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99.ハコさんとラキちゃんの身元。野村レオの糠喜び。迫りくるタイムリミット。
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「名前を知りたがる理由は、何だ?」
野村レオは、二人の女刑事の名前をすぐには教えなかった。
性急過ぎたか。
野村レオの中で、二人の女刑事は、危険から遠ざかるために雲隠れしていることになっている。
女刑事の個人情報は明かしたくないというところか。
さっきまでの軽口は、警察関係者では、ある程度、オープンになっていた情報にあたるのだろう。
隠す必要がない情報だから、部外者の俺にも話したのだと思う。
出向先が刑務所みたいな場所になると言っていた、という情報だけでは、たどり着けないだろう。
デスゲームのコメントを入れる仕事を副業にしている警察官は、いないだろう。
副業ではなく、客になら、いるか?
俺は、俺の手の内を、野村レオに明かすことにした。
「二人の女刑事の出向先の条件に当てはまる場所に、俺は心当たりがある。
野村レオは、今も、心当たりがないか?」
俺の言葉を反芻しながら、次は鎌を構えてみろ、と野村レオは言った。
「お前は、今まで、どこで何をしていた?」
野村レオの俺を見る目が、大人しく目立たないことを利用して、長年道を踏み外しても気づかれなかったのか、と聞いている。
誤解だ。
「俺は、慎重に生きてきたつもりで、へたをうっただけだ。
裏のキャリアはない。」
基本的に単独行動で、家から出ない俺は、お天道様の下を歩いているかと言われると、返事に困る。
しょっ引かれるような冒険はしていないと胸は張れるが。
「今、思い当たるところ、か?」
と考えても答えを導き出せない野村レオ。
そうだった。
野村レオは、この建物がデスゲームの舞台だと知らない。
ヒント、思いつかない。
時間もない。
「二人の女刑事の呼び名は、ハコとラキ。違うか?」
野村レオは、今日初めて、驚いた顔をした。
「年上が、如月ハコ。年下が、佐藤ラキ。
知り合いか?」
と小声になる野村レオ。
俺は、パズルのピースが埋まっていくのを感じた。
「二人の出向先は、この建物だ。」
俺は、鎌の刃に角度をつけながら、野村レオにぶつかっていく。
「ハコもラキも、どちらの姿も見ていないが、二人は別の部屋にいるのか?」
と野村レオ。
「ラキちゃんは、まだ元気だ。
ハコさんは、おそらく、この建物内のどこかで、既に亡くなっている。」
俺の話を聞いた野村レオは、一瞬考えて、結論を出した。
「途中経過を省いて、結果は揃えたのか。」
と野村レオ。
「圧力をかけてきた誰かに女刑事を殺させないために用意した、女刑事二人を隠せる場所。
この場所は、全ての条件を揃えていないか?」
「揃っている。
俺は、誘い込まれたのか。
加地ツグミとその関係者を一網打尽にしたがっていると思い込んだために。
最後に、俺を連れてきて、別件の幕引きをする算段をつけていたのか。」
と野村レオ。
「今日の野村レオで、コンプリート完了というところだろう。」
「ハコは死んで、ラキは生きているのか。
ラキが生きているなら、まだ。」
野村レオは、ラキちゃんに希望を見出した。
ハコさんが、ラキちゃんを庇って死んだとかんがえているのだろうか。
俺は、野村レオの希望を打ち砕く。
「今は、生きているというだけだ。
ラキちゃん自身で刑務所みたい、と言っていた、この場所から、ラキちゃんが生きて出ていく可能性は、万に一つもない。
ハコさんと、野村レオという前例に従えば、ラキちゃんは、この建物のどこかの部屋で命を落とす。
野村レオの次に。」
今日、配信しているデスゲームの主役は、加地さんと野村レオ。
俺と野村レオと北白川サナが参加している新人歓迎会が、今日の見どころ。
ラキちゃんが狙われるとしたら、明日以降の配信だ。
今の俺と野村レオの会話も配信されている可能性が高い。
漏らしてはまずいことは、決して口に出さない。
「そうか。
サナが、そろそろ、本気で突っ込んでくる。
サナが突っ込むより、先に突っ込んでこい。」
と野村レオ。
「本番か。」
俺は、野村レオのレクチャーのお蔭で、鎌を人に向けることに、びくびくしなくなった。
「分かった。
俺には、手加減も何も分からない、ダメ出しは早めにしてくれ。
心残りも。」
俺は、神妙に頷く。
野村レオは、二人の女刑事の名前をすぐには教えなかった。
性急過ぎたか。
野村レオの中で、二人の女刑事は、危険から遠ざかるために雲隠れしていることになっている。
女刑事の個人情報は明かしたくないというところか。
さっきまでの軽口は、警察関係者では、ある程度、オープンになっていた情報にあたるのだろう。
隠す必要がない情報だから、部外者の俺にも話したのだと思う。
出向先が刑務所みたいな場所になると言っていた、という情報だけでは、たどり着けないだろう。
デスゲームのコメントを入れる仕事を副業にしている警察官は、いないだろう。
副業ではなく、客になら、いるか?
