111 / 1,394
第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?
112.子育てって、自分育てって言う人もいるらしいね。コーハ王家の子育ては、両方同時にうまく育ったのかな?
しおりを挟む
「先代国王陛下が、兄を廃し、弟のわたしを王位に就ける考えに至ったのは、先例を聞いて、王族全員の命を危ぶんだからだ。」
「うちと似たような国が?」
「『国王は政治に関与しない、王族は国王を助けるが、政治に関与しない。ただし、王族の籍をぬけて、臣籍を賜った者はその者に限り、例外としてもよい。』という王族典範を声明として発表した国がある。」
「その国の王族は何をしたの?」
と姉。
「王族主導で、何度か、国が危うくなった。」
「政治の舞台に立ったらダメな人を輩出する家系なの?」
と姉。
「人が良すぎるせいで、大規模な詐欺とか、平気で引っかかるらしくてね。業を煮やした高位貴族が、『今後、我が国の国王陛下と王族は、義務も責任も、政治については考えずに生きていただくことにした』と声明を出した。
『今後政治の話は、全て、その貴族家に話を持ってくるようにすること、国王や王族に持ってきた話はないものととする。今後、国王と王族が政治絡みの契約や約束をしても、無効である。』
発表された当時、あまりの斬新な考え方に脱帽したと言った首脳陣が世界中にいたそうだよ。画期的だったから。」
「どのへんが、かわかりません。」
とラウル。
「国に損害を与える王家を殺して、自分達が玉座に就くことも出来たはずなのに、人がよくて政治に向いていないせいだから、と政治的権力から切り離して、生きていける道を用意したことだね。」
「簒奪しなかったのね。」
と姉。
「筆頭公爵家として、その貴族を中心に王族に関与させず国の舵取りを始めたところ、みるみるうちに強国になった。今もその国の勢いは衰えていない。」
「その話がコーハ王国とどう関係してくるんですか?」
とラウル。
「その筆頭公爵家が、コーハ王国でいうところのガラン家だったんだ。」
ラウルも姉も息を呑んだ。
「どちらも旧家だ。ガラン家はコーハの国興しに協力した。あちらは、王家の後ろ盾になった。」
「あちらの王家は、建国からずっと、後ろ盾の家が国の実質的な柱として、存在感を示してきた。問題が起きたとき、それ以上悪化しないように国王の首根っこを押さえるのが、当主の仕事として書かれている。」
「公文書に?」
「そうだよ。両者は、それくらい親密な関係を築き上げてきた。」
「一方で、ガラン家は建国にあたり名前を貸したが、王家にも国政にも関与していない。」
違いがわかるね?と父は言った。
「あちらの王家は、生かされた。
しかし、コーハ王家は生かされるだろうか?
コーハ王家は、王太子自身がすすんでガラン家の嫡子を貶めてきた。極めつけは、嫡子を拉致してきた上に、ない権力をかさにきて、王太子が無理な要求をした。」
「滅びへ一直線。」
と姉。
「先代国王陛下は、いろいろ調べてみて、改めて、旧家というものが、何かを理解したそうだ。」
「『今日、ダルクは私を見て話をしたな。今までは、私の方に顔が向いているだけで、私を視界に入れていなかった。』と先代国王陛下はわたしに確認してきた。」
「わたしは、ダルクが先代国王陛下にも兄にも関心がないことは感じ取っていたから、そうですね、と答えたよ。」
「『誓約書を理解していない国王と王家は、誓約の隣人の条件を満たさない。だから、ダルクの態度に責める点は1つもなかったんだ。』と先代国王陛下は当時を思い返して、噛み締めていた。
私は、最初からこちらの態度が悪かったせいだと思ったけれどね。」
「『お前はダルクに認められている。繋ぎで良いから、1年でも玉座に座れ。今すぐ王妃となる令嬢の選定を始めて、決まり次第婚儀だ。お前の次は、お前の子どもが玉座に座る。』」
「兄は?」
「『兄はな、ガランの件を乗り切れたら良かったんだが。今日、兄は、相手にされていたか?』
『いいえ。』
『兄に王位を渡したら、王家はおしまいだ。誓約の隣人ではない国王が王位に就いたら、誓約を破ることになる。』
『今からでも、兄をどうにか再教育できませんか?兄を廃嫡したら、影響が大き過ぎます。』
『お前が言うなら、してみるが、期待はするな。私は親として国王として、第一歩から間違い、その間違いを訂正せずにきたせいで、兄は、王太子でなくなる。』
先代国王陛下は苦しそうだったね。
『わたしは、言葉がどうであれ、兄がガラン家より側近をとる姿勢をみせたときに、兄自身に再教育を施さねばならなかったのだ。あそこで、許したから、ダルクには何をしても許されると学習してしまった。最初から間違えていたのだ。』」
「うちと似たような国が?」
「『国王は政治に関与しない、王族は国王を助けるが、政治に関与しない。ただし、王族の籍をぬけて、臣籍を賜った者はその者に限り、例外としてもよい。』という王族典範を声明として発表した国がある。」
「その国の王族は何をしたの?」
と姉。
「王族主導で、何度か、国が危うくなった。」
「政治の舞台に立ったらダメな人を輩出する家系なの?」
と姉。
