フィリス・ガランの近衛生活

第6章 コーハ王家の第4王子と高位貴族子弟の近衛は、同じ近衛である地味平凡の子爵子息の魅了で逆ハーレムを作っている、との情報が！

951.『記憶を無くしますか？未練を無くしますか？気分がいいから、記憶の方は、努力義務で許しますよ？』

ボクが、パイプの煙を吹きかけた男は、2人共、顔面に花が咲いた。

黒い線が一筆書きで、顔に花の絵を描く。顔の次は、耳、首、肩と、だんだん黒い線はおりていく。

花の輪郭が描きあがると、内側に色が広がっていく。絵の具を絵筆で塗るかのように花の絵が色づいていく。

花の絵は、煙がかかった顔から全身に向かって、広がっていく。

そして、全身に色がつくと服にも同じ色が染み出す。

パイプの煙がかかった男2人は、頭の先から、足の先まで、服の中も、服も含めて、全身に花の絵が広がった。

「ザッツ、エンターテインメント。ザッツ、メルヘンチック・ハードボイルド！」
とツーニール。

「メルヘンチック？花柄だからか？」
と熊男。

ボクは、全身花柄になった男の腕から、コワニと一緒に抜け出したの。

「ボク、たった今、ハードボイルドしてきたの。」
全身花柄の2人の男から、そっとそっと、離れて、ボクは、ツーニールの側に戻ったの。

「楽しめましたか。」
とツーニール。

「スリル満点だったの。ツーニール、ありがとうなの。」

「あの花柄男は、どうなるんだ？」
と熊男。

「経過観察ですかね？」
とツーニール。

「おい！」
と熊男。

「人体への安全性は、今日時点で、未確認なんです。サンプルも手に入ったことです。丁度いいですね。」
とツーニール。

「あ？まじか？まじで言っているのか？」
熊男が怯えているの。

「熊男。
記憶を無くすのと、
未練を無くすの、
どっちがいいですか？
好きな方を選んでいいですよ。
私は今、とても寛大な気分です。
記憶を無くすのは、努力義務で許しましょう。」
とツーニール。

「それは、未練を選ぶと？」
と熊男。

「来るかどうか分からない来世が早まります。」
とツーニール。

「記憶を消すわ。そういや、貴族って、やばい生き物だったわ。すっかり忘れていた。忘れたままで、生きていたかったな。」
熊男は、ぼそぼそと呟いている。