み、舌で頂きを細かくノックする。あゆみが声をあげ、恥ずかしがって身じろぎした。冬彦は身体でそれを優しく覆う。
 あゆみの意識が胸元に集中している間に、恥部をまさぐっていた手をズボンの中に這わせた。下着越しに割れ目を辿ると、あゆみが慌てて自分の手で口を押さえる。

「……濡れてるね」
「い、言わないでっ」
「なんで? いいことじゃない?」

 冬彦はくつくつ笑って、あゆみの頬にキスを落とした。両手をズボンにかけ、ゆっくりと下に引き抜く。あゆみもおずおずと腰をあげてそれを手助けした。
 ズボンを引き抜くと、下着だけになったあゆみの腰回りを両手で撫でつつ口づける。応えようとするあゆみの舌先をなめ回し、吸い上げて口内をくまなく味わう。
 冬彦は腰回りを撫でていた手を下着にかけ、ゆっくり引き抜いた。片膝を立たせて片脚から引き抜くと、ぬめるそこを直接指で辿る。
 割れ目を往復する指が蕾をかすめる度、あゆみがぴくんぴくんと動いた。

「んっ……ふ……ふゆ、ひこ、くん」
「うん」
「ぁ、はぁっ……ゃだぁ」
「だいじょうぶだよ」

 冬彦は優しく囁く。

「怖くないよ。気持ち良くなっていいから……いっぱい感じて」

 子どもに言い聞かせるように言うと、あゆみの口からはうわ言のような甘い声が漏れる。冬彦は秘部と胸への愛撫に集中した。
 トロトロと蜜が漏れて来る穴の中に、少しずつ中指を差し入れる。ずぶずぶと飲み込まれていく指の感覚に、冬彦自身ぞくぞくした。性急にことを進めたくなる衝動を必死で抑え、中指だけであゆみの熱を掻き混ぜる。ときどき親指で蕾をさすると、あゆみの内側がぴくりと締まった。

「ほら……暑くなってきたでしょ」

 首もとにキスを落とすと、じわりと汗がにじんでいる。冬彦は微笑んであゆみの上体を抱き上げ、ベッドの上に座らせるとTシャツを引き抜いた。
 されるがままに服を脱がされたあゆみは、上気した頬と潤んだ目で冬彦を見つめる。そこにはもう、最初に見せていた羞恥心を取り繕うような色はない。ただ熱を帯びた目でじっと見つめられ、冬彦の下腹部が反応した。
 冬彦は微笑んであゆみの頬に手を添え、また唇を合わせる。あゆみも手を冬彦の胸上にそえた。目を閉じ、直接触れ合う肌の温もりに浸る。
 重なった唇からたつ水音と、互いの息遣いが部屋に満ちる。
 窓を締めた部屋には扇風機が回っている。ときどき二人の肌を撫でる風は、徐々に温度と湿度を増している気がした。

「……あゆみ……」
「ん……ふゆひこくん……」

 互いの名を囁く。あゆみが冬彦の首に腕を回す。あゆみから唇を重ねてくるのに応じながら、冬彦の手はまたあゆみの身体をまさぐり始める。

「ん……ぅん……はぁ」

 あゆみは自分のタイミングで唇を重ね、離す。息継ぎするように離した隙を見計らい、冬彦はあゆみの中心をこする。

「ひぁっ、ちょ、もぉ!」

 思わず声をあげたあゆみが恨めしげな目で冬彦を見る。冬彦はいたずらの成功に笑いながら唇を重ね、ゆっくりとあゆみをベッド上に押し倒した。
 そのまま下腹部への愛撫を再開する。あゆみの内側はいつでも冬彦を受け入れられそうなほどとろとろに溶けていた。

「……あゆみぃ」
「はぁっ……」
「はやく挿れたい……」

 つい漏れた本音に、あゆみの目が揺らぐ。
 冬彦は笑った。

「でも、もっとあゆみを愛でてからね」

 抱き寄せると、あゆみがふるりと震えた。
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