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101.野村レオは、人殺しをすることについての俺の認知を歪ませなかった。白組の人達は、野村レオの死を許せない。殺意を込めて、集まってくる。
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機械音声が聞こえてきた。
「勝負あり。
紅組代表、白組代表、それぞれの死亡を確認。
新人歓迎会は、黒組の勝利です。
負けた白組は、勝者に大きな拍手をして、健闘をたたえます。
鎌を床に置いて、拍手を始めて下さい。」
ベートーベンの第九をバックグラウンドミュージックに、機械音声が話している。
加地さんも、もう亡くなっていたのか。
「なんで!」
「野村さん!」
「どういうこと!」
「うそ!」
「レオが?」
加地さんを取り囲んでいた白組の人達は、一斉にオレと北白川サナを振り返った。
「サナ、あんた、レオを殺したの!」
「レオは、勿体ないくらいにいい人だったのに!」
「恩知らず!」
白組の人達は、加地さんの側を離れて、北白川サナを罵倒しながら、近づいてくる。
手に手に、血のついた鎌を持ったまま。
野村レオの仇をとりたいのだろうか。
白組の人達は、加地さんと野村レオに巻き込まれて、デスゲームに参加することになったのに。
白組の人達が、生きている間に真実を知るとも思えないが。
「自分達も、加地さんを殺しているのに、そこは度外視か。」
加地さんは、殺してもいい対象。
野村レオは、殺すことが許されない対象。
白組の人は、そんな風に識別しているのだろう。
死んでいいか、よくないか。
俺は、責任を負いたくないから、殺す標的を決める仕事はしたくない。
俺が呟いていると、北白川サナも、俺の隣で、大きな独り言を言った。
「私が、いつ、レオのお世話になったのですか。
私は、レオに尻拭いをさせるようなヘマはしない人です。
レオの死を悼む気持ちがあるなら、不出来なまま世の中に出た己を恥じ入るといいです。」
北白川サナは、北白川サナなりに、息の根を止めた野村レオの死を悼んでいるのだろう。
「白組は、拍手をする時間です。」
と機械音声。
ベートーベンの第九は、勝者の健闘をたたえるために流しているのか。
たたえる人は、ゼロ。
むしろ、敵意を感じる。
「許さない!」
「レオをこんな姿にして。」
「可哀想に。」
俺は、白組の人達が、鎌を構えて近づいてくるのを見て悟った。
白組の人達は、白組の人達にとっての正当な理由で、人を一人殺したことによって、人殺しを忌避する気持ちが、著しく減っている。
正当な理由があれば、人を殺すことは、許される、と考え方を変えてしまったのか。
正当な理由というのは、白組の人にとって、正義として掲げられることであれば問題ない。
白組の人は、加地さんを殺すにあたり、人殺しを正当化して、思考を歪ませた。
人を殺すことに理由をつけて、己を正当化した代償は、自己の肥大化と尊大化か。
野村レオが、俺にヒットマンの話をしたのは、俺の認知を歪ませないためだったのだろう。
野村レオの遺体を見た白組の人達は、口々に野村レオの早すぎる死を嘆き、北白川サナをなじり出し、ついには殺害予告をし始めた。
「殺してやる。」
「レオと同じ目にあわせてやる。」
「レオの仇をうつ!」
俺と北白川サナは、殺意という熱気がこもる白組の人達に囲まれている。
デスゲーム運営から送り込まれている北白川サナが、動かない。
俺は、北白川サナに合わせるまでだが、物騒になってきた。
「白組の人に拍手する気がゼロの場合、俺達は、いつまで拍手を待てばいいのだろう?」
北白川サナに聞いてみる。
北白川サナは、俺達を取り囲んでいる白組の人達の殺意の上限を試すようなことを言った。
「加地さんは、この人達を認めていました。
加地さんに頼まれた仕事に関して言うと、よくできていました。
加地さんに頼まれた仕事以外の仕事は、こない人達の集まりです。
加地さんが死んだから、この人達には仕事が来ません。」
と北白川サナ。
加地さんの仕事仲間に対する評価は、甘くなかった。
仕事がない、と言い切っているということは。
「白組の人達に、再就職を勧めているのか?」
「死にたくないなら、死にものぐるいで、再就職するといいです。」
再就職というのは、デスゲームで見せ場を作って、生きていてもいい、とデスゲーム運営に認められることだろう。
白組の人達に、見せ場を作らせるような救済策を用意しているのか?
救済策になるかどうかは、まだ不明だが。
「うぐぎゃあ。」
「痛い、助けて。」
「何をする!」
俺と北白川サナを囲む集団の一部から、悲鳴と非難があがる。
何が起きている?
悲鳴と非難の声は、横に移動していく。
俺は、何が起きているのか、と少し先に注目した。
銀色のくの字型の刃が、前にいる人の背中を、切りつけながら移動していた。
鎌の刃に見えるが。
鎌の刃は、取り外せて、飛ぶものだったか?
