フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

133.結婚相手を探し続けていくうちに、相手に求める条件が上がっていく人もいれば、下がっていく人もいるよね？ギリギリ下限突破しないくらいの。

私、男に恵まれませんでした、とラウル姉は、とても悲しそうな顔を作った。

「花束に毒を仕込む男や、出先でゴロツキをけしかけてくる男や、悪評をばら撒く男。そんな男と一緒に嘲笑してくる男。背後から狙う男。ダンスしながら嫌がらせしてくる男。ことごとく外れを引き当ててきました。」

「強くならねば、今頃、何回死んでいたことか。侯爵家の正規の跡取りなのに。」

そういうわけで、とラウル姉は言い切った。
「私、男という生き物に期待していません。」

「愛とか思いやりは、結婚してから相手と育てる方向で考えます。条件が最優先で、婿を連れてきてくださいませ。」
とラウル姉。

「興味深い交換条件だ。それを他の家ではなく、ガランに頼むか？」
とデヒル。

「私は、生まれながらの貴族で、多少殺伐とした世間の荒波に揉まれましたが、家族を愛しております。」
とラウル姉。

「私は、我が弟ラウルを安く買い叩かせる気は微塵もありません。姉としても次期当主としても。ラウルは逸材です。本人が望み得る最高の条件を提示させてみせるのが、私の腕の見せ所なのです。」
ラウル姉は満面の笑みを浮かべている。

「弟ぎみと仲良くするお許しを得ましたこと、感謝申し上げます。ラウルは、今の暮らしをとても楽しんでおりますわ。弟ぎみは王都での生活を楽しんでいらっしゃるでしょうか？」
ラウル姉は、デヒルの返事を待つ気はないらしい。

「私の家族は、父が新婚家庭まで連れてきた侍従と深い仲であるという噂もございますけれど、互いに思いやりを持っています。ラウルの実の姉である私の伴侶は、ガラン家から紹介していただく男。わが家は、弟ぎみにとって、今後もよい遊び場をご提供しますわ。」


「弟ぎみの側にラウルはいかがですか？」