フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

404.有名人の男に悪印象を持っている人間が、男のお囲いさん（男）には、悪印象を持っていない。どうして？

モルトル・ヨーリキの弟が力なくうなだれている。

「モルトル・ヨーリキの弟よ。兄の側にいる男について、知っていることがあれば話しなさい。」

「ああ、1人いたな。モルトル・ヨーリキのお気に入りか。」

最初から、モルトル・ヨーリキの弟は、兄をフルネームで呼ぶ。

兄と呼びたくないか、家族と認めたくないのか。

「モルトル・ヨーリキは有名人だけど、男も有名人？」

「他所では知らない。モルトル・ヨーリキを取り合う者らの垂涎の的であり、殺したい恋敵。」

「見た目は？」

「若い男だった。」

時間軸としては、国側の男の方が先にコウノワタルに接触したか、コウノワタルが薬を飲むタイミングで、飲まさなかったかで、真実の姿を見たのね。

「話したりは？」

「お前もモルトル・ヨーリキがよいのか、と言ったら、どちらかが死ぬまでは共にいて、モルトル・ヨーリキが死んだら後を追うと答えていた。」

異世界人としての受け答えを知っていたのか、その言葉を選らんだだけかは、分からないね。

「あの男だけは、モルトル・ヨーリキを側に呼び寄せるのではなく、寄り添おうとしていた。」

コウノワタルには、呼び寄せる地位がないから。

「他には？」

「兄弟で争うのを見るのは、辛いと泣いていた。どうでも良かったな。」

兄弟の確執が既にあるもの。
勝手に辛くなって泣き出されても、ね。

「あの男だけは、兄弟を比較しなかった。他人の期待も希望も捨てて、自分達で幸せになれたらいいのに。と話していた。」

モルトル・ヨーリキの弟は、コウノワタルに悪印象を持っていない。

モルトル・ヨーリキの周りをうろついていた国側の男も、コウノワタルについて悪印象は持っていなかった。

モルトル・ヨーリキに対する印象と正反対よね？

「モルトル・ヨーリキの弟は、どこで男と会ったの？」

「男は、モルトル・ヨーリキがいないときは自由に出歩いていた。モルトル・ヨーリキは、男を仕事に連れて行かなかったからな。」

「空間転移のリンクを使って。」

「そうだ。」

コウノワタルには、帰ったら、たくさん聞こう。

嫋やかに振る舞っても、強かなのは、年の功かしら。

モルトル・ヨーリキには一切感づかせないまま、別れたの。