上 下
195 / 243

195.俺は、ラキちゃんに、ラキちゃんを死なせない決意を差し出す。

しおりを挟む
「ラキちゃんが先攻していいわ。」
とメグたん。

「ありがとう。」
とラキちゃんは、苦笑した。

「ラキちゃんは、なまくら刀を使いたいみたいだから。」
とメグたん。

メグたんは、俺がラキちゃんにまとわりついているのが不快だと隠さない。

俺とラキちゃんの勝率を上げるには、メグたんの感情を振り切らせて、メグたんに判断を誤らせるか。

ラキちゃんは、俺がいない方が動きやすい。

それでも、ラキちゃんは、俺の頼みを引き受けて、俺に助けられることにした。

感情のままにメグたんにぶつかっていたラキちゃんは、既に、感情を制御している。

俺が増えたことで、ラキちゃんは、感情で動く前の冷静さを取り戻した。

ラキちゃんには、一般市民を犠牲にしないという刑事魂が息づいている。

ラキちゃんが、がむしゃらにメグたんに突っ込んでいくことは、もうない。

ラキちゃんを死なせたくない俺ができることは、ラキちゃんに、冷静さを取り戻させることだった。

感情のまま突っ込んで、死ぬ。

感情の発散と命が失われる苦しみの到達点が同時にきたなら、満足度の高い死に方になっただろうか?

俺は、ラキちゃんを死なせたくないという俺の感情を優先した。

俺は、俺がしたいことだけをして生きていく。

今までも。

今このときも。

俺は、俺がしたいこと以外には何もしたくない。

俺は、ラキちゃんを助けたいと考えて動いたが、ラキちゃんの希望を考えてはいない。

ラキちゃんのためになること。

ラキちゃんがしたいこと。

ラキちゃんの希望を聞く、と、俺はラキちゃんに言わなかった。

ラキちゃんの希望が、俺の希望にそわないなら、俺はラキちゃんの希望を叶えない。

正義が勝たないデスゲームから脱出できないラキちゃんが、生きるのに疲れた、と嘆いていても。

ラキちゃんに、楽になりたいなら、死んでしまえば、とは言わない。

俺は、ラキちゃんが死ぬところを見たくない。

ラキちゃんに死んでほしくない。

正義が勝たないデスゲームで生き続けることに、ラキちゃんが何の希望を持てなくても。

この先、正義が勝たないデスゲームを脱出した俺が、正義が勝たないデスゲームを脱出できないラキちゃんを取り残すことになっても。

俺の考えは、利己的だ。

自覚している。

生き延びることに希望を見いだせる状況ではないラキちゃんを生かしたい、と思うことは、偽善でさえない。

ただ、残酷なだけ。

それでも。

俺とラキちゃんの関係を、モエカと佐竹ハヤトの関係と似たものに、俺はしたくない。

俺は、ラキちゃんが死ぬことを最終手段にしない。

ラキちゃんのためになることをしない俺が、ラキちゃんに差し出せるのは、ラキちゃんを死なせない決意だけだ。

「ラキちゃん。指示をくれ。」

「ショウタには、メグの撹乱をしてもらう。

ショウタの気が向いたときに、メグに仕掛けて。

ショウタは、私の動きもメグの動きも考えなくていい。

ショウタが思いつきで動く方が効果的。」
とラキちゃん。

「分かった。」

「つまらない会話は誰も喜ばないわ。」
とメグたん。

ラキちゃんも俺もメグたんも、俺が戦力になるとは考えていない。

俺を好まないメグたんは、ラキちゃんが俺を戦いに加えることに対し、俺を役立たずだと卑下する以上の発言をしない。

俺とラキちゃんとメグたんの三人の中で、俺とラキちゃんは、メグたんに負けないことを目指している。

メグたんだけは、視点が異なる。

タケハヤプロジェクトの参加者であり、正義が勝たないデスゲームに参加しているメグたんは、メグたんが勝つことを前提に、画面越しにどう見せるかを考えている。

俺に、人殺しをやり遂げる技術はない。

覚悟もない。

人を殺さないでいることが、正義が勝たないデスゲームを脱出するための唯一の条件であるなら、死守したい。

メグたんと争っても、致命傷を負わせたくない。

戦って勝つのは、ラキちゃんに任せたい。

俺は、ラキちゃんを助けると言いながら、俺の手を汚したくないと考えている。

ラキちゃんが、俺に具体的な指示を出さないのは、俺がまだ、人を殺していないから。

俺は、ラキちゃんと同じ地点に立っていない。

俺は、ラキちゃんに庇われている。

しつこく頼み込んで、庇われてやっとスタート地点に立った俺は、ラキちゃんに、ラキちゃんを死なせない決意を差し出す。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha
恋愛
ずっと好きだった初恋の相手、社長の弱みを握る為に頑張ります!!にゃんっ♥ 財閥の分家の家に代々遣える“秘書”という立場の“家”に生まれた加藤望。 ”秘書“としての適正がない”ダメ秘書“の望が12月25日の朝、愛している人から連れてこられた場所は初恋の男の人の家だった。 財閥の本家の長男からの指示、”星野青(じょう)の弱みを握ってくる“という仕事。 財閥が青さんの会社を吸収する為に私を任命した・・・!! 青さんの弱みを握る為、“ダメ秘書”は今日から頑張ります!! 関連物語 『お嬢様は“いけないコト”がしたい』 『“純”の純愛ではない“愛”の鍵』連載中 『雪の上に犬と猿。たまに男と女。』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位 『好き好き大好きの嘘』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高36位 『約束したでしょ?忘れちゃった?』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高30位 ※表紙イラスト Bu-cha作

