255 / 257
第255話「さあっ! ルクレツィア様! ロイク・アルシェ伯爵! 前へおいでください! ご婚約のお言葉をお願い致します!」
しおりを挟む
ルクレツィア様と俺の婚約、結婚確定の公式発表があった1週間後……
遂に遂に!
創世神大聖堂において、俺と6人の女子、ルクレツィア様、ジョルジエット様、アメリー様、シルヴェーヌさん、シャルロットさん、トリッシュさんの婚約、結婚確定のお披露目の式典が行われる事となった。
大聖堂はキャパが限られている為、花嫁となる女子の家族に、王族、王国貴族、一部の騎士等、関係者のみが入場。
押しかけるであろう王国民へは、音声のみをまず送り、式典終了後に、
俺以下7人が、大聖堂を出て姿を見せる事となっている。
ここで大きな問題がある。
本日来る王国民の大多数は、ルクレツィア様と俺の婚約の発表だと思っている。
ジョルジエット様以下5人の女子の婚約は、全くのサプライズ。
驚天動地の出来事なのである。
サプライズの段取りは先日打合せした通り。
まずルクレツィア様と俺の婚約発表。
ひと通り、教皇様からの話を承った後、ジョルジエット様達が入場。
おっかけで、婚約発表する事となる。
時間は少しさかのぼる。
……段取りを組むにあたり、こんなやりとりがあった。
ルクレツィア様は、
「世間より、俺があしざまに言われないよう、しっかりと話をしたい」
とご希望された。
いじらしいと思う。
ルクレツィア様の気持ちを無視は出来ない。
でも、俺は古いタイプの人間である。
女子は男子がまもるべきという思いがある。
自分の嫁なら尚更である。
俺は自分が説明し、矢面に立つと、ルクレツィア様を説得した。
でも、ルクレツィア様はひかない。
きっぱりと言い切る。
「私が最後にロイク様の婚約者となったのです。経緯を説明するのは当り前ですわ。これからの人生、ロイク様に頼りきりではいけないのです」
おお!
ルクレツィア様って、おとなしそうな見かけによらず、とても芯が強い女子なんだ。
でも困った!
全て丸投げにするなど出来ない!
ぱぱぱぱぱぱ!と考えた俺は、ひとつの結論へ至った。
「ルクレツィア様」
「は、はい」
「では、ご一緒に説明をしませんか」
「え? 一緒に?」
「はい! いろいろと、ご相談しながら、俺とルクレツィア様、初めての共同作業という事で!」
「ご相談しながら、ロイク様と私の、初めての共同作業ですか?」
今いち意味が分からないのだろう。
ルクレツィア様は、ぽかんとした。
夫婦初めての共同作業というくだりがよくある。
結婚式におけるウエディングケーキ入刀の場合が多い。
今回は、俺とルクレツィア様で都合6人の女子が花嫁となる経緯を説明するのだ。
王国の国益とか、思惑とか、政略結婚とか、
俺と結婚するメリットとか、……生臭い話はカットする。
ジョルジエット様、アメリー様が俺に救われた事から生じた恋心。
ふたりと話したルクレツィア様が、自分も素敵な相手と出会い、結ばれ、
故郷で幸せになりたいという想い。
秘書達が俺を支えるうちに、芽生えた愛など……をメインに話す。
相手に理解して貰うべく、少し話を変更したり、盛り込みもしながら。
それが俺とルクレツィア様、初めての共同作業。
結婚式におけるウエディングケーキ入刀とか、俺の前世のそんな話をし、
理由をあげて、説得したら……
ルクレツィア様は、俺との結婚式における、
ウエディングケーキ入刀の光景をかぶらせて想像したみたい。
「うふふふふ♡ 誰にでも納得して貰う為、説得する! ロイク様と私の、初めての共同作業って! 嬉しいっ! でもでも! 一緒にウエディングケーキへ入刀もしましょうね♡」
そう言って、納得し了解してくれたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
という事で、定められた時間が来て、教皇様の話が始まった。
音声は、魔導拡声器で、室外でも聞こえている。
