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2章
95:orz
しおりを挟むパラパラと、破片が地面へと落ち、音を立てる
同時に放たれた2つの強大なエネルギーの衝突によって、破壊がもたらされた
地面は抉れ、クレーターを形成し、飛んだ破片によって壁には傷が刻まれている
そんな破壊の痕跡の中心で女騎士はボロボロとなりながら、その手に剣を持ち、立っていた
というか、あの騎士は女性だったのか。全然気づかなかった。声が低かったのは先程まで顔を隠していた兜の効果であったのだろう
ピシッ
女騎士の体に亀裂が走り、左腕が崩れ落ちた
やはりゴーレムだったようだ
「少年」
先程の低い声とは違い、女性らしい高い声で女騎士が言葉を発した
「自分の大切なモノが何かを忘れてはならない」
それは忠告
「自分が何の為に戦うのかを間違えてはならない」
彼女、先達から俺への助言
「後悔は呑み込んで前に進みなさい」
その言葉を胸の内へ
「はい」
返事を返せば、どこか母さんの笑顔と似た優しい微笑みをくれた
女騎士の体の崩壊は進む
「最後に2つほど、あの力の名はゼーレ。使いこなせれば必ず貴方の力になる」
自身が纏う白銀の力が視界に入る
「それと、本当のボスはしっかりと倒して褒賞を貰いなさい。さようなら」
は? 本当のボス?
問う為に口を開こうとしたら視界が一瞬にして切り替わった
「え?」 「は?」
目の前には扉
横には意味がわからないと言った顔のソウマ。自分もこんな顔をしてると思う
扉を見る。自分の記憶が間違っていないならば、その扉はストーンパレス最下層にあるボスのいる部屋への扉
先程までの戦いは幻覚? いや、それはないと思う。ゼーレが明確に感じ取れているし、なにより違和感が無かった。幻術や幻覚には必ず違和感が何処かに現れてしまうのだ。いや、そんなことよりもラキア達は
「マスター!」
ラキアが駆けてきて勢いそのままに抱きつかれる
「よかっ「大丈夫ですか!? 怪我はありませんか!?」た……う、うん、大丈夫だよ」
よかった、と言い抱きしめる力を強くするラキア。結果としては勝った訳だが、相手は格上だったのだ。心配を掛けてしまった
だけど、向こうは俺達を殺す気はあったのだろうか?
無かったのかもしれない。思い出してみれば、本気で殺しに来てはいなかったように思える。女騎士も力、ゼーレを会得して貰わなければいけないとか言っていた気がする。いや、力が足りなければ本当に殺されていたかもしれない
というか、本当のボスってどういうことだ?
「クウガ」
ソウマの声
ラキアに放してもらいソウマの方を向く
「何?」
「どういうわけか俺達がこの扉に来た時の時間だ」
ソウマが時計を俺に見せながらそう言った
確かに時計は俺達がここに着いた時間。正確には少し進んでいる、数分ほど。あの戦った時間よりも明らかに短い
そして、本当のボスを倒せという女騎士の言葉から導き出されるのは
「彼等は最後のボスじゃなくて、何らかの術で別の空間に俺達は飛ばされていた。それも時間の流れから隔離された上で」
「単に幻術や幻覚の類いってのも考えられる。でもいつだ? 全然気づかなかったぞ」
そうなんだけど
「気にしなくていいと思うよ」
「は? 何でだよ」
「考えても分かんないことだろうし、敵ではないみたいだからね」
「そりゃ、俺もあいつらは敵ではないと思ったけど確実じゃねぇんだぞ?」
「いや、そこは信じてもいいと思うよ」
「なんでだよ」
「勘かな」
俺がそう言えば、ソウマは「はぁ」とため息をつき
「オーケー、ごちゃごちゃ考えるのはやめだ。とっととボス倒して、褒美貰って帰るか。風呂入りてぇ」
「俺も」
さっきまで張り詰めていた反動か、ボスに挑むっていうのに緊張感のカケラも無いね
だが、扉を開けてボスの部屋へと足を踏み入れた俺達は驚愕した
「ひっろデカ」
ソウマ、変な言葉になってるよ
まあ、しょうがないのかもしれない。何故なら俺達の視界に飛び込んで来たのが今までとは比べ物にならない程の巨大な広場に巨大なゴーレムがいたからだ
高さはあの精緻な火龍を3体積んだくらいの大きさ。火龍も大きくて迫力はあったのだが、このゴーレムはそれ以上
そのフォルムは何処か魔道兵装のような感じで人に近い
魔道兵装とは全身鎧を凄く高性能にした感じのもので、魔道具の一種だ。師匠はパワードスーツとか言っていたっけな
そして、ゴーレムの大きさ合わせたせいだろう。部屋の大きさがとんでもない
というか、今気づいたのだがソウマが物凄い興奮してる。そういえばソウマは魔道兵装が好きだったからこのゴーレムはソウマの琴線に触れたのだろう
興奮のあまりか語彙が貧困になってやっベー、やっベーとしか言ってない
「おーい、ソウマー。さっさと倒して帰るんじゃなかったのー?」
「いや、お前、それはこれ見るまでの話だろ!? ロボだよロボ! 巨大ロボ! あのロマン兵器が今目の前にあるんだぞ!?」
うう、面倒くさい。そう言えば師匠の話に出てきたロボットってのにも興奮してたのを今思い出したよ
「分かったから落ち着いて。そんなに好きなら綺麗に倒して持って帰れば良いじゃんか」
と俺が言うと
「そうだよ! そうすりゃ改造も出来るし、他にも色んなこと出来るじゃねぇか! 天才か!」
なんか知性吹き飛んでらっしゃる?
「分かったから早く終わらせよう」
「待て! 俺1人でやる!」
「なんで」
「完璧に近い状態で確保したいから」
あー、もう
別に俺参加してもよくね? って思ったけど言うと余計こじれそうだったからやめた
「分かった、任せる」
「っしゃー! い、く、ぜぇ!?」
バガンッ
ん?
ガゴーンッ
ソウマの発した語尾が素っ頓狂な物になる。更には地面が割れるというあまりしないミス
そして、大きな音の後に砕け散る巨大ゴーレム
「は?」
えーっと、何が起きたんだ?
どうやら、レベルが急激に上がって力の調整を大幅に失敗し、トンデモナイ速さでゴーレムに激突して破壊した
という事らしい。俺もレベルを確認したところ120も上がっていた
考えてみれば簡単な事であの時戦った王と騎士は精緻で精巧なゴーレムだったのだ。つまり、レベルが上がる。格上であったため、レベルも沢山上がるという訳だ
地面に両手両膝をついて盛大に落ち込むソウマにまた来れば良いと言って復活させ、巨大ゴーレムの残骸を回収して
ボスを倒した事で現れた魔法陣へ
どこの神造迷宮でも最後のボスを倒すと褒賞を受け取る場所へ行く魔法陣が出現する
召喚獣は基本的に褒賞は貰えず一緒に魔法陣に乗っても先に上へ戻されてしまう為、先に中に戻ってもらう。その後ソウマ、俺の順番で魔法陣で転移した
転移した先は真っ白の空間
その中央には青く光る透明な球体が浮かんでいる
褒賞はこの球体に触れる事で与えられる
さて、今回は何が貰えるんだろうか
毎回この瞬間がワクワクするものだ
球体に触れて褒賞を手に入れ、俺はまた新たに現れた魔法陣で転移した
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