フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

42.カッコよくて身なりの良い男は、近寄って大丈夫な男？

コーハ王国の平民街にある役所。

職員同士、ランチタイムの会話。
「今日はまだ来てないわよね？」
「いつも朝イチで役所来るもんね。」
「あの独特の価値観、今まで生きてこれたのが不思議。」
「そう？」
「集団生活していたら、修正されそうなものだけど。」
「一方的に話すか、聞くかで、実は会話になっていないのよね。」
「そのコミュニケーション能力も謎ね。元は大店の娘だったというなら、商売繁盛させたくなかったのかしらねえ。」
マーツはいなくても話題を振りまいている。

夕方。
「ケンカで人が死んだって。」
「死ぬ迄ケンカ？遺恨？」
「男が手を振り払ったら、女が避けそこねて柱に激突したって聞いた。」
「どんな巨漢なんだよ。」
「いや、女がヨレヨレだったらしい。」
「なんか、面倒な話だなー。」
「無関係でありたい。」

監視担当が役所に帰ってきた。

「監視対象者マーツについての報告。関係部署、集合。」
号令がかかり、会議室へ。

「マーツは平民街の服屋の前で、通りかかった3人組に声をかけるが、相手にされず、3人組は店の中へ。」

「3人組が店から出て来たところ、再び話しかけにいき、しばらくついて回る。」

「3人組が1人と2人に分かれるときに、1人の方に近づいていく。ふりはらわれた腕が顔面に直撃し、柱に激突。」

「口論になった内容は、
『見込みがありそうね、私の世話をするといいわ。請求はお父さんに回すのよ。とりあえず、私は新しい服と靴がいる。今からさっきの店に戻るわよ。』とマーツが一方的に話しました。

1人になった男が無視して進んだら、
『来た道を忘れたの？戻るのよ。道なら教えるから来なさい。』と言って男の腕を掴み、男が振り払ったら、その腕が顔面に直撃し、勢いを殺さず、柱にぶつかって、倒れました。」

「怪談？」
思わず呟いたのは、初日にマーツを担当した男性職員。

監視担当の報告は続く。

「男が人を呼んで、警邏担当の騎士が双方に事情を聞いていました。
男は、初対面と言っており、マーツは何度も会っている、と。
何度か質問の角度を変えたところ、マーツが何度か男を見ていた、と。」

「見るだけじゃ、会うことにならないよね？」

「マーツは『私は見ていた。彼も私を見た。何度も。』と。」

「男は？」

「『凄く見られているが、知らない人だったから、その内いなくなるだろうと放っておくことにした』と。」

「続くんだよな？」

「男が言うには、前は仕事休みの日にたまたま平民街にいただけ、今日も休みで、たまたま服屋に入った、と。」

「え？ひょっとして、『見つけた』が1日目とカウントすると、『声かけた』今日が出会いの2日目？」

「その通り。」

「まさか『目が合ったら、知り合い』というルールがあったりする？」

「目が合ったら、運命の人だった、とか言い出したら、人生に何人いるんだ、となるな。」

「それで、続きは？」

「男がうちの近衛でした。」

「貴族じゃん。」

「はい。無礼討ちにより、監視対象者マーツの死亡。以上で報告を終了します。」