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156.モエカが、佐竹ハヤトの友達だった俺にどうしても伝えたかった秘密は、支援団体の話題ではなく、警戒対象がいるという忠告だった。
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「支援団体に興味を持っていることを、まかり間違っても、支援団体に嗅ぎつけられると。
死人が出るわ。」
とモエカ。
モエカの声には、見てきたかのように、実感がこもっていた。
「既に死人が出た後か?」
「支援団体を調べていた政治家の事務所に車が前向きに突っ込んで、事務所にいた親戚が、車と壁に挟まれて圧死しているの。」
とモエカ。
タケハヤプロジェクトの推進のために、タケハヤプロジェクト側も、政治家に声をかけていたのか。
モエカの話は、タケハヤプロジェクト側についた政治家の実話か。
「片道一車線の道に面した建物の一階に、事務所はあったわ。
車は、事務所に真正面から突っ込んでいるの。
ブレーキ痕はなし。
アクセルを踏んで、ハンドル操作をミスったのが、原因とされたわ。
政治家本人ではなく、政治家に協力している親戚がピンポイントで狙われて殺された。
その政治家は、選挙のための、協力者を得られず、一人で活動を続けたけれど、その選挙では落選したわ。
その後は、正義が勝たないデスゲームに来たから、知らないけれど。
狙われたのが政治家本人なら、選挙戦は、弔い合戦で盛り上がったの。
事務所にいた親戚の死亡は、選挙活動に協力する気を、その政治家の周りから無くさせるのに、十分だった。
その政治家も被害者だから、気の毒に、とは誰しもが思う。
でも、誰も手を貸さない。
そんな状況になるの。
支援団体や、支援団体のバックより弱いと、孤立へと追い込まれるの。」
とモエカ。
モエカは、事件について、当事者から聞いているかのように詳しく知っている。
「警察は、殺人のセンを調べなかったのか?」
モエカの言い分からすると、事故ではなく、事件だ。
「警察は、ドライバーのミスによる事故として処理したわ。
殺人事件としての捜査を、警察は、最初からする気がなかった。
警察は、交通事故だと決めてかかっていたわ。」
とモエカ。
親戚を事務所で殺された政治家は、モエカのよく知っている人か?
その政治家は、モエカが、探してきたのか?
それとも、元々、その政治家と交流があったか?
「警察にも組織力学が働いていることに、私は気づいた。
どこの組織も、組織の目的を果たすためだけに生きていく人だけで、成り立っていないの。
どんな警察官も、1人の人。
警察官の家族、親戚、恋人、友達。
警察官本人が、甘い汁を吸うためや、不祥事をもみ消すために、心のままに動くこともある。
それは、本人を断罪して終わり。
罠は、どこにでも張り巡らされているの。
罠にかかるのは、本人ばかりではないわ。
罠にかかった人を助けようとした時点で、警察官本人も罠にかかるの。
そうやって、一人、二人、と無力化していくの。
あとは、警察内の政治力と、他の省庁とのパワーバランス。
支援団体と支援団体のバックより強くないから、警察は、政治家の親戚の死を殺人事件にはしなかったの。
警察からしたら、できなくなった、になると思うけれど、私には、結果しか関係ない。
この国の警察が壊されるのを避けるために。
国の未来のために立ち上がった一個人が、志半ばで、力尽きるまでの道筋を警察は作ったのよ。」
とモエカ。
正義が勝たないデスゲームは、人の介入を排除したと話していたモエカ。
モエカの怒りと悲しみと恨みは、人が介入することによって、決まりが容易に曲げられることを何度も目の当たりにしてきたことが、発端か。
俺は、ドッジボールでラキちゃんに関わろうとしなかったモエカを思い出した。
モエカは、警察のしたことに理解は示しているが、警察に対して、不信感を抱いている。
ラキちゃん本人が、どうとか、ではなく、ラキちゃんが刑事だった、ということが、モエカに距離を置かせたのか。
「支援団体について、熱弁しているが、正義が勝たないデスゲームに支障はないのか?」
「支援団体という表現を使って、名前を出していないから、いいの。
イニシャルトークの暴露話を誰が真面目に取り扱うの?