多分、大聖堂へ入れない多くの王国民が聞き入っている事だろう。
俺の魔力感知には、熱い祝福の波動が伝わって来る。
「……オーガの大群5千体が発生した、未曽有の大災厄、大破壊も無事収束し、平和が戻ったファルコ王国へ、またもめでたい話が入って参りました!」
教皇様は出席者を見まわし、声を張り上げる。
「なんとなんと! 王女ルクレツィア様が、先日の勲章授与の際、大破壊を収束させた英雄ロイク・アルシェ伯爵と話をしたのがきっかけで恋が芽生え、短い月日の中ではありますが、ふたりで愛を育み、このたび婚約を致しました! アレクサンドル陛下も、とてもお喜びでございます!」
これから行う6人の花嫁の経緯と同様、王国の国益とか、思惑とか、政略結婚とか、
俺と結婚するメリットとか、……生臭い話は当然ながらカットしていた。
ちょっと苦しいメイキングストーリーだが、ほぼ事実だし、まあ、仕方ないだろう。
でも、ルクレツィア様と俺が結ばれるもっともらしき理由は、
勲章のプレゼンテーターの際、王女が、英雄を見初めた末の結婚……これしかない。
教皇様のスピーチを聞き、
最上位の貴賓席に座ったアレクサンドル陛下が「うんうん」と満足そうに頷く。
少し離れた席では、グレゴワール様も同じく頷いていた。
微笑んだ教皇様は、こほんと咳払いし、話を続ける。
「大破壊の収束も! このご婚約も! 偉大なる創世神様のご加護のたまものであり、皆様には結ばれるおふたりを温かく見守って頂きたいと、当教会も心から願っております。ちなみにご結婚の式は、ルクレツィア様がご在学中のロジエ女子学園をご卒業される、再来年以降を予定しております」
こうして、教皇様の話が終わり……
「さあっ! ルクレツィア様! ロイク・アルシェ伯爵! 前へおいでください! ご出席の皆様へ、聖堂外の王国民達へ、ご婚約のお言葉をお願い致します!」
俺とルクレツィア様は顔を見合わせる。
「ではルクレツィア様、参りましょう。エスコート致します」
「うふふ♡ ロイク・アルシェ伯爵様、宜しくお願い致します」
満面の笑みでルクレツィア様は言い、そっと手を差し出して来た。
以前経験しているから、俺もルクレツィア様も臆したりはしない。
「失礼します。ルクレツィア様!」
という事で、俺は、ルクレツィア様へ手を差し出し、
彼女の手をしっかりと取ったのである。
遂に遂に!
創世神大聖堂において、俺と6人の女子、ルクレツィア様、ジョルジエット様、アメリー様、シルヴェーヌさん、シャルロットさん、トリッシュさんの婚約、結婚確定のお披露目の式典が行われる事となった。
大聖堂はキャパが限られている為、花嫁となる女子の家族に、王族、王国貴族、一部の騎士等、関係者のみが入場。
押しかけるであろう王国民へは、音声のみをまず送り、式典終了後に、
俺以下7人が、大聖堂を出て姿を見せる事となっている。
ここで大きな問題がある。
本日来る王国民の大多数は、ルクレツィア様と俺の婚約の発表だと思っている。
ジョルジエット様以下5人の女子の婚約は、全くのサプライズ。
驚天動地の出来事なのである。
サプライズの段取りは先日打合せした通り。
まずルクレツィア様と俺の婚約発表。
ひと通り、教皇様からの話を承った後、ジョルジエット様達が入場。
おっかけで、婚約発表する事となる。
時間は少しさかのぼる。
……段取りを組むにあたり、こんなやりとりがあった。
ルクレツィア様は、
「世間より、俺があしざまに言われないよう、しっかりと話をしたい」
とご希望された。
いじらしいと思う。
ルクレツィア様の気持ちを無視は出来ない。
でも、俺は古いタイプの人間である。
女子は男子がまもるべきという思いがある。
自分の嫁なら尚更である。
俺は自分が説明し、矢面に立つと、ルクレツィア様を説得した。
でも、ルクレツィア様はひかない。
きっぱりと言い切る。
「私が最後にロイク様の婚約者となったのです。経緯を説明するのは当り前ですわ。これからの人生、ロイク様に頼りきりではいけないのです」
おお!
