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2章
80:うにょうにょ
しおりを挟む深夜にちょっとした事件があったのでその事を学園長のコルクさんに報告し、ストーンパレスにやってきて、25層への階段前に転移した
来る途中でフレッドが昨日の深夜の異変に気付いていたようなので説明してあげたのだが
「やっぱり、クウガ達だったんだ。もう片付いてるなら良かったよ」
と普通に返された
前までなら絶対にフリーズしてたのに、もう慣れたみたいだ
そんな変化を感じた
まあ、そんなことはさておき早速のボス戦だ。切り替えていくか
階段を降りれば、21層から続く砂漠の世界が眼前に広がる
ダンジョンの中だと言うのに外と同じように照りつける光。そして、本物の砂漠のように地面は砂で足を踏み出せば少し沈む。これは地味に体力を削がれる。それに柔らかいというのは色々と勝手も違って来る。更に、砂漠のように気温も高い
適正レベルよりも低いフレッドがそれなりに消耗する程だ
俺やソウマに関してはなんてことはない。高い気温なんてのはレベルの恩恵で問題ないし、砂での活動の仕方も修行で師匠に叩き込まれたので問題なし
で、肝心のボスなのだが今迄とは違うようで見える所に居ない。だけど、居る
場所は下だ。しかもトンデモなくデカい。20層で戦ったあの巨大球体ゴーレムと同じかそれ以上の気配を砂の下から感じる
ソウマとフレッドに視線を向ければ2人とも分かっているようで頷き合い、周りに気を配りながら穂を進めた
そして、地面に揺れが起こり、次いで大きな音が生じた
ドパーンッ ドパーンッ ドパーンッ
と何回か音が生じて、それと同時に出現する細長い影。いや、細いというのは語弊がある。その影がそれなりに離れているから細く見えるだけのようだ。実際は太長い
まだ鳴り続ける音。その正体は太長い影が下から出現する時に吹き飛ばす砂の音だったみたいだ
出現した太長い影がくねり、その先端が蠢き、ずらっと並んだ鋭い牙が見えた
まあ、つまりだ。俺たちの目の前に現れた太長い影の群れはその1本1本が1体1体のワームであると、そういうことであるということですね
進んだことで現れたことから一定範囲に入ってからというのは変わっていないと思われる
ワームがいっぱい出て来たので砂の下に感じた巨大な気配は消えているかと思ったのだが、気配の大きさに変化が無かった。巨大な気配からワームが生えてきてると言えば良いのだろうか?
ボス本体の様子はそんな感じなのだが、地上は凄いことになっている。見渡す限りのワーム、ワーム、ワーム。沢山の巨大ワームがウゾウゾと動いているのはこう、なんと言えば良いのか、非常に背筋にゾワゾワっと寒気が来るね
ポン
ん?
「クウガ、今回は譲ってやるよ。前回は俺が好きにやらしてもらったからな。暴れてこい!」
爽やかな笑いと共に、如何にも譲ってやろうという上からの態度。実はソウマのやつワームが大の苦手なのだ
「ぼ、僕もパスかな~。あれは厳しいと思うんだよね」
言ってることは正しいんだけど便乗するその魂胆にヘイトが溜まるね~
ま、でも今回は2人とも良しとしよう。丁度暴れたかった所だ。その代わりに、たっぷり暴れようか。剣は使わずに徒手空拳でいこうか
「分かったけど、その代わりに絶対に手は出さないでね」
2人に釘を刺しておいて、【紫雷】を発動する。内部で闘争心が暴れ、それを理性で押さえ込み、表には出さない。スキルが特化した影響でそこら辺のコントロールもかなり簡単になっている
さあ、行くぞ!
まだ様子を伺っているだけのワーム達へと足を踏み出し、駆ける
足を後ろに蹴り上げるようにして走る。後ろに砂が巻き上げられるがしょうがない
戦闘の始まりに更に上がる闘争心の高まり、つられてスキルの効果で上がる紫の雷の力。スピードが1歩を踏み出す毎に上がる
そして、最初の獲物の前に到達。突っ込んで来る俺を補足し、その牙が並ぶ口を開けての正面からの迎撃。正直、気持ち悪いので地面を滑るようにして移動し、ワームの左側面へ。そこから左足を軸として回し蹴りをぶちかました
ボンッ! という音が発生し、ワームの身体が千切れ飛ぶ。さらに傷口は【紫雷】の紫色の雷が焼く。
ギィイイイイイイイ!