話し手本人でなければ、イニシャルが本当かどうかさえ、確かめようがない。
公園のトイレに書いてある電話番号に、わざわざかけたくなる?
その類の話なの。
今の私の暴露話は、事件にならない。
報道と拡散がなければ、ニュースにも、ゴシップにもならない。」
とモエカ。
これが、モエカにとって、死ぬ前に話したかった秘密か?
「支援団体の話は、踏み込まないだけで、知っている人もいる。
ここまでは、公然の秘密。
佐竹くんの友達だった金剛くんには、もっとすごい秘密を教えるから、かがんで。」
とモエカ。
俺は、周りを見渡す。
メグたんも、タケハヤプロジェクトの学生も、新しい動きはない。
新しい動きがないのは、現状維持。
「かがむと、危険だから、遠慮したい。」
俺やモエカを、いつでも、一輪車で殴りにこれるようスタンバイしているタケハヤプロジェクトの学生。
タケハヤプロジェクトの学生を止めていないメグたん。
「今一瞬危なくても、これから長く続く身の危険を減らしたくないの?」
とモエカ。
現状を俺が変えるのは不可能、と俺は、判断した。
俺は、すっと屈む。
「極秘情報は?」
モエカは、声を潜めた。
「今までの話は、誰でも知りうる世間話。
金剛くんが、正義が勝たないデスゲームを生き延びたいのなら、正義が勝たないデスゲームの参加者ではなく、タケハヤプロジェクトの参加者に警戒して。
正義が勝たないデスゲーム内で、一日でも長生きしたいなら、タケハヤプロジェクトの参加者を信用しないこと。
佐竹くんの友達には、長生きしてほしいの。
私の失敗を活かして。」
とモエカ。
そのとき。
俺の頭上に一輪車を振りかざした人の動きが、俺の視界に入ってきた。
死人が出るわ。」
とモエカ。
モエカの声には、見てきたかのように、実感がこもっていた。
「既に死人が出た後か?」
「支援団体を調べていた政治家の事務所に車が前向きに突っ込んで、事務所にいた親戚が、車と壁に挟まれて圧死しているの。」
とモエカ。
タケハヤプロジェクトの推進のために、タケハヤプロジェクト側も、政治家に声をかけていたのか。
モエカの話は、タケハヤプロジェクト側についた政治家の実話か。
「片道一車線の道に面した建物の一階に、事務所はあったわ。
車は、事務所に真正面から突っ込んでいるの。
ブレーキ痕はなし。
アクセルを踏んで、ハンドル操作をミスったのが、原因とされたわ。
政治家本人ではなく、政治家に協力している親戚がピンポイントで狙われて殺された。
その政治家は、選挙のための、協力者を得られず、一人で活動を続けたけれど、その選挙では落選したわ。
その後は、正義が勝たないデスゲームに来たから、知らないけれど。
狙われたのが政治家本人なら、選挙戦は、弔い合戦で盛り上がったの。
事務所にいた親戚の死亡は、選挙活動に協力する気を、その政治家の周りから無くさせるのに、十分だった。
その政治家も被害者だから、気の毒に、とは誰しもが思う。
でも、誰も手を貸さない。
そんな状況になるの。
支援団体や、支援団体のバックより弱いと、孤立へと追い込まれるの。」
とモエカ。
モエカは、事件について、当事者から聞いているかのように詳しく知っている。
「警察は、殺人のセンを調べなかったのか?」
モエカの言い分からすると、事故ではなく、事件だ。
「警察は、ドライバーのミスによる事故として処理したわ。
殺人事件としての捜査を、警察は、最初からする気がなかった。
警察は、交通事故だと決めてかかっていたわ。」
とモエカ。
親戚を事務所で殺された政治家は、モエカのよく知っている人か?
