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第4章 夫が真実の愛を捧げる相手はどこにいるのでしょうか?名乗り出てください。
59.『公爵領が好きか?』『領地も領民も。』『まさしく公爵の伴侶の鑑。』公爵領で暮らしたいと言っただけです。鑑というなら、いさせてください。
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お出かけの都度。
つまり、毎日。
オレは、領民の暮らしぶりをリサーチしている。
誰にも言わないけれど、オレは、オレのために、オレの引っ越し先の選定をしている。
住みやすさ、治安、領民の雰囲気。
この三点の内容の一覧表を一枚、備考欄を加えた一覧表を一枚の計二枚を作成している。
備考欄には、新参者の受け入れに積極的か否か、追手がかかったとき、逃げ延びる場所はあるか、など、オレが気になることを書いている。
備考欄がある一覧表は、誰にも見せない。
公爵領の端っこなら、なんとか、生き延びられそうだ。
大量に溜まっていた公爵領の仕事は、日に日に減りつつある。
公爵一人でする分を、オレと公爵の二人で片付けていったから、後二日程で、平常量に戻ると文官が報告した。
平常量の業務だけだったら、王都にある公爵家の屋敷経由で、公爵と、密に連絡をとれていれば、問題ない。
報告を受けた公爵は、終わるのか、と残念そうだった。
「あと二日、取り組んでいただいたら、今回は完了です。今後は、溜まる前に片付けに来て下さい。」
すっかり打ち解けた文官がジョークを飛ばす。
「これから、帰り支度を進めます。
王都に戻ったら、国のお仕事と公爵のお仕事が待っていますよ。」
公爵の秘書が、スケジュール帳を見ていった。
公爵の表情が、一気にかたくなった。
仕事が山積みなことが嫌なのか?
嫌な仕事が山積みなのか?
「三日後、王都へ出発します。」
と公爵の秘書。
こんな雰囲気の中で、言い出すことになるとは思わなかったが、仕方ない。
今言わないと、帰る支度を済まされてしまう。
公爵領にいる間、公爵は、感情を出していた。
のびのびと。
でも。
王都に戻る話題で、公爵の感情は、一気に張り詰めていった。
公爵領の中は、ふるさととして、解放感があったから、楽しく過ごせていただけなのか?
根が深いのか?
王都にある公爵家の屋敷に帰ったら、公爵は、また、オレを軟禁しそうだ。
さくっと、意見を通そう。
「公爵。オレ、ここに残る。」
一緒に働いた文官も。
オレが企画立案した、『公爵とオレの楽しい雑魚寝』を盛り上げるのに協力してくれた執事長も。
公爵の秘書と。
オレの秘書。
全員が、とても温かい目でオレを見ている。
なんだ?
公爵は?
公爵を見ると。
公爵は、満足気。
公爵が満足しているなら、大丈夫だろう。
オレの希望は通るよな?
「オレは、ここで暮らすことにしたから。
オレは、公爵領に住んで、公爵領の仕事をする。」
「公爵領が好きか?」
公爵は、にやけていた。
「領地も領民もいい。
住みやすい土地だと思う(オレが)。」
「まさしく公爵の伴侶の鑑でいらっしゃる。」
と執事長。
公爵領で暮らしたいと言ったら、伴侶の鑑?
鑑というなら、公爵領に残っても、四の五の言われないな。
オレは、勝利を確信していた。
「じゃあ、そういうことで。オレ、公爵領に残るから。」
オレが、さらっと言うと。
執事長が、オレに頭を下げてきた。
「伴侶様のお心遣い、痛み入ります。」
え?
心遣い?
「夫君のために、内助の功に徹しようとする、なんと控えめな献身でしょうか。」
と文官が、オレを見て、涙ぐむ。
内助の功?
献身?
オレが、公爵に?
どんなフィルターかけているのかなー?
「公爵の伴侶は、できた方です。」
としみじみ言うのは、公爵の秘書。
「私は、秘書としてお仕えできることをこの世に二つとない幸運だと思っています。」
と力説するのは、オレの秘書。
カオス?
カオスか?
「私のヒサツグ程愛おしい伴侶は、この世にいない。」
と公爵。
公爵?
何を言っちゃってんのかなー?
公爵には、神子様がいるよね?
その場の雰囲気に流されたのかなー?
とにかく。
全員感動しているっぽいなら、オレの要望をこのまま押し通すぞ。
「オレは、ここに住むから、オレの荷物は荷造りしないでいいよ。」
オレが、にこやかに言うと。
「荷造りは、しましょうね。戻りますから。」
と、オレの秘書。
「え?」
「荷造りは、お任せください。問題なく済ませます。」
とオレの秘書。
「公爵も、いいですね?伴侶が、これ程、健気に振る舞ってくださったんですから。」
と公爵の秘書。
「ヒサツグがいるなら、戻る。」
と公爵。
「優しいお気持ちが、お似合いのご夫婦でございます。良縁に恵まれて、ようございました。」
と執事長も涙声。
待って?