「勝負あり。
紅組代表、白組代表、それぞれの死亡を確認。
新人歓迎会は、黒組の勝利です。
負けた白組は、勝者に大きな拍手をして、健闘をたたえます。
鎌を床に置いて、拍手を始めて下さい。」
ベートーベンの第九をバックグラウンドミュージックに、機械音声が話している。
加地さんも、もう亡くなっていたのか。
「なんで!」
「野村さん!」
「どういうこと!」
「うそ!」
「レオが?」
加地さんを取り囲んでいた白組の人達は、一斉にオレと北白川サナを振り返った。
「サナ、あんた、レオを殺したの!」
「レオは、勿体ないくらいにいい人だったのに!」
「恩知らず!」
白組の人達は、加地さんの側を離れて、北白川サナを罵倒しながら、近づいてくる。
手に手に、血のついた鎌を持ったまま。
野村レオの仇をとりたいのだろうか。
白組の人達は、加地さんと野村レオに巻き込まれて、デスゲームに参加することになったのに。
白組の人達が、生きている間に真実を知るとも思えないが。
「自分達も、加地さんを殺しているのに、そこは度外視か。」
加地さんは、殺してもいい対象。
野村レオは、殺すことが許されない対象。
白組の人は、そんな風に識別しているのだろう。
死んでいいか、よくないか。
俺は、責任を負いたくないから、殺す標的を決める仕事はしたくない。
俺が呟いていると、北白川サナも、俺の隣で、大きな独り言を言った。
「私が、いつ、レオのお世話になったのですか。
私は、レオに尻拭いをさせるようなヘマはしない人です。
レオの死を悼む気持ちがあるなら、不出来なまま世の中に出た己を恥じ入るといいです。」
北白川サナは、北白川サナなりに、息の根を止めた野村レオの死を悼んでいるのだろう。
「白組は、拍手をする時間です。」
と機械音声。
ベートーベンの第九は、勝者の健闘をたたえるために流しているのか。
たたえる人は、ゼロ。
むしろ、敵意を感じる。
「許さない!」
「レオをこんな姿にして。」
「可哀想に。」
俺は、白組の人達が、鎌を構えて近づいてくるのを見て悟った。
白組の人達は、白組の人達にとっての正当な理由で、人を一人殺したことによって、人殺しを忌避する気持ちが、著しく減っている。
正当な理由があれば、人を殺すことは、許される、と考え方を変えてしまったのか。
正当な理由というのは、白組の人にとって、正義として掲げられることであれば問題ない。
白組の人は、加地さんを殺すにあたり、人殺しを正当化して、思考を歪ませた。
人を殺すことに理由をつけて、己を正当化した代償は、自己の肥大化と尊大化か。
野村レオが、俺にヒットマンの話をしたのは、俺の認知を歪ませないためだったのだろう。
野村レオの遺体を見た白組の人達は、口々に野村レオの早すぎる死を嘆き、北白川サナをなじり出し、ついには殺害予告をし始めた。
「殺してやる。」
「レオと同じ目にあわせてやる。」
「レオの仇をうつ!」
俺と北白川サナは、殺意という熱気がこもる白組の人達に囲まれている。
デスゲーム運営から送り込まれている北白川サナが、動かない。
俺は、北白川サナに合わせるまでだが、物騒になってきた。
「白組の人に拍手する気がゼロの場合、俺達は、いつまで拍手を待てばいいのだろう?」
北白川サナに聞いてみる。
北白川サナは、俺達を取り囲んでいる白組の人達の殺意の上限を試すようなことを言った。
「加地さんは、この人達を認めていました。
加地さんに頼まれた仕事に関して言うと、よくできていました。
加地さんに頼まれた仕事以外の仕事は、こない人達の集まりです。
加地さんが死んだから、この人達には仕事が来ません。」
と北白川サナ。
加地さんの仕事仲間に対する評価は、甘くなかった。
仕事がない、と言い切っているということは。
「白組の人達に、再就職を勧めているのか?」
「死にたくないなら、死にものぐるいで、再就職するといいです。」
再就職というのは、デスゲームで見せ場を作って、生きていてもいい、とデスゲーム運営に認められることだろう。
白組の人達に、見せ場を作らせるような救済策を用意しているのか?
救済策になるかどうかは、まだ不明だが。
「うぐぎゃあ。」
「痛い、助けて。」
「何をする!」
俺と北白川サナを囲む集団の一部から、悲鳴と非難があがる。
何が起きている?
悲鳴と非難の声は、横に移動していく。
俺は、何が起きているのか、と少し先に注目した。
銀色のくの字型の刃が、前にいる人の背中を、切りつけながら移動していた。
鎌の刃に見えるが。
鎌の刃は、取り外せて、飛ぶものだったか?
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