ルクレツィア様って、おとなしそうな見かけによらず、とても芯が強い女子なんだ。
でも困った!
全て丸投げにするなど出来ない!
ぱぱぱぱぱぱ!と考えた俺は、ひとつの結論へ至った。
「ルクレツィア様」
「は、はい」
「では、ご一緒に説明をしませんか」
「え? 一緒に?」
「はい! いろいろと、ご相談しながら、俺とルクレツィア様、初めての共同作業という事で!」
「ご相談しながら、ロイク様と私の、初めての共同作業ですか?」
今いち意味が分からないのだろう。
ルクレツィア様は、ぽかんとした。
夫婦初めての共同作業というくだりがよくある。
結婚式におけるウエディングケーキ入刀の場合が多い。
今回は、俺とルクレツィア様で都合6人の女子が花嫁となる経緯を説明するのだ。
王国の国益とか、思惑とか、政略結婚とか、
俺と結婚するメリットとか、……生臭い話はカットする。
ジョルジエット様、アメリー様が俺に救われた事から生じた恋心。
ふたりと話したルクレツィア様が、自分も素敵な相手と出会い、結ばれ、
故郷で幸せになりたいという想い。
秘書達が俺を支えるうちに、芽生えた愛など……をメインに話す。
相手に理解して貰うべく、少し話を変更したり、盛り込みもしながら。
それが俺とルクレツィア様、初めての共同作業。
結婚式におけるウエディングケーキ入刀とか、俺の前世のそんな話をし、
理由をあげて、説得したら……
ルクレツィア様は、俺との結婚式における、
ウエディングケーキ入刀の光景をかぶらせて想像したみたい。
「うふふふふ♡ 誰にでも納得して貰う為、説得する! ロイク様と私の、初めての共同作業って! 嬉しいっ! でもでも! 一緒にウエディングケーキへ入刀もしましょうね♡」
そう言って、納得し了解してくれたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
という事で、定められた時間が来て、教皇様の話が始まった。
音声は、魔導拡声器で、室外でも聞こえている。
多分、大聖堂へ入れない多くの王国民が聞き入っている事だろう。
俺の魔力感知には、熱い祝福の波動が伝わって来る。
「……オーガの大群5千体が発生した、未曽有の大災厄、大破壊も無事収束し、平和が戻ったファルコ王国へ、またもめでたい話が入って参りました!」
教皇様は出席者を見まわし、声を張り上げる。
「なんとなんと! 王女ルクレツィア様が、先日の勲章授与の際、大破壊を収束させた英雄ロイク・アルシェ伯爵と話をしたのがきっかけで恋が芽生え、短い月日の中ではありますが、ふたりで愛を育み、このたび婚約を致しました! アレクサンドル陛下も、とてもお喜びでございます!」
これから行う6人の花嫁の経緯と同様、王国の国益とか、思惑とか、政略結婚とか、
俺と結婚するメリットとか、……生臭い話は当然ながらカットしていた。
ちょっと苦しいメイキングストーリーだが、ほぼ事実だし、まあ、仕方ないだろう。
でも、ルクレツィア様と俺が結ばれるもっともらしき理由は、
勲章のプレゼンテーターの際、王女が、英雄を見初めた末の結婚……これしかない。
教皇様のスピーチを聞き、
最上位の貴賓席に座ったアレクサンドル陛下が「うんうん」と満足そうに頷く。
少し離れた席では、グレゴワール様も同じく頷いていた。
微笑んだ教皇様は、こほんと咳払いし、話を続ける。
「大破壊の収束も! このご婚約も! 偉大なる創世神様のご加護のたまものであり、皆様には結ばれるおふたりを温かく見守って頂きたいと、当教会も心から願っております。ちなみにご結婚の式は、ルクレツィア様がご在学中のロジエ女子学園をご卒業される、再来年以降を予定しております」
こうして、教皇様の話が終わり……
「さあっ! ルクレツィア様! ロイク・アルシェ伯爵! 前へおいでください! ご出席の皆様へ、聖堂外の王国民達へ、ご婚約のお言葉をお願い致します!」
俺とルクレツィア様は顔を見合わせる。
「ではルクレツィア様、参りましょう。エスコート致します」
「うふふ♡ ロイク・アルシェ伯爵様、宜しくお願い致します」
満面の笑みでルクレツィア様は言い、そっと手を差し出して来た。
以前経験しているから、俺もルクレツィア様も臆したりはしない。
「失礼します。ルクレツィア様!」
という事で、俺は、ルクレツィア様へ手を差し出し、
彼女の手をしっかりと取ったのである。
0
お気に入りに追加
953
あなたにおすすめの小説
心から愛しているあなたから別れを告げられるのは悲しいですが、それどころではない事情がありまして。
ふまさ
恋愛
「……ごめん。ぼくは、きみではない人を愛してしまったんだ」
幼馴染みであり、婚約者でもあるミッチェルにそう告げられたエノーラは「はい」と返答した。その声色からは、悲しみとか、驚きとか、そういったものは一切感じられなかった。
──どころか。
「ミッチェルが愛する方と結婚できるよう、おじさまとお父様に、わたしからもお願いしてみます」
決意を宿した双眸で、エノーラはそう言った。
