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143.さじ加減は間違えない。周りから隔離された状況は、俺に都合がいい。情報が刷新されず、自分の信じたい情報を信じる心に、波紋を生じさせる。

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俺がこれからすることで、重要なのは、さじ加減。

デスゲーム運営の意向に全面的に逆らうのは、アウト。

消される。

デスゲーム運営の予期しない方向性を見つけて、着地する。

そうすれば、消されない。

基本中の基本。

俺は、正義が勝たないデスゲームに参加している。

俺の命を握っているのは、俺ではなく、デスゲーム運営。

勘違いしてはいけない。

デスゲーム運営に反乱するのではない。

反抗的な態度も見せない。

俺は、デスゲーム運営に新しい着眼点を教えてやる。

ものの道理を弁えていれば、長いものに巻かれなくても生きていける。

俺の処世術。

ものの道理というのは、いずれの場合も、正義ではない。

良識でもない。

理想も幻想も、存在しない。

俺は、はき違えないが。

タケハヤプロジェクトの学生は、どうか?

理想も、信じたかった現実も。

そこには、何もないということを知らないまま生きていく人もいるだろうか。

「正義が勝たないデスゲームの存在は、秘されてきた。

何かあるかもしれない、と探っている勢力はいたが。」

正義が勝たないデスゲームが使っている土地に、先に目をつけていた勢力。

加地さんに仕事を持ち込んだ誰かの後ろで糸を引いていたであろう勢力。

駒ごときに顔を見せることも、名乗ることもしないやつら。

「俺が知る限り、正義が勝たないデスゲームの情報は、知る人ぞ知る話であり、何も公表されていない。

タケハヤプロジェクトは、公表されてきたか?」

タケハヤプロジェクトの学生は、構えずに返事を寄越した。

「何も発表されていないはずだ。
俺達が、正義が勝たないデスゲームから出られなくなったせいで、発表できなくなったはず。」

「状況を理解できているなら、何より。

タケハヤプロジェクトの学生が、どこで何をしているか。

どれだけの人が知っているか。

どれだけの人が、知っていて黙っているか。

どれだけの人が本気で探しているか。

タケハヤプロジェクトの学生があてにしていた誰かは、今、どこで、何をしているか。

考えたことはあるか?」

「は?」

一度に詰め込み過ぎたか?

「人は、いなくなったら、いなくなったで、いない暮らしに適応していく。

事実いないのだから、いるものとして期待しても、実際には何も返してもらえない。

いない状態を受け入れて、いない状態に慣れていくしか、残された人の選択肢はない。」

「何が言いたい?」

「タケハヤプロジェクトは、何も発表されないまま、正義が勝たないデスゲームに早変わり。

タケハヤプロジェクトの学生は、自主的にタケハヤプロジェクトの見学に行き、一人も帰ってこずに、正義が勝たないデスゲームに参加している。

誘拐でも、拉致でもなく、タケハヤプロジェクトの学生は、自発的に出かけて帰ってこない選択をしたようにしか見えない。

集団家出を疑われて調べるには、全員、トウが立っている。

しかも、会員制有料配信サービス、正義が勝たないデスゲーム内での生存は確認できている。」

タケハヤプロジェクトの学生は、自分達の置かれた状況が、外部から見た場合、どう見えるか、理解した。

「まさか。」

「誰が、探す?

探すまでもない。

タケハヤプロジェクトの学生の所在は、はっきりしている。

正義が勝たないデスゲームを視聴すれば、生存確認は簡単にできる。」

「ああ、できる。」

「タケハヤプロジェクトの学生を探して、正義が勝たないデスゲームの外に出してやろうという人は、いつ名乗りを上げる?」

俺が話していた一人は、黙った。

話し手は、遠くで、見ているだけで、言葉は発しない。

別の一人が声を上げた。

「俺達は、来たくて、ここへ来たわけではない。
今起きているのは、大きな犯罪で、事件だ。
いつか、誰かが真実にたどり着いて、必ず報道される。
俺達は、そのときまで粘ればいい。」

「報道?
タケハヤプロジェクトと正義が勝たないデスゲームを取材して報道する、ということか?」

「そうだ。俺達のことが報道されれば。」

「報道してくれる人にあてがあるから、気を大きく保てるのか。

報道は、その人の趣味か?仕事か?」
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