フィリス・ガランの近衛生活

第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が！

1298.『怨霊。ボクが命じたことに側近と部下が従った場合の責任は、ボクのものなの。』

ボクは、まず、怨霊と傘妖怪に言い聞かせたの。

「怨霊。傘妖怪。

今からボクが命じることの責任を負うのは、ボクなの。

ボクは、総司令なの。

ボクについてきたのは、ボクの側近と部下なの。

ボクが直接手をくださなくても、ボクの側近と部下が、ボクの命令に従ってしたことは、ボクがしたことなの。

ボクは、ボクの命令に従って、論功をあげた部下に報奨を与えることを厭わないの。

怨霊と傘妖怪は、騎士学校の学生と罪深き者をボクがどうするか、最後まで、見ておくの。

怨霊と傘妖怪は、見ないより見た方がいいの。

見えないところを想像で誤魔化したら、悪い方へ想像が膨らんでしまうの。

今、怨霊と傘妖怪には、ちょうど、現実を見る機会があるの。

ある種の現実の終わりを、自身で見ておくといいの。」

「うん。」
と怨霊。

「うん、うん。」
と傘妖怪。

怨霊に元気がないから、傘妖怪にも元気がないの。

怨霊に元気がないのは。

ボクが、しようとしていることを、怨霊が予想したからなの。

怨霊は、怨霊が大事に思って見守っていた学生にとって、優しくないことが起きると考えているの。

そして。

怨霊の予測は、外れていないの。

ボクは、罪深き者に呼びかけたの。

「シノ教官。
キミは、騎士学校の学生の人生を潰して、何がしたいのかしら？」

「シノ教官を悪く言うな。」

「シノ教官は、優しいんだ。」

「シノ教官を守れ。」

学生は、シノ教官、シノ教官、と騒ぐの。

「私がいつ、学生の人生を潰した？」
とシノ教官。

「シノ教官は、私に親身になってくれた！」

「シノ教官を悪く言うやつは、信じるな！」

学生は、シノ教官の周りに自ら集まりにいったの。

「シノ教官。
キミは、学生を肉の壁にして、自らは安全な場所から高みの見物を決め込みたいのかしら？」

「肉の壁とは、シノ教官と私達の両方に失礼だわ！」

「シノ教官に謝れ！」

学生が、シノ教官を囲んで騒ぐの。

学生は気づいていないの。

学生に周りを囲まれているシノ教官がどんな目をしているか。

シノ教官の口元は、慕われて嬉しいというかのように緩んでいるの。

でも。

シノ教官の目は。

標的から、一瞬もずれていないの。

最初から、シノ教官の目は、標的に狙いを定めているの。

標的が、姿を隠したりしても、すぐに探せるように。

シノ教官は、標的の特徴を目に焼き付けようとしているの。

どこにいても、標的を見失わないようにしようとする目なの。

シノ教官の目は、ずっとボクをとらえているの。

騎士学校の学生と教職員が揃っているこの空間に、ボク達近衛別働隊が入ったときから。

ボクが視線を感じるくらいに、シノ教官は、じっとボクを見ているの。