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120.モエカの行動に振り幅があるのは、佐竹ハヤトの責任を追求しても、モエカの状況は好転しないから。床下の階段を下りて上る意味は?

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モエカは、黙って俺を見ているが、コメントしようがない。

俺は、黙って見つめ返すことにした。

無の境地で。

「佐竹くんが、二つ目を成し遂げた結果、私はここに来る羽目になったの。」
とモエカは、光のない目でニヒルに笑う。

モエカは、佐竹ハヤトに謝罪ではなく、命で償わせた理由を俺に話しているのか。

やっと、つかめた。

モエカの俺に対する行動の振り幅の理由。

将来への展望がないことへの苛立ちと絶望だ。

佐竹ハヤトに命で償わせても、モエカは、デスゲームから出られない。

デスゲームは、生きるために人を殺す一方で、殺されなければ、脱出できない場所だ。

佐竹ハヤトは、死によって、デスゲームを脱出した。

佐竹ハヤトによって生き永らえたモエカは、死なないために人を殺し続けている。

佐竹ハヤトを身代わりにしたことは、モエカの中の信賞必罰に適う行為だった。

モエカは、佐竹ハヤト本人に恨みを晴らすことに成功した。

恨みを晴らし、同時に命の危機を脱したモエカは、気づいたはず。

生きてデスゲームを脱出することが、不可能なことに。

なぜ、モエカは、生きてデスゲームを脱出できないのか?

それは、佐竹ハヤトの成し遂げたプロジェクトのせい。

可能性を考えずに成し遂げた佐竹ハヤトが死んでせいせいしたと考えていたモエカは、佐竹ハヤトが死んでも何も変わらないことに気づいた。

参加者は、死亡によりデスゲームを脱出する。

生きたいモエカは、死ぬまで、デスゲームにいることになる。

モエカの未来には、救いがない。

佐竹ハヤトの置き土産のせい。

モエカは、死なせた佐竹ハヤトに対する憎しみを募らせた。

憎しみをぶつける相手は、もうこの世にはいない。

相手が生きていようと死んでいようと、憎しみはわく。

「佐竹くんは、できることをやり遂げた。

誰も成し遂げなかったことを成し遂げたのだから、賞賛された。

完成させる前に、それを完成させた結果をシュミレーションしたら、どれほど良かったか。

完成させることが、どれほど危険か、分かったはず。

完成させてからでは、誰にもどうにもできなかったの。」
とモエカ。

リスクを考慮して作らない選択肢が、佐竹ハヤトにはあったのに、というのがモエカのひっかかり、か。

「モエカが話をしているのは、タケハヤプロジェクトの話だと考えていいのか?

タケハヤプロジェクトは、どんなプロジェクトだったんだ?」

「どんな?どんな?」
とモエカは、俺の質問を笑い飛ばす。

どんな、という聞き方は、気に入らないのか。

「何を目的としたプロジェクトだったんだ?」

「元は、応募資格を学生に限定したコンテストよ。」
とモエカ。

「そのコンテストでは、何を募集していた?」

「何だと思う?」
とモエカ。

質問には、質問を返さず、端的な回答がほしい。

モエカを納得させるために、面倒でも、答えた方が良い。

「完全犯罪の作り方、か?」

佐竹ハヤトに提案された、最後の二つの案は、何かを外部に露見しない仕組みを実現させるためのように思えてならない。

「完全犯罪?
私達のしていたことをそんな風に言うなんて。

金剛くんは、面白いことを言っているつもりなの?」
とモエカは、全く笑っていない顔で、口の端だけを持ち上げている。

タケハヤプロジェクトには、モエカも意見を出していたのだったか。

しくじった。

俺に質問を投げかけたモエカは、答え合わせをせずに、踵を返す。

「無事に階段をおりて、のぼりきってください。

金剛ショウタ、始めてください。」
と機械音声。

一番手は、俺か。

アスレチックの順番がこなかったメグたんではないのか。

メグたんは、アスレチックに続いて、今回も参加しないのか?

俺は、モエカの後を追わず、竹馬を持って、階段の近くへ移動する。

再び竹馬に乗ってみる。

ギリギリ乗れた。

おりる前に階段を一段ずつチェックしたかった。

仕掛けがないか、注意して、階段を一段ずつおりていく。

仕掛けを見つけたところで、うてる手があるかというと。

俺には、避ける以外の手はない。

竹馬に乗って見ている限り、階段に、仕掛けは、何もなかった。

俺は、竹馬に乗って階段をゆっくりおりていく。

何事もなく底についた。

油断は禁物だが。

俺は、竹馬で、階段をのぼろうとして、頭上によぎる影に気づいた。

横向きの一輪車が俺の頭上にある。

誰かが、床下の階段めがけて、一輪車を投げ込んだのか。

当たったら、頭と首を痛めるのは確実。

投げ込まれてくるものに当たらないようにしながら、階段を上りきるゲームなのか?
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