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167.火にまかれている参加者と、火にまかれている参加者に追われる参加者。冷静に見晴台から螺旋階段をおりてくるツカサ。俺の役に立つのは?

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俺は、火にまかれている参加者の動向に気を取られて、他の参加者の動向に気を配っていなかった。

音がしたのは、見晴台方面。

見晴台に目を向けると、見晴台の上に一人、見晴台の下に一人。

下の一人は、見晴台から落ちた、か?

見晴台の上にいるのは、テニス経験者っぽい男、ツカサ。

見晴台の下に倒れているのは、背格好からして、ツカサにつきまとっていた男。

火にまかれている参加者と火にまかれている参加者に追いかけられている参加者の活動範囲が広がるにつれ、怒号と悲鳴と人体の焼ける匂いが広がっていく。

ツカサが一人で立っている見晴台は、静寂に満ちていた。

ツカサは、肩を回して調整してから、螺旋階段をおりていく。

火にまかれている参加者においかけられている参加者が、逃げ惑いながら、火にまかれている参加者に罵声を浴びせている。

火にまかれている参加者は、参加者の過半数。

一人から逃げても、逃げた先で、二人、三人と追いかけ回されている。

火にまかれている参加者のうち、動いていない参加者もいるが、動いている参加者の方が圧倒的に多い。

火にまかれていても、すぐに息絶えるわけではなく、息絶えるときまで、痛みと苦しみが続く。

ここは、正義が勝たないデスゲーム会場。

正義が勝たないデスゲームの参加者は、人を殺して、人に殺されるために生きている。

病院と違って、治療されることはない。

痛みに寄り添う人も、苦しみを慰めてくれる人もいない。

痛みと苦しみに一人で耐えて、何になるか?

痛みも苦しみも、自分一人でとどめておく必要は、どこにあるのか?

後先など、ない。

人生の終わりは、見えている。

痛みと苦しみと、命を奪われる恐怖と憤り。

どうせ、最後は全部なかったことになる。

自分の手元には、何も残らない。

ならば。

良いことをして、良い人でいなくてもよいではないか。

痛みも苦しみも恐怖も憎悪も憤りも、全部、全部、分かち合って、二乗、三乗にしてしまえばいい。

どうせ、最後はゼロになる。

自分だけが苦しいなんて耐えられない。

お前も、お前も、苦しんで死ね。

火にまかれている参加者は、無事な参加者を探して、見つけては、集団で追い詰めていく。

「こっち来るなよ。
お前、自分の姿、分かっているよな?」

「火だるまのまま、近づかないで!
火が移ったら、どうしてくれるの!」

「嫌がらせなの?」

「仲良くやってきただろう!
恩を仇で返す気か!」

火にまかれている参加者のターゲットは、火にまかれている参加者の知り合いだ。

知り合いの参加者を見つけては、追いかけている。

ある程度手の内が知れている知り合いの方が、見ず知らずの誰かより、襲いやすいか。

どうせ助からないなら、他人より知り合いを道連れにしたいのか。

死ぬときくらい、憎しみをぶつけたいのか。

俺を追いかけてくる参加者は、まだいない。

ラキちゃん、北白川サナ、メグたんを探すと。

それぞれ単独行動をしていた。

俺は、ツカサとツカサにつきまとっていた男との関係が気にかかっている。

ツカサにつきまとっていた男は、何らかの目的を持ってつきまとっていたのではないか?

ツカサにつきまとっていた男の息の根があるうちに、疑問を解消するか。

俺は、見晴台へ足を向けた。

見晴台の螺旋階段をおりてくるツカサと目が合う。

ツカサの目は、冷静だった。

ツカサの表情は、感情のない目の笑顔ではなかった。

螺旋階段を降りながら、周りを見ているツカサ。

体幹には、ブレがない。

突発的な事故に慄く様子もない。

ツカサの行動は、見晴台の下の状況も把握した上か。

見晴台から落ちた男は、ツカサに余計なことをしたか、言ったかで、ツカサに落とされたか、と俺は推測した。

ツカサは、単独行動をしたがっていた。

ツカサは、集団でいることを嫌がっていた。

ツカサは、集団でいることが危険だと知っていたのか?

窪みに集まっていたのは、ツカサの人の輪が、大半だった。

メグたんの人の輪から窪みにいたのは、若干名。

単独行動の参加者は、一名。

火にまかれている参加者と同じく、見晴台の下にいる男も、助かる見込みはない。

致命傷を負っていなくても、この空間には、怪我人を救助する人がいない。

自分の命は、自分で守る。

どんな方法を使っても、生き延びる。

それができなければ、死ぬ。

正義が勝たないデスゲームのルールは、このあたり、か。

単純明快で、人間の本質をついている。

自分の命を守るために、何をするかを自分で決めて、実行に移した者だけに、生き延びるチャンスがある。

俺が、見晴台の下に着いたとき。

ツカサは、横たわる男を踏みつけていた。

「何をしに来た?」
とツカサ。

「ツカサの足元の男が、まだ生きているようだから、生きているうちは、俺の役に立たせる。

ツカサも付き合うか?」
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