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

転生令嬢は最強の侍女!

キノン
恋愛
とある少女は、生まれつき病弱で常に入退院を繰り返し、両親からも煙たがられていた。 ある日突然、神様と名乗る謎の青年に神の不手際で、助かるはずだった火事で逃げ遅れ死んだ事を聞かされ、その代わりに前世の記憶を持ったまま異世界に転生させてくれると言われた少女。 そして、リディア・ローレンス伯爵家の娘として転生した少女は、身体を自由に動かせる喜びに感動し、鍛える内に身体能力が開花し、いつしか並みの騎士をも軽々と倒せるほどの令嬢になっていた。平凡に暮らそうと思っていたリディアは、ふと自分が転生したのは乙女ゲームの世界だという事を思い出し、そして天使で可愛い従姉妹が将来悪役令嬢になる事を思い出す。従姉妹の断罪イベントを回避する為、リディアは陰で奮闘するが次から次へと問題に巻き込まれてしまうーーー ※ラブコメ要素有りの個性的な面々が暴れる物語にしていきたいと思っています。 ※更新不定期です。 2019.1.21 前世の名前を消し、前世の名前は出さず少女と一括りにしました。文章を大幅に修正しました。

チラ裏身辺雑記~いつかファンタジーを書くまでの果てしなく遠い道のり~(※だが新作は書いていない(キリッ【不定期更新】

今田ナイ
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでの小説投稿を中心としたネット小説投稿初心者のチラシの裏レベルの身辺雑記。 ※だが新作は書いていない(キリッ ※これといって役に立つ内容は何一つ書かれていないです。 ※おかーさんが台所から語り掛けるような文体で酷いです。平にご容赦くださいませ。 ※結果的に、Webコンテンツ大賞に向けて改稿し続けるおかーさんの実録物(?)の様相を呈してきました(なろうさんのネトコン他に浮気もします(爆 ※ようやく不定期更新になりました。先日挫けたので、毎日更新記録は絶たれました♪

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

転生令嬢は腹黒王子の腕の中

氷雨
恋愛
転生令嬢×王子の王道恋愛&ファンタジーストーリー 転生特典としてチートを手に入れたエヴァーナ、暇さえあれば魔物の討伐をしていたエヴァーナは気が付けばSランク冒険者になっていた。 これはそんな転生令嬢が討伐先で王子様に気に入られ、逆に捕まってしまう話。 終始イチャイチャしてるバカップルに発展致しますので、覚悟のある方だけご覧下さい。 また、特に国の陰謀とか、悪の敵が現れるなんてことも無くほのぼのとした物語になると思います…多分。 ※定期更新するために文章は短めでいきます。 朝と夜で1日2話程更新しようと思いま す。話がだいたい落ち着いた頃からはスローペ ースの更新になると思います。

【R18】ショタが無表情オートマタに結婚強要逆レイプされてお婿さんになっちゃう話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

【R18】溺愛される公爵令嬢は鈍すぎて王子の腹黒に気づかない

かぐや
恋愛
公爵令嬢シャルロットは、まだデビューしていないにも関わらず社交界で噂になる程美しいと評判の娘であった。それは子供の頃からで、本人にはその自覚は全く無いうえ、純真過ぎて幾度も簡単に拐われかけていた。幼少期からの婚約者である幼なじみのマリウス王子を始め、周りの者が シャルロットを護る為いろいろと奮闘する。そんなお話になる予定です。溺愛系えろラブコメです。 女性が少なく子を増やす為、性に寛容で一妻多夫など婚姻の形は多様。女性大事の世界で、体も中身もかなり早熟の為13歳でも16.7歳くらいの感じで、主人公以外の女子がイケイケです。全くもってえっちでけしからん世界です。 設定ゆるいです。 出来るだけ深く考えず気軽〜に読んで頂けたら助かります。コメディなんです。 ちょいR18には※を付けます。 本番R18には☆つけます。 ※直接的な表現や、ちょこっとお下品な時もあります。あとガッツリ近親相姦や、複数プレイがあります。この世界では家族でも親以外は結婚も何でもありなのです。ツッコミ禁止でお願いします。 苦手な方はお戻りください。 基本、溺愛えろコメディなので主人公が辛い事はしません。

処理中です...