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51.新人歓迎会に、拳銃を使わないロシアンルーレット?椅子取りゲームが始まったけど、椅子は?

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俺がいるのは、陸の孤島か?

頭を抱えたい気持ちになっていたら。

尻ポケットのスマホが震えた。

デスゲーム参加者アプリに案内が届いている。

案内という名の招集。

いよいよ。
デスゲームに参加か。

俺が案内を見ながら歩いていった先の部屋は、椅子も机も、何も置かれていなかった。

部屋にいた参加者の顔ぶれは、ドッジボールでは見ていない。

ドッジボールで生き残った参加者には、休憩時間が確保されているんだろう。

俺が指定された部屋に入った後、続いて二人、入ってきた。

人数が揃ったらしい。

部屋の扉が閉まり、自動でロックがかかる。

「新人歓迎会の目玉企画。

基本中の基本、ロシアンルーレットを開催します。」
と機械音声。

ロシアンルーレット。

基本というと、一発だけ実弾が入っているリボルバー式の拳銃を、円卓の出席者が、順番に、自分のこめかみに押しあてて、引き金をひくのか?

俺は、拳銃を握ったことどころか、実物を見たことさえない。

他の参加者はどうなんだろう?

「説明を開始します。」
と機械音声。

「参加者全員で、椅子取りゲームを行います。

椅子の数は、参加者の数より、必ず一脚少なくなります。

音楽と共にスキップで、部屋を移動してください。

では、開始。」

開始と言われたけれど。

椅子がない部屋で、椅子取りゲーム?

全員が戸惑っている。

「椅子、ないじゃん。」
と最後に部屋に入った男。

「ロシアンルーレットが椅子取りゲームに変わるのは、平和でいいけれど、椅子を入れ忘れていない?」
最後から二番目に入った女が、部屋を見渡しながら、声をあげた。

男は、大きな独り言。

女は、運営に話しかけているのか?

男の独り言にも、女の問いかけにも、機械音声は、うんともすんとも言わないまま、音楽が流れ出した。

ベートーヴェンの第九、オーケストラバージョン。

俺を含め、部屋の中にいる面々は、椅子取りゲームをするのに、一脚も椅子がないという状況に、戸惑っていた。

俺は、音楽が始まったので、適当にスキップすることにした。

運営の指示に逆らったり、意見を出すのは、運営が機嫌を損ねる。

新入社員が、入社式の日に、あそこがおかしい、改めた方がいい、といきなり執行役員に話しかけるようなことをするようなもの。

何もしていないうちから、発言で注目を集めるのは、危険だ。

失敗したとき、注目されていた分以上にマイナスポイントが膨れ上がる。

オーケストラの音楽を聞いていると、音楽に合わせないといけない気がして、スキップのリズムが崩れてしまう。

スキップって、大人になるとする機会がない。

スキップのリズムを崩さないように、俺は真面目に取り組んでいた。

歌入りかと思ったら、声が遠のいていくので、歌が聞こえてくる方に顔を向けると。

ドイツ語で口ずさんでいる人が、部屋の中にいた。

音楽が止まる。

さて、椅子はどこだ?

椅子取りゲームは、どうなっている?

俺を含めて全員が、壁や床から、出てこないかと、目線を下げていた。

ヒュン。

音に気づいて、目線を上げると。

円筒形の塊が降ってくる。

重量があるようで、落下スピードが早い。

ドスン、ドスン、ドスン、ドスン。

ボガッ。

「うっ。ぐっ。」

ドスン、ドスン。

落下物が一つ、落下地点にいた人の頭に直撃した。

落下物が直撃した人は、頭と首を押さえて痛がっている。

「そっちか!」
一番近くに落ちた落下物を確認したときに、俺は思わず声を出した。

落下物は、風呂用のプラスチック製の椅子。

中の空洞部分に、土のうが詰め込まれている。

椅子取りゲーム、というから、座りにいくんだとばかり思っていた。

落下してくる、椅子をキャッチする方だったのか。

プラスチック製の風呂椅子だけなら、キャッチもできただろうけど。

土のうを詰めて落とされたら、無理だ。

腕が痺れて、使い物にならなくなる。

キャッチした猛者が一人いた。

その人は、キャッチした椅子の上に座って、腕の調子を確認している。

何もない部屋の中を、スキップで動き回らせたのが、ロシアンルーレットか?

レボルバーを回転させる代わりに、俺達を回転させたのか。

俺は、近くにあった風呂椅子を確保して座る。

土のうが詰まっている風呂椅子は、座る分には安定感がある。

風呂椅子なら、血だらけになっても、洗い流せる。

使わないときの収納も、場所をとらない。

壊れても、補充が簡単。

風呂椅子は、デスゲームをするには、使い勝手がいい椅子だ。

俺以外にも、椅子取りゲームの意味を理解した人は、近くの風呂椅子を確保して座っている。

やることもないので、風呂椅子の争奪戦が始まっているのを、他人事のように眺めることにした。

すると。

スススと、ぽちゃ女が一人、俺に近づいてくる。

俺を、タゲろうとしているのか。
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