オレが王都に戻らないって言ったら、感動していたよな?
あの感動は、どこに?
つまり、毎日。
オレは、領民の暮らしぶりをリサーチしている。
誰にも言わないけれど、オレは、オレのために、オレの引っ越し先の選定をしている。
住みやすさ、治安、領民の雰囲気。
この三点の内容の一覧表を一枚、備考欄を加えた一覧表を一枚の計二枚を作成している。
備考欄には、新参者の受け入れに積極的か否か、追手がかかったとき、逃げ延びる場所はあるか、など、オレが気になることを書いている。
備考欄がある一覧表は、誰にも見せない。
公爵領の端っこなら、なんとか、生き延びられそうだ。
大量に溜まっていた公爵領の仕事は、日に日に減りつつある。
公爵一人でする分を、オレと公爵の二人で片付けていったから、後二日程で、平常量に戻ると文官が報告した。
平常量の業務だけだったら、王都にある公爵家の屋敷経由で、公爵と、密に連絡をとれていれば、問題ない。
報告を受けた公爵は、終わるのか、と残念そうだった。
「あと二日、取り組んでいただいたら、今回は完了です。今後は、溜まる前に片付けに来て下さい。」
すっかり打ち解けた文官がジョークを飛ばす。
「これから、帰り支度を進めます。
王都に戻ったら、国のお仕事と公爵のお仕事が待っていますよ。」
公爵の秘書が、スケジュール帳を見ていった。
公爵の表情が、一気にかたくなった。
仕事が山積みなことが嫌なのか?
嫌な仕事が山積みなのか?
「三日後、王都へ出発します。」
と公爵の秘書。
こんな雰囲気の中で、言い出すことになるとは思わなかったが、仕方ない。
今言わないと、帰る支度を済まされてしまう。
公爵領にいる間、公爵は、感情を出していた。
のびのびと。
でも。
王都に戻る話題で、公爵の感情は、一気に張り詰めていった。
公爵領の中は、ふるさととして、解放感があったから、楽しく過ごせていただけなのか?
根が深いのか?
王都にある公爵家の屋敷に帰ったら、公爵は、また、オレを軟禁しそうだ。
さくっと、意見を通そう。
「公爵。オレ、ここに残る。」
一緒に働いた文官も。
オレが企画立案した、『公爵とオレの楽しい雑魚寝』を盛り上げるのに協力してくれた執事長も。
公爵の秘書と。
オレの秘書。
全員が、とても温かい目でオレを見ている。
なんだ?
公爵は?
公爵を見ると。
公爵は、満足気。
公爵が満足しているなら、大丈夫だろう。
オレの希望は通るよな?
「オレは、ここで暮らすことにしたから。
オレは、公爵領に住んで、公爵領の仕事をする。」
「公爵領が好きか?」
公爵は、にやけていた。
「領地も領民もいい。
住みやすい土地だと思う(オレが)。」
「まさしく公爵の伴侶の鑑でいらっしゃる。」
と執事長。
公爵領で暮らしたいと言ったら、伴侶の鑑?
鑑というなら、公爵領に残っても、四の五の言われないな。
オレは、勝利を確信していた。
「じゃあ、そういうことで。オレ、公爵領に残るから。」
オレが、さらっと言うと。
執事長が、オレに頭を下げてきた。
「伴侶様のお心遣い、痛み入ります。」
え?
心遣い?
「夫君のために、内助の功に徹しようとする、なんと控えめな献身でしょうか。」
と文官が、オレを見て、涙ぐむ。
内助の功?
献身?
オレが、公爵に?
どんなフィルターかけているのかなー?
「公爵の伴侶は、できた方です。」
としみじみ言うのは、公爵の秘書。
「私は、秘書としてお仕えできることをこの世に二つとない幸運だと思っています。」
と力説するのは、オレの秘書。
カオス?
カオスか?
「私のヒサツグ程愛おしい伴侶は、この世にいない。」
と公爵。
公爵?
何を言っちゃってんのかなー?
公爵には、神子様がいるよね?
その場の雰囲気に流されたのかなー?
とにかく。
全員感動しているっぽいなら、オレの要望をこのまま押し通すぞ。
「オレは、ここに住むから、オレの荷物は荷造りしないでいいよ。」
オレが、にこやかに言うと。
「荷造りは、しましょうね。戻りますから。」
と、オレの秘書。
「え?」
「荷造りは、お任せください。問題なく済ませます。」
とオレの秘書。
「公爵も、いいですね?伴侶が、これ程、健気に振る舞ってくださったんですから。」
と公爵の秘書。
「ヒサツグがいるなら、戻る。」
と公爵。
「優しいお気持ちが、お似合いのご夫婦でございます。良縁に恵まれて、ようございました。」
と執事長も涙声。
待って?
オレが王都に戻らないって言ったら、感動していたよな?
あの感動は、どこに?
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