俺は、俺の手の内を、野村レオに明かすことにした。
「二人の女刑事の出向先の条件に当てはまる場所に、俺は心当たりがある。
野村レオは、今も、心当たりがないか?」
俺の言葉を反芻しながら、次は鎌を構えてみろ、と野村レオは言った。
「お前は、今まで、どこで何をしていた?」
野村レオの俺を見る目が、大人しく目立たないことを利用して、長年道を踏み外しても気づかれなかったのか、と聞いている。
誤解だ。
「俺は、慎重に生きてきたつもりで、へたをうっただけだ。
裏のキャリアはない。」
基本的に単独行動で、家から出ない俺は、お天道様の下を歩いているかと言われると、返事に困る。
しょっ引かれるような冒険はしていないと胸は張れるが。
「今、思い当たるところ、か?」
と考えても答えを導き出せない野村レオ。
そうだった。
野村レオは、この建物がデスゲームの舞台だと知らない。
ヒント、思いつかない。
時間もない。
「二人の女刑事の呼び名は、ハコとラキ。違うか?」
野村レオは、今日初めて、驚いた顔をした。
「年上が、如月ハコ。年下が、佐藤ラキ。
知り合いか?」
と小声になる野村レオ。
俺は、パズルのピースが埋まっていくのを感じた。
「二人の出向先は、この建物だ。」
俺は、鎌の刃に角度をつけながら、野村レオにぶつかっていく。
「ハコもラキも、どちらの姿も見ていないが、二人は別の部屋にいるのか?」
と野村レオ。
「ラキちゃんは、まだ元気だ。
ハコさんは、おそらく、この建物内のどこかで、既に亡くなっている。」
俺の話を聞いた野村レオは、一瞬考えて、結論を出した。
「途中経過を省いて、結果は揃えたのか。」
と野村レオ。
「圧力をかけてきた誰かに女刑事を殺させないために用意した、女刑事二人を隠せる場所。
この場所は、全ての条件を揃えていないか?」
「揃っている。
俺は、誘い込まれたのか。
加地ツグミとその関係者を一網打尽にしたがっていると思い込んだために。
最後に、俺を連れてきて、別件の幕引きをする算段をつけていたのか。」
と野村レオ。
「今日の野村レオで、コンプリート完了というところだろう。」
「ハコは死んで、ラキは生きているのか。
ラキが生きているなら、まだ。」
野村レオは、ラキちゃんに希望を見出した。
ハコさんが、ラキちゃんを庇って死んだとかんがえているのだろうか。
俺は、野村レオの希望を打ち砕く。
「今は、生きているというだけだ。
ラキちゃん自身で刑務所みたい、と言っていた、この場所から、ラキちゃんが生きて出ていく可能性は、万に一つもない。
ハコさんと、野村レオという前例に従えば、ラキちゃんは、この建物のどこかの部屋で命を落とす。
野村レオの次に。」
今日、配信しているデスゲームの主役は、加地さんと野村レオ。
俺と野村レオと北白川サナが参加している新人歓迎会が、今日の見どころ。
ラキちゃんが狙われるとしたら、明日以降の配信だ。
今の俺と野村レオの会話も配信されている可能性が高い。
漏らしてはまずいことは、決して口に出さない。
「そうか。
サナが、そろそろ、本気で突っ込んでくる。
サナが突っ込むより、先に突っ込んでこい。」
と野村レオ。
「本番か。」
俺は、野村レオのレクチャーのお蔭で、鎌を人に向けることに、びくびくしなくなった。
「分かった。
俺には、手加減も何も分からない、ダメ出しは早めにしてくれ。
心残りも。」
俺は、神妙に頷く。
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