「人が良すぎるせいで、大規模な詐欺とか、平気で引っかかるらしくてね。業を煮やした高位貴族が、『今後、我が国の国王陛下と王族は、義務も責任も、政治については考えずに生きていただくことにした』と声明を出した。
『今後政治の話は、全て、その貴族家に話を持ってくるようにすること、国王や王族に持ってきた話はないものととする。今後、国王と王族が政治絡みの契約や約束をしても、無効である。』
発表された当時、あまりの斬新な考え方に脱帽したと言った首脳陣が世界中にいたそうだよ。画期的だったから。」
「どのへんが、かわかりません。」
とラウル。
「国に損害を与える王家を殺して、自分達が玉座に就くことも出来たはずなのに、人がよくて政治に向いていないせいだから、と政治的権力から切り離して、生きていける道を用意したことだね。」
「簒奪しなかったのね。」
と姉。
「筆頭公爵家として、その貴族を中心に王族に関与させず国の舵取りを始めたところ、みるみるうちに強国になった。今もその国の勢いは衰えていない。」
「その話がコーハ王国とどう関係してくるんですか?」
とラウル。
「その筆頭公爵家が、コーハ王国でいうところのガラン家だったんだ。」
ラウルも姉も息を呑んだ。
「どちらも旧家だ。ガラン家はコーハの国興しに協力した。あちらは、王家の後ろ盾になった。」
「あちらの王家は、建国からずっと、後ろ盾の家が国の実質的な柱として、存在感を示してきた。問題が起きたとき、それ以上悪化しないように国王の首根っこを押さえるのが、当主の仕事として書かれている。」
「公文書に?」
「そうだよ。両者は、それくらい親密な関係を築き上げてきた。」
「一方で、ガラン家は建国にあたり名前を貸したが、王家にも国政にも関与していない。」
違いがわかるね?と父は言った。
「あちらの王家は、生かされた。
しかし、コーハ王家は生かされるだろうか?
コーハ王家は、王太子自身がすすんでガラン家の嫡子を貶めてきた。極めつけは、嫡子を拉致してきた上に、ない権力をかさにきて、王太子が無理な要求をした。」
「滅びへ一直線。」
と姉。
「先代国王陛下は、いろいろ調べてみて、改めて、旧家というものが、何かを理解したそうだ。」
「『今日、ダルクは私を見て話をしたな。今までは、私の方に顔が向いているだけで、私を視界に入れていなかった。』と先代国王陛下はわたしに確認してきた。」
「わたしは、ダルクが先代国王陛下にも兄にも関心がないことは感じ取っていたから、そうですね、と答えたよ。」
「『誓約書を理解していない国王と王家は、誓約の隣人の条件を満たさない。だから、ダルクの態度に責める点は1つもなかったんだ。』と先代国王陛下は当時を思い返して、噛み締めていた。
私は、最初からこちらの態度が悪かったせいだと思ったけれどね。」
「『お前はダルクに認められている。繋ぎで良いから、1年でも玉座に座れ。今すぐ王妃となる令嬢の選定を始めて、決まり次第婚儀だ。お前の次は、お前の子どもが玉座に座る。』」
「兄は?」
「『兄はな、ガランの件を乗り切れたら良かったんだが。今日、兄は、相手にされていたか?』
『いいえ。』
『兄に王位を渡したら、王家はおしまいだ。誓約の隣人ではない国王が王位に就いたら、誓約を破ることになる。』
『今からでも、兄をどうにか再教育できませんか?兄を廃嫡したら、影響が大き過ぎます。』
『お前が言うなら、してみるが、期待はするな。私は親として国王として、第一歩から間違い、その間違いを訂正せずにきたせいで、兄は、王太子でなくなる。』
先代国王陛下は苦しそうだったね。
『わたしは、言葉がどうであれ、兄がガラン家より側近をとる姿勢をみせたときに、兄自身に再教育を施さねばならなかったのだ。あそこで、許したから、ダルクには何をしても許されると学習してしまった。最初から間違えていたのだ。』」
0
お気に入りに追加
333
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
あなたを追いかけて【完結】
華周夏
BL
小さい頃カルガモの群れを見て、ずっと、一緒に居ようと誓ったアキと祥介。アキと祥ちゃんはずっと一緒。
いつしか秋彦、祥介と呼ぶようになっても。
けれど、秋彦はいつも教室の羊だった。祥介には言えない。
言いたくない。秋彦のプライド。
そんなある日、同じ図書委員の下級生、谷崎と秋彦が出会う……。
婚約「解消」ではなく「破棄」ですか? いいでしょう、お受けしますよ?
ピコっぴ
恋愛
7歳の時から婚姻契約にある我が婚約者は、どんな努力をしても私に全く関心を見せなかった。
13歳の時、寄り添った夫婦になる事を諦めた。夜会のエスコートすらしてくれなくなったから。
16歳の現在、シャンパンゴールドの人形のような可愛らしい令嬢を伴って夜会に現れ、婚約破棄すると宣う婚約者。
そちらが歩み寄ろうともせず、無視を決め込んだ挙句に、王命での婚姻契約を一方的に「破棄」ですか?
ただ素直に「解消」すればいいものを⋯⋯
婚約者との関係を諦めていた私はともかく、まわりが怒り心頭、許してはくれないようです。
恋愛らしい恋愛小説が上手く書けず、試行錯誤中なのですが、一話あたり短めにしてあるので、サクッと読めるはず? デス🙇
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる