《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

第1章 異世界人になっていました。早く日本に帰りたいです。どうやったら、帰れますか。

3.旅は道連れ世は情け。とは言いますが。道連れにされた側は、どうすりゃいいんでしょうか？

聞こえていたよね？

話しかけたら、オレを見ていたよね？


オレは、気球の中にいる。

お空の散歩を楽しむ気分ではない。

だってさー。

日本じゃないんだよ。

異世界の安全基準が、日本より高いとは思えないよね？

しかも、密室にさ。
いきなりオレをお姫様抱っこする男と、二人っきり。

オレの安息の地はどこ？

オレは、1人で、鈍行列車の旅をする予定だったのに。

急ぎじゃなければさ、空いていて、いいよね、鈍行列車。


オレと男の間には、気球に乗ってから、会話がない。

『キャンセル』
とオレが言ってから、男は、一言も喋らない。

初対面の人と密室に二人っきり。

会話がない。

スマホもない。

ゲームもない。

オレ、することがないんだけど？

空の青さは、3秒で飽きた。

寝るか。

寝よう。

目的地に着く頃には、起こすよな？

さすがに、オレを気球に乗せたまま、海に出したりしないよな？

考えても、分からん。

おやすみなさい。



騒がしいと思って、目を覚ますと。

どこぞの建物の中。

男の腕の中にいたオレ。

なんで、また、お姫様抱っこなんだよ？

建物の中だったら、ソファにでも、寝かしてくれよ。

オレをお姫様抱っこしたまま、男は、何人かと話をしていた。

なあ。

オレ、話が始まる前に目を覚ますか、話が終わって解散してから、目を覚ましたかったなー。

男と話をしていた人達に、めっちゃ見られているんだけど？

見たくなる気持ちは分かるよ。

オレが、逆の立場なら、起きた、とか思って、見ちゃうよ？

でもさー。

見すぎじゃない？

見すぎだよ！

会話を止めて、全員で、じっとオレを観察するのは止めて！

オレは、赤ちゃんじゃないの。

大人だからね。

どうすんの、これ？

誰か、なんか、話をするの？

話をしないなら、オレと周りの人には共通の知人にあたる男が、仕切ってよね？

待った。

オレは、待った。

誰も喋らない。

喋らないで、オレを見ている。

男にお姫様抱っこされているオレを。

もしかして。

もしかしなくとも。

オレ待ち？

オレが話すの待ちなの、ねえ？

分かんないって。

オレ、異世界のルール知らないから。

何を話せばいいんだよ？

あ、男に聞くか、とりあえず。

「目的地に着いた？」
とオレは、男に聞いてみた。