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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

434.サーバル王国の王女様の初恋の終わりと友情の始まりは、同時でした。王女様の友達第一号は、女神様です。

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王女様は、何度も目を瞬く。

「わたくしは、クロード様が好きでした、ずべし。

わたくしが、好きなのは、クロード様だけでした、ずべし。

クロード様との未来しか、頭にありませんでした、ずべし。

わたくしの思い描いてきた未来が、どうあっても、叶うことはないと思い知らされても。

それでも。

わたくしは、クロード様と生きていく可能性を、わたくしの中から捨てることができないでいました、ずべし。

諦めなくてはいけないと、分かっていても、それでも。

わたくしの心は、悲鳴をあげていました、ずべし。

どうして、どうして、わたくしが、諦めなくてはいけないのか、と、ずべし。

クロード様との未来を諦めなくてはいけない誰かがいるなら。

わたくしでなくても良かったのに、と、ずべし。

わたくしは、変えられない現実を前にして、灰色の壁に向き合っている気分でした、ずべし。

クロード様のいないわたくしの未来は、灰色に塗りつぶされて、もう、何もない、と、思い込んでいました、ずべし。」
と王女様。

オレは、王女様の心情に、あっと思った。

王女様の、クロードへの気持ちは。

好きでした、なんだな。

それなら、オレは、もう何も言わないことにしよう。

終わった恋を蒸し返しても、いいことは、何もない。

「わたくしのなりたかったものになり。
わたくしの立ちたかった場所に立ち。
わたくしの大好きだったクロード様に愛されている。

そんな人と向き合わなくてはならないなんて、わたくしは、なんと不幸で、哀れなのか、と思いました、ずべし。

わたくしの、あるべき未来を奪い取った人に対する憎しみと口惜しさが、最初にありました、ずべし。

クロード様とわたくしの未来は、わたくしに約束されたものだったのに、ずべし。

わたくしの幸せを横取りするだけでは飽き足らず、わたくしを見下すのか、と、ずべし。」
と王女様。

王女様は、涙をポロリともこぼさなかった。

女神様の裁定後の王女様と最初に話をしたとき、王女様は、不安も怒りも憎しみも、全部、一人で抱えていたんだな。

「わたくし、今日、初めて知りました、ずべし。

クロード様のために、クロード様の希望を叶えた女神様が、クロード様を好いていましたこと、ずべし。

女神様は、クロード様のことが大好きで、クロード様が大好きだからこそ、クロード様の、伴侶が欲しいという希望を叶えた、と、ずべし。

女神様は、クロード様の幸せのために、女神様のお気持ちを抑えて、伴侶を用意した、と、ずべし。

女神様ではない伴侶を好きでいるクロード様のことを、大好きなままでいる女神様の愛の深さに、わたくしは、感じ入りました、ずべし。」
と王女様。

王女様は、盛り上がっている。

オレは、ちょっと待て、と言いたい。

空気を読んで、言わないけどさ。

女神様は、クロードにオレを与えた後、オレを排除しようと画策していたぞ?

女神様は、善性の塊なんかじゃないからな?

王女様の中で、女神様が、いい女認定されていることに、オレは不満があるぞ?

オレがマウンテン王国の国王陛下に命を狙われていて、オレの命を狙うマウンテン王国の国王陛下に女神様が全面協力していた話なんて、絶対に公にできないから、言わないけどさ。

王女様の中の、女神様の株が上がりすぎじゃないかな?

女神様の様子をうかがうと。

女神様は、まんざらでもない態度だ。

いや、まんざらでもない、を通り越して、得意気になっている。

女神様って、純粋な尊敬の念を向けられたことがないのかもしれない。

王女様の心からの告白を聞いた後に、女神様へと真っ直ぐに向けられる尊敬。

女神様は、最大級にご機嫌だ。

「妾と友達になりたい?」
と女神様は、王女様に楽しそうに尋ねる。

「はい、ずべし。わたくしを、女神様の友達にしてください、ずべし。」
と王女様。

女神様は、オレを見た。

「ヒサツグ。妾には、友達がいる。」
と女神様。

「良かったな。おめでとう、女神様。おめでとう、王女様。」

オレが祝福の拍手をすると。

王女様と女神様の様子を息を飲んで見守っていたサーバル王国の若手の皆さんも、安心して、割れんばかりの拍手をした。

サーバル王国は、女神様と王女様が繋がったなー。
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