仲間が目の前でやられ、怒りを露わにする残りのワーム達。俺はそんなワームどもの群がる場所へと突っ込んで行く
目の前にくるワームの身体を殴り、蹴り、殴り、蹴りという感じに手当たり次第に攻撃を加えながら、走る
そんな俺を殺さんと迫るワーム
だが、そのデカイ図体のせいで1度に俺に向かってくるのは多くて6、7体くらい。そんなもんでは手数が足りなくなるなんて事も無い。迫るワームを吹き飛ばしていく
前後左右と更に上からも迫るワーム達に対して、俺は上方向に跳躍し、上から迫ってきたワームを雷を乗せて繰り出した拳圧による空気の塊で吹き飛ばして回避。そこから互いに獲物を見失いぶつかり合ったワーム達に【空歩】で空中を蹴り上げて宙から地面へと落ちるようにして、跳び蹴りを叩き込んだ。巻き上がるワームと砂。そして、下から迫ってきていたワームは蹴りの威力を受けて、破裂するようにして絶命する
「ははは、はははははははっ!」
高まった闘争心が。いや、戦闘本能が笑い声となって漏れる
もっと、もっとだ
戦いを
血湧き肉躍る、あの瞬間を
命の駆け引きの中で生まれる、あの緊張感を
俺に
「寄越せ!」
理性の殻を破って、本能が顔を出す
完璧に混ざっていた紫の光は、青と赤の光にバラけ、俺に纏わりつく
拳圧でワームがその身体を千切られながら吹き飛び
蹴りによって生まれた烈風で鎌鼬が発生してワームを斬り裂き
迸る青と赤の雷がワームを焼き尽くす
もっと速く、風のように、雷のように
地を駆けるのが煩わしくなり、宙を駆ける。翼を出し、飛行性能を上げる。宙を飛び回り、ワームを突き破り、吹き飛ばし、数を減らしていく
そして、動くワームが居なくなると、それは姿を現した
地面が揺れ、水面に広がる波紋のように砂が振動する。その波紋の中央が段々と盛り上がる
ドパーンッ!
ワームが登場したのと同じ様に砂を宙に巻き上げながら出現したのは巨大な亀。その大きさは山と同等かそれ以上。亀の甲羅には無数の穴が空いておりそこからは頭が千切れ、体だけとなったワームが出ている
つまり、此奴が巨大な気配の正体であり、先程までのワームは此奴の触手か手先のようなものだった訳だ
そんな事を思っていると、亀が口を開く。そして、開いた口に集められていく膨大な量の魔力。息吹だ。
ならば、こっちもブレスで迎え撃つ
【変化:龍】で顔を龍の物へ。足を肩幅に開き、魔力を練り上げながら、天を仰ぐようにして胸一杯に息を吸い込む
まあ、実際は息で飛ばしている訳では無いので必要ないんだが、こうする方がブレスって感じがするからね
そして、亀がブレスを放つ
亀から放たれる炎のブレスに数瞬遅れて、俺もブレスを放つ。属性は同じ
ドンッ!
僅かに俺寄りの場所にてぶつかり合ったブレスは一瞬の拮抗も許さずに、俺のブレスが亀のブレスを蹴散らして亀の甲羅を貫通して、風穴を開けた
グガァァァァァァァァ!
拮抗はしなかったが亀のブレスで軌道がずれ、甲羅に損傷を与えるだけとなった。けれど、亀は甲羅でも痛みを感じるのか、それとも中にあった体にでも当たったのか絶叫を上げる
そうして出来た大きな隙。一気に決める!
右足を後ろに引き、上体を少し捻る。【紫雷】を両足に集中する。感情の起伏で青と赤に分かれてしまった物を元の紫へ。左足で地面を踏みしめ右足を振り抜いた。その右足を振り上げた勢いで身体を宙に持っていき、左足も振り抜く
「双龍脚」
フレッドが見てるもんだからちょっとカッコつけて技名を声に出してしまった
振り抜かれた両足から紫の雷が飛んでいき、その姿を龍に変える
龍となった2条の雷は痛みに悶える亀にその顎門を開きながら迫る
亀は間近にまで迫ってきて、やっと気付き何も出来ぬまま龍に食い千切られ、その命の火を消した
ズシーンッ
亀の巨体が地面に落ち、重い響きを残した
「お疲れ!さっさと次行こうぜ次!クウガがちんたらしてるから待ちくたびれたぜ!」
俺に押し付けた事を無かったかのように文句を言ってくるソウマ。本当、どついたろうかなと思っちゃうくらい憎たらしいやつだ。まあ、何故か許してしまうんだが。勿論許せない時もあるけども。まあ、今回は仕返しさせてもらうけど
「分かった分かった。お前がワームに食われてからトラウマになって戦えないのは知ってるから。ぷぷぷっ」
わざとらしく笑ってやればソウマは顔を真っ赤にして
「フレッドがいるんだからそれは言うなよ~」
と怒るのではなく項垂れる
実はソウマのワームが苦手な理由は1度ワームに食われたことがあるのが原因だ
師匠に連れられて砂漠に行き、柔らかい足場での修行中。当時の俺たちよりもレベルの高いワーム系の魔物が突如地中から現れたのだ。それもソウマの足下から
後から聞けば師匠は気付いて放置して居たのだが、まさか食われるとは思って居なかったらしい。ソウマは砂漠に浮かれていたのもあるし、師匠がいたのも大きく、油断していたのだ
んで、どうしようもなく、師匠に助けられるまでワームの腹の中にいたソウマはワームが苦手となってしまったのだ
そろそろ克服しても良いと思うがこういうのは人から無理やりやらされても効果は有るのだろうか。今度コルクさんにでも聞いてみようか。こういうことなら師匠よりも長く生きてるコルクさんの方が知っていそうだ
「ほら、ソウマ早く行くよ。フレッドも早く来ないと置いてくよ~」
ワームや亀の死体を回収して、いじけるソウマとぼーっとしていたフレッドに声をかける
「置いていかれるのは困る!」
置いていくという言葉に敏感に反応したフレッドが急いでやってきて、近くに現れていた階段を降りる
次は何が出てくるかな~
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