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第8章 29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、英雄公爵に溺愛されています。

230.好きな人を守れて、頼りになる男でいたかった、これからも、そうありたいと思っていることを告白します。

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クロードが、オレの口から出てくる言葉に注視しているのが、伝わってくる。

「オレ達が出会ったときからずっと、オレは、クロードにとって、年上で頼れる男だったと思う。」

クロードの反応がない。

え?

違ったのか?

オレ、クロードの頼りになっていたよな?

オレの独りよがり?

黒歴史?

クロードの反応に、自尊心が削られる。

「オレは、クロードにとって、これからも頼れる男でいたいと思っている。」

うん、クロード、なんとなーく、伝わってきたぞ。

そっかー、ヒサツグって、頼りになる男になろうとしていたんだー、みたいな感情がな?

なんだ、この温度差。

もう、今さらだから、このまま、続けるけどな。

「オレは、不安なんだ。」

クロードは、じっと、オレが続きを話すのを待っている。

動機を話すのは、恥ずかしい。

「オレとクロードが出会ったのは、クロードは24歳、オレが29歳。

オレは、大人として、年上として、クロードの頼れる男として、クロードを守ると決めて、やってきた。

実際、クロードのことを守れていた、と思うんだ。」

クロードが、何も言わない。

オレ、クロードを守れていたよな?

オレだけの思い込みじゃないよな?

なあ、クロード。
反応が薄め、なのは、疲れているから、省エネモードに入っているせいだよな?

好きな人の前で、いい格好したいだけのくせに、万能感に浸っちゃって、もう、聞いていられない、とか考えていないよな?

オレは、今、別の不安が湧いてきているぞ?

「今は、オレが五歳年上である分、経験のストックがある。
クロードが、オレを頼りにしたとき、オレは役に立ってきたよな?

今年は、いい。
来年も、まだ、大丈夫だと思う。ぎりぎりかもしれないけれど。

でもさ。
再来年には、もう、オレの経験値じゃ、クロードを助けることが出来ないんじゃないかな。

クロードが頼りにしたいと思ってくれても、再来年のクロードにとって頼れる男でいる自信が、今のオレには全然ない。

だから。

クロードにとって、役に立たない、頼れる男じゃなくなったオレが、クロードに失望されて、いらない男と思われて、他の誰かに、オレの居場所を明け渡さなくちゃならないかと考えたら、いてもたってもいられないくらいに、不安になった。」

「ヒサツグが、不安に。」
とクロード。

クロード、やっと喋ったな。

ずっと、一人で喋り続けることなんて、ないから、クロードに話すのが、緊張する。

飽きずに聞いているかな?

意味不明とか思わず、理解しているかな?

とか。

「クロードに知られずに不安を解消したくて。

クロードに知られずに、クロードの知らない誰かに、こっそり相談にのってほしくて。

クロードの知らないところで、経験を積んでおきたい、と考えていた。」

「私の知らない人がいる、私の知らないところが、ヒサツグの元いた世界だから、ヒサツグは、私に知らせずに、元の世界と行き来しようとした?」
とクロード。

「おう。」
まあ、それだけじゃないんだけれど。

夫婦間で、恥をかきながら、話すには、このくらいが丁度よい話だよなー。
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