フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

208.欲しいなら、ちゃんと欲しがって。欲しいと言えたら、ね？

「今日、今から、1回だけ。」
ボクは頷く。
「次の機会は、永遠にない。ボクが、フィリップ殿下の隣にいる未来はない。ボクの心もあげない。」
ボクは、真っ直ぐに思いを伝える。
「だけど。今だけ。思い出をあげるよ。」
伝わっているかな？伝わってほしい。
「思い出、欲しい？」
フィリップ殿下の感情が揺れている。予想していなかったんだね。
まあ、ボク、拒否しかしてこなかったから。

正直に言うと、フィリップ殿下としたい気持ちはないの。

でも、ボクが拒否しているだけじゃ、フィリップ殿下はずっと足踏みしたまんま。

フィリップ殿下が動いたら、楽になる人はいっぱいいる。

フィリップ殿下本人も含めて。

フィリップ殿下を動かせるのは、今のところ、フィリップ殿下本人とボクだけ。

フィリップ殿下が動かないなら、ボクが動けばいい。

ややあって、気落ちした様子のフィリップ殿下が口を開いた。
「心も未来もくれないのか。」

「期待させる気もないから、はっきり言うね。どちらも未来永劫あげない。」

「そうか。」

「欲しいなら、ちゃんと欲しがって。欲しいと言わない人にはあげない。」