上 下
198 / 294

198.メグたんが話したモエカを死なせた動機を聞いた俺とラキちゃん。『ラキちゃんのなまくら刀は、鞘から抜けたわね』とメグたん。

しおりを挟む
俺は、メグたんとの戦いをラキちゃんといるため、と考えていた。

その思いは変わらない。

モエカへの死に納得できない、俺の不満が追加。

俺のやることに変わりはない。

やる気は、上がった。

モエカは既に亡くなっている。

メグたんが、モエカを死なせて申し訳ないと感じたところで今さらだ。

俺は、メグたんにモエカを死なせたことを反省などしてほしくない。

俺は、メグたんの更生など望んでいない。

メグたんにモエカを殺す正当な動機があったところで、俺は、そんな動機があれば仕方がない、などとは言わない。

人を殺してから、人を殺したことを悔やんで、得るものがあるのは、人を殺した者だけ。

モエカを殺したメグたんが、モエカを殺すのではなかったと、殺してから話したとしても。

殺されたモエカにも、見殺しにした俺にも、得るものはない。

殺されたモエカが、苦しみながら死んだ事実は変わらない。

苦しみながらも、絶望の淵にいるモエカに生かされた俺は、モエカを見殺しにして生きたという業から一生逃れられない。

モエカが亡くなったことにも、モエカの亡くなり方にも納得できない俺は、今、俺の鬱憤を吐き出す場所を見つけた。

それだけだ。

俺は、モエカの死による俺の鬱憤を溜め込まない。

俺の目標は、正義が勝たないデスゲームから脱出し、正義が勝たないデスゲームとは無縁の生活を送ること。

配信で俺の顔は見られているが、人殺しは、まだしていない。

正義が勝たないデスゲームを脱出してからも、俺は、大手を振って、太陽の下を歩く。

正義が勝たないデスゲームを脱出してから、会うことになるだろう黒幕との交渉次第でなんとかしたい。

そのために。

正義が勝たないデスゲームでの鬱憤は、正義が勝たないデスゲーム内で晴らしていく。

かと言って。
俺は、メグたんに一矢報いる気などはない。

ここは、正義が勝たないデスゲーム。

タケハヤプロジェクトも正義が勝たないデスゲームも、佐竹ハヤトが作り上げた傑作。

俺は、友達の作り上げた傑作を壊す気はない。

佐竹ハヤトが生きていたら、俺が壊しても、佐竹ハヤトは、別のものを作り出せた。

佐竹ハヤトは、もう生きていない。

佐竹ハヤトが作り上げたものを壊してしまえば、もう、佐竹ハヤトが遺したものは、何も残らなくなってしまう。

だから、俺は、壊さない。

タケハヤプロジェクトも、
正義が勝たないデスゲームも。

壊さずに脱出する。

俺にはできる。

俺だから、できる。

俺の脱出を阻むものはない。

北白川サナは、俺に正義が勝たないデスゲームへの協力を求めた。

北白川サナは、目的があるから、俺を死なせない。

北白川サナは、どこかで、見ているはず。

俺は、ラキちゃんと一緒に暴れるが、俺が死ぬようなことはしない。

俺が死にそうになったら、俺を庇おうとするラキちゃんを死なせることに繋がる。

メグたんは、人殺しの適性を見込まれてタケハヤプロジェクトの参加者になった。

メグたんの人殺し適性について、俺はケチをつけない。

佐竹ハヤトが、俺の友達が、身命を賭して、作り上げたものが成功しているのは、メグたんが参加しているから。

ゲームメイクは、ツカサ。

チェックメイトを決めるのは、メグたん。

なら、俺は、メグたんを撹乱してやる。

ラキちゃんの望み通りに。

それで、俺の鬱憤は、チャラにする。

俺は、腹を決めた。

メグたんは、刺すような眼差しを俺に向ける。

「ラキちゃんのなまくら刀は、鞘から抜けたわね?」
とメグたん。

ラキちゃんは、全回復できてはいないものの、動けそうだ。

これ以上、ラキちゃんの休養のための引き延ばしは、無理だろう。

メグたんが焦れてくる。

「ラキちゃん。俺は、動ける。」

俺は、ラキちゃんに告げた。

「何度も言うけど、ショウタは、自由に動いていいから。」
とラキちゃん。

「分かった。」

場所を移動するため、立ち去ろうとした俺を、ラキちゃんは呼び止めた。

「ショウタ、今からは自暴自棄にだけはならない、と約束して。
生きて。死なないで。」
とラキちゃん。

ラキちゃんは、モエカの話を聞いた俺を心配している。

俺は、ラキちゃんに、モエカのことは、気にしていないから、などとは言わない。

モエカを見殺しにした事実を気にしないで、俺が生きることは難しい。

ラキちゃんも、俺と一緒に、メグたんのトークを聞いていた。

俺自身が分かっていることを、俺は、誤魔化してラキちゃんに伝えたりはしない。

嘘も誤魔化しも、ラキちゃんと俺の間では、邪魔になる。

ありのままの思いを、ありのままの言葉で。

「約束する。
ラキちゃんも約束してほしい。
俺は、死なない。
ラキちゃんも死なせない。」

「ショウタとの約束は、私にできるかどうか。叶えられたらいいわね。」
とラキちゃんは、苦笑した。

「今の俺には、ラキちゃんの言葉をラキちゃんから聞くだけで十分だ。」

ラキちゃんは、苦笑いしたまま、頷いた。

「そう。それは、よかったわ。行って。ショウタ。」
とラキちゃん。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

グリムの囁き

ふるは ゆう
ミステリー
7年前の児童惨殺事件から続く、猟奇殺人の真相を刑事たちが追う! そのグリムとは……。  7年前の児童惨殺事件での唯一の生き残りの女性が失踪した。当時、担当していた捜査一課の石川は新人の陣内と捜査を開始した矢先、事件は意外な結末を迎える。

後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~

絹乃
キャラ文芸
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※表紙はminatoさまのフリー素材をお借りしています。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。 ※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。

異世界でゆるゆる生活を満喫す 

葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。 もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。 家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。 ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。

放浪探偵の呪詛返し

紫音
ミステリー
※第7回ホラー・ミステリー小説大賞にて異能賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  観光好きで放浪癖のある青年・永久天満は、なぜか行く先々で怪奇現象に悩まされている人々と出会う。しかしそれは三百年前から定められた必然だった。怪異の謎を解き明かし、呪いを返り討ちにするライトミステリー。 ※11/7より第二部(第五章以降)の連載を始めました。  

意味がわかると下ネタにしかならない話

黒猫
ホラー
意味がわかると怖い話に影響されて作成した作品意味がわかると下ネタにしかならない話(ちなみに作者ががんばって考えているの更新遅れるっす)

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

悪役令嬢はお断りです

あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。 この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。 その小説は王子と侍女との切ない恋物語。 そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。 侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。 このまま進めば断罪コースは確定。 寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。 何とかしないと。 でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。 そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。 剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が 女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。 そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。 ●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ●毎日21時更新(サクサク進みます) ●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)  (第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。

処理中です...