その政治家は、モエカが、探してきたのか?
それとも、元々、その政治家と交流があったか?
「警察にも組織力学が働いていることに、私は気づいた。
どこの組織も、組織の目的を果たすためだけに生きていく人だけで、成り立っていないの。
どんな警察官も、1人の人。
警察官の家族、親戚、恋人、友達。
警察官本人が、甘い汁を吸うためや、不祥事をもみ消すために、心のままに動くこともある。
それは、本人を断罪して終わり。
罠は、どこにでも張り巡らされているの。
罠にかかるのは、本人ばかりではないわ。
罠にかかった人を助けようとした時点で、警察官本人も罠にかかるの。
そうやって、一人、二人、と無力化していくの。
あとは、警察内の政治力と、他の省庁とのパワーバランス。
支援団体と支援団体のバックより強くないから、警察は、政治家の親戚の死を殺人事件にはしなかったの。
警察からしたら、できなくなった、になると思うけれど、私には、結果しか関係ない。
この国の警察が壊されるのを避けるために。
国の未来のために立ち上がった一個人が、志半ばで、力尽きるまでの道筋を警察は作ったのよ。」
とモエカ。
正義が勝たないデスゲームは、人の介入を排除したと話していたモエカ。
モエカの怒りと悲しみと恨みは、人が介入することによって、決まりが容易に曲げられることを何度も目の当たりにしてきたことが、発端か。
俺は、ドッジボールでラキちゃんに関わろうとしなかったモエカを思い出した。
モエカは、警察のしたことに理解は示しているが、警察に対して、不信感を抱いている。
ラキちゃん本人が、どうとか、ではなく、ラキちゃんが刑事だった、ということが、モエカに距離を置かせたのか。
「支援団体について、熱弁しているが、正義が勝たないデスゲームに支障はないのか?」
「支援団体という表現を使って、名前を出していないから、いいの。
イニシャルトークの暴露話を誰が真面目に取り扱うの?
話し手本人でなければ、イニシャルが本当かどうかさえ、確かめようがない。
公園のトイレに書いてある電話番号に、わざわざかけたくなる?
その類の話なの。
今の私の暴露話は、事件にならない。
報道と拡散がなければ、ニュースにも、ゴシップにもならない。」
とモエカ。
これが、モエカにとって、死ぬ前に話したかった秘密か?
「支援団体の話は、踏み込まないだけで、知っている人もいる。
ここまでは、公然の秘密。
佐竹くんの友達だった金剛くんには、もっとすごい秘密を教えるから、かがんで。」
とモエカ。
俺は、周りを見渡す。
メグたんも、タケハヤプロジェクトの学生も、新しい動きはない。
新しい動きがないのは、現状維持。
「かがむと、危険だから、遠慮したい。」
俺やモエカを、いつでも、一輪車で殴りにこれるようスタンバイしているタケハヤプロジェクトの学生。
タケハヤプロジェクトの学生を止めていないメグたん。
「今一瞬危なくても、これから長く続く身の危険を減らしたくないの?」
とモエカ。
現状を俺が変えるのは不可能、と俺は、判断した。
俺は、すっと屈む。
「極秘情報は?」
モエカは、声を潜めた。
「今までの話は、誰でも知りうる世間話。
金剛くんが、正義が勝たないデスゲームを生き延びたいのなら、正義が勝たないデスゲームの参加者ではなく、タケハヤプロジェクトの参加者に警戒して。
正義が勝たないデスゲーム内で、一日でも長生きしたいなら、タケハヤプロジェクトの参加者を信用しないこと。
佐竹くんの友達には、長生きしてほしいの。
私の失敗を活かして。」
とモエカ。
そのとき。
俺の頭上に一輪車を振りかざした人の動きが、俺の視界に入ってきた。
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