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第4章 夫が真実の愛を捧げる相手はどこにいるのでしょうか?名乗り出てください。

57.『当代公爵夫婦の仲睦まじいご様子に安心しております。』『へ?』公爵とオレは、健全な家族旅行を満喫します。

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別邸に戻って、夕飯と湯浴みの間に、その件が持ち上がった。

部屋の準備がいるために、お伺いを立てにきたのだ。

何の部屋?

夫婦の寝室を使用するか、しないか、問題。
 
ヤグルマさんから、公爵が夫婦の寝室の使用をオレに拒否されている話は伝わっている。

それでも、一応、オレと公爵が揃っているときに、確認をしてきた、となると?

今後の、オレの逃亡先確保の観点から、柔軟に対応した方がいいな。


先代公爵夫人の花畑を見に行く前のオレに同じ質問をしていたら。

なし!と有無を言わせず、却下していたけどな?

オレと公爵は、夫婦の寝室は、使わない。

使わないが、オレは、次善の策を用意した。

オレは、家族孝行をすると決めた。

公爵の伴侶として、公爵と過ごす時間を、頭ごなしに拒否しない。

「初めての家族旅行だから。
オレは、楽しい思い出にしたい。

夜は、ベッドで二人だけじゃなくて。

広い部屋の床に、絨毯と布団を敷き詰めて、寝転がりながら、眠くなるまで話をする。
眠くなったら、自由に寝るようにしよう?

仕事の手が空いた人は、オレと公爵が眠る前に、何か一言言いにくること。

明日のメニューでも、明日のオススメでも、思い出でもいい。

話題は、仕事に絡めなければ、何でもよし。

公爵、夫婦の寝室にこもるより、色んな人から、一言貰う方が、発見があると思うぞ?」

オレは、家族旅行と言って、新婚旅行とは言わなかった。

新婚旅行だと、立ち消えした初夜騒動、再び、となるから。

公爵とオレが迎える初夜?
ない。

オレとの初夜がなくても、公爵は、オレから交代した伴侶と初夜をするから、問題はない。

オレは、素晴らしい脳内の計画をおくびにも出さないで、床で雑魚寝を実現させた。

「面白そうだ。」
という公爵の一言で、さくっと決定。



雑魚寝部屋で寝巻き姿でゴロゴロするオレを見て、公爵も勇気を出して、ゴロゴロし始めた。

オレ、畳が好きなんだよ。

ベッドより、畳に布団を敷いて寝起きしたい派なんだよ、オレ。

だから、久しぶりの床にゴロゴロが、楽しくて仕方ない。

オレと公爵がゴロゴロしていると、使用人が、ぼちぼちやってきた。

使用人は、ゴロゴロしまくっている、オレを最初に見て、ぎょっとしてから、公爵がのびのびと寛いでいる姿を見て微笑む。

公爵の愛され加減は、青天井だと、オレは確信した。

公爵とオレ自身のために、公爵を撥ね付けずに、家族孝行を思い立ったオレは、先見の明がある。

「今日の最後の一人は、私です。」
と名乗ったのは、別邸の執事長。

公爵は、このまま寝たら、幸せな夢を見るだろうな、と思うくらい、顔が明るい。

「当代公爵夫妻の仲睦まじいご様子に、安心しております。」

何だって?

オレと公爵が仲睦まじい?

そんなわけ、あるか?

ない、ない。

オレは、公爵の伴侶の立場があるから、使用人を前にして、あからさまに、夫婦の仲を否定したりは、しないけどさー。

どこをどう思い出しても、仲睦まじい判定が出る場面は、なかったぞ?

オレは、口に出さないけれど、怪訝な顔をしていた。

一方。

公爵は。

なぜか?

顔をほころばせている。

え?

公爵は、嬉しいのか?

仲睦まじい、と評されている相手は、オレだぞ?

神子様じゃないぞ?


公爵にツッコミ入れるのをオレはためらった。

なんだかんだで、今日一日は、異世界人になって一番楽しかった。

明日を楽しみにしているオレがいる。

公爵にもオレにも、機嫌よく、一日が終わる日があってもいいよな?

幸せな気分のうちに、寝てしまおう。
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