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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

574.幸せになりましょう。

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「私とヒサツグは、愛をもって信頼を勝ち取り、寄り添い、切磋琢磨して、今、ケレメイン大公夫妻として並んでいる。

ケレメイン大公国の初の国家行事となる、愛こんにゃく家とこんにゃくの結婚式には、女神様をはじめ、マウンテン王国の女王陛下と宰相、サーバル王国の女王陛下、ドリアン王国の国王陛下夫妻に参列していただき、元神子様のカズラが結婚式を執り行って、大成功に終わった。」
とクロード。

クロードは、披露宴会場を見渡す。

「かつて、魔王による消失が起きる前。

父上と母上が、この世にいらっしゃったとき。

この場所は、父上と母上のお気に入りであった。

恋人達が健全に逢瀬を重ね、家族になっても大切な場所になるように、と。

母上は思いをこめて、花を求めた。

父上は、母上と共に花を探し、母上の喜ぶ様を見て、共に喜ばれた。

ケレメインの民は、母上が花を好んだように、恋人が楽しめる場所を作り上げてきた。」
とクロード。

しんと静まり返る。

しんみりとした空気が流れた。

「魔王による消失は、私達からかけがえのないものを一瞬で消していった。

私達はなすすべもなく、失われたものが、二度と戻ってこないことだけを理解した。」
とクロード。

会場から、すすり泣く声が聞こえてくる。

「私は、神子様だったカズラと魔王を討ち、魔王による消滅は終わった。

魔王がいなくなってから。

私達は、生活するために、魔王による消失からの再建に向かって動き出したが、簡単ではなかった。」
とクロード。

会場内にいるケレメイン大公国の国民は、皆、苦労を思い返している。

「私達は、失われたものが二度と戻ってこないことを理解した上で、日常を取り戻そうともがき続けた。

しかし、ケレメイン家だけで、今の状態にまで復興するには、あと何十年もかかっていたことだろう。」
とクロード。

「当時、サーバル王国の王女殿下であられたシガラキノ殿下が、私財を投じてくださり、財政面で、ケレメイン家を支えてくださったことに、私は、ここで、感謝を申し上げる。

サーバル王国のシガラキノ女王陛下の御世が良きものであるように、と私達は願う。

私達ケレメイン大公夫妻は共に、サーバル王国のシガラキノ女王陛下の良き友人でありたい。」
とクロード。

サーバル王国のシガラキノ女王陛下は、クロードからの感謝に心からのほほえみで応えた。

「私は、ケレメイン大公夫妻の良き友人であり続けましょう、ずべし。」
とサーバル王国のシガラキノ女王陛下。

「サーバル王国の王女シガラキノ殿下が私財を投じてくださったのち、私の伴侶であるヒサツグは、ケレメイン家の土地を訪れ、再建のための施策に奔走した。

ヒサツグは、当時、マウンテン王国の王女であられたスナメリ殿下や宰相補佐になったタチバナ殿、スナメリ女王陛下の秘書となったドロー殿、現騎士団となられたシャム殿と、マウンテン王国で交流を持ち、今の体制へ移行後も良き友人であり続けている。」
とクロード。

え?

クロード。

結果的にそうなったけれど、当時のオレは、何にも考えていなかったぞ?

オレより年下の男女に、クロードを追いかけるという未来のないことを続けるのは、止めておけ、という気持ちはあったけどさ。

四人とも、自分自身で、自分の人生が、これで良かったのかな?と考えた時期に、たまたまいた、キツイこともキツくないことも忖度なく話してくれるオレ、というちょっと年上のお兄さんに相談したくなった、というくらいの話だと思うぞ。

「私達は、ケレメイン大公クロードが優秀であることは知っていた。

クロードの優秀さを剛とするなら、ヒサツグは柔。

クロードとヒサツグという良き出会いに私達は、感謝している。

末永く友人でいたい。」
とマウンテン王国のスナメリ女王陛下。

「私とヒサツグも、マウンテン王国のスナメリ女王陛下の御世が良いものであるように、隣人で友人でいよう。」
とクロード。

クロード。

オレ、泣きそうだぞ?

「私とヒサツグは、魔王による消失がいかに民を疲弊させるかを見てきた。

私とヒサツグは、魔王による消滅がない、新しい国づくりを目指した。」
とクロード。

「妾は、宣言する。ケレメイン大公国とマウンテン王国、サーバル王国には、魔王による消滅が起こることは、金輪際ないわ。」
と女神様。

ふわっと宙に浮いている女神様は、キラキラと金色に輝いている。

「今日は、この思い出深い場所を、愛こんにゃく家とこんにゃくの結婚披露宴会場と定め、多くの列席者を迎えられたことを喜ばしく思う。」
とクロード。

「愛こんにゃく家とこんにゃくは、幸せになるといいわ。」
と金色に輝く女神様。

愛こんにゃく家は、こんにゃくと一緒に、カズラくんにプレゼントされた動く座椅子からおりて、こんにゃくを頭上に掲げた。

「私とこんにゃくは、必ず、幸せになります。」
と愛こんにゃく家。

神々しい風景に、結婚披露宴会場にいた人は、目を奪われている。

「元神子様のカズラには、私とヒサツグの友人として、ケレメイン大公国がこれからも続いていけるように助けられた。

カズラには、最大限の感謝を。

カズラには、ケレメイン大公国に居を構えて、この世界を楽しんでほしいと願っている。

私とヒサツグの友人としての時間も、求めたい。」
とクロード。

「ぼくが最後?

ぼくへの感謝は、当たり前だよ。

ぼくは、この世界で神子をやることはもうない、と宣言する。

ぼくは、ぼくのために生きるからね。

クロードとヒサツグは、友達のぼくと一緒に遊ぶ習慣を作るんだよ?

ずっとだからね?

分かった?」
とカズラくん。

「喜んで習慣にしよう。」
とクロード。

クロードは、ドリアン王国の感情を押し殺している国王陛下と神妙にしている王妃陛下に体を向けた。

「ドリアン王国の国王陛下と王妃陛下。

これが、私達が、女神様の力に頼らず、女神様を隣人として迎えるためにしてきたことだ。

ドリアン王国を永遠に拒絶するつもりはないが、今のドリアン王国では付き合えない。

ドリアン王国の、前向きな変化を期待している。」
とクロード。
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