この作品は、小説家になろう様でも掲載しています。
狂乱令嬢ニア・リストン
南野海風
ファンタジー
この時代において、最も新しき英雄の名は、これから記されることになります。
素手で魔獣を屠る、血雨を歩く者。
傷つき倒れる者を助ける、白き癒し手。
堅牢なる鎧さえ意味をなさない、騎士殺し。
ただただ死闘を求める、自殺願望者。
ほかにも暴走お嬢様、爆走天使、暴虐の姫君、破滅の舞踏、などなど。
様々な異名で呼ばれた彼女ですが、やはり一番有名なのは「狂乱令嬢」の名。
彼女の名は、これより歴史書の一ページに刻まれることになります。
英雄の名に相応しい狂乱令嬢の、華麗なる戦いの記録。
そして、望まないまでも拒む理由もなく歩を進めた、偶像の軌跡。
狂乱令嬢ニア・リストン。
彼女の物語は、とある夜から始まりました。
自衛官、異世界に墜落する
フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・
現代軍隊×異世界ファンタジー!!!
※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。
鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~
月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。
目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。
「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」
突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。
和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。
訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。
「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」
だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!?
================================================
一巻発売中です。
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。
ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜
あけちともあき
ファンタジー
俺、多摩川奥野はクラスでも浮いた存在でボッチである。
クソなクラスごと異世界へ召喚されて早々に、俺だけステータス制じゃないことが発覚。
どんどん強くなる俺は、ふわっとした正義感の命じるままに世界を旅し、なんか英雄っぽいことをしていくのだ!
どうして振り向いてくれないの英雄王さま
夜桜
恋愛
宮廷伯令嬢エレナは、帝国を救ったキュリオスと恋に落ち、婚約していた。半年が経ったある日、エレナはキュリオスの冷たい態度に不満を抱き、浮気の疑いを持つ。
婚約の噂をかき消すほど英雄王としての人気は絶大。だから、余計に怪しんだ。
いったん距離を置いたエレナは、幼馴染の城伯に相談した。すると、婚約破棄するように勧められた。エレナはどうするべきか苦悩するのだが……。
【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~
クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。
ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。
下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。
幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない!
「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」
「兵士の武器の質を向上させる!」
「まだ勝てません!」
「ならば兵士に薬物投与するしか」
「いけません! 他の案を!」
くっ、貴族には制約が多すぎる!
貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ!
「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」
「勝てば正義。死ななきゃ安い」
これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる