フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

244.末の弟フィリスの姫君扱いがガラン家で認知されたのは、可愛い妹が暗躍したから？父と息子、愛を乞うてくる相手への対応が違うのは、理由が？

「我が父は、ガラン家当主。私やリドリグ、マーゴットも同じ気質だが、支配者だ。
フィリスは、マーゴット曰く、姫君だ。支配される側だから、我が父とは、行動原理が異なる。」
とデヒル。
「おお、はい。」

「我が父もフィリスも、貴男の愛をください、と乞い願ってくる中で、与える相手を選ぶ側なのは同じだが、愛を与えない相手の扱いは違う。

生まれついての支配者である我が父は、いらない者は自身で排除する。

フィリスは、支配される側だ。愛を与えない判断は、フィリス自身がしても、表に出すことはしない。フィリスの愛を認めるか否か、愛を与えぬ相手を排除するか、しないかの決めるのは、庇護者だからな。

我が父は、国王陛下を選ばなかった。選ばなかったから、側におかない。というわけだ。」
とデヒル。
「ダルク様とフィリス様の行動原理と、その違いが、分かりました。」

「次にフィリスだが。」
とデヒル。

「庇護下にある者。姫君は王の庇護下にいてこそ、真価を発揮する。姫君には求婚者が跪き、騎士が忠誠を捧げる。姫君は、数々の愛で満たされてこそ、美しく輝く。」
とデヒル。
「ええと、わかりやすく？」

「男が愛を囁くのも、男が身を削るのも、男が万が一を期待するのも、姫君が姫君の地位にあればこそ。」
とデヒル。
「はい。」

「我が父は、一切関わらないが、フィリスが愛を囁く相手を気にしないだけなのは、姫君に愛を囁く相手がいることが、姫君のいる風景には当たり前だからだ。
王は、気に入らなければ、自身で排除するが、自身で決定権を持たない姫君は、行動で排除しない代わりに、心で気にしないという行動をとる。」
とデヒル。
「姫君ならではの理由ですね。心で拒絶するから、そこにいるのは許す、ということですか。」

「そういうことだ。」

「現在、囚われの姫君は、助けを待っておいでですね。」

「ああ。最後に助け出され、助け出した王子に抱かれるのが、姫君だからな。」
とデヒル。
「房中術が役に立ちましたね。」

「フィリスは、どんなことにも、ガラン家当主の子どもとして振る舞うために、貪欲に取り組んだ。」
とデヒル。
「身を削りすぎる意気込みは、見ていて、心が痛いくらいでしたよ。」

「無理がたたって、結果が斜め上にいっていたが、房中術は今回、身を助けたな。」
とデヒル。
「ようございました。フィリス様の御身に望まない傷が1つでも、見えたなら。」
部屋の中が静まり返る。
「我が父も、我が妹も、私も、今ごろ、笑ってはいなかっただろうな。」
とデヒル。
「ええ。」

「マーゴット曰く、姫君が意気込んで努力した結果は、2つらしい。
姫君だけが満足して、周囲が大迷惑を被るか、ヘボすぎて役に立たないが、和みを生むか。後者の方が、フィリスには生きやすかろうと、誘導していたようだな。」
とデヒル。
「フィリス様が巻き起こす数々の不思議体験の立役者が、マーゴット様とは。」