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第204話「ロイク様、貴方は、まさに私が子供の頃、夢見て憧れた、伝説の勇者なのです」

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俺と秘書3人の計4名は、テオドールさんが待つ、
ギルドマスター室へ向かった。

最上階の10階がギルドマスター専用のフロア。

8階だが、魔導昇降機で上がる。

ロイク・アルシェになってからは、ギルドマスターフロアへは初めての訪問だが、
アラン・モーリアだった時は何度も訪ねている。
勝手知ったるとまでは言えないが、不慣れではない。

でも、あまり堂々としていると、周囲から変に不審がられる。

そんな事を考えているうち、あっという間に魔導昇降機は10階へ。

魔導昇降機の扉が「すすっ」と開けば、ギルドマスターの専任女性秘書さんが、
ひとり立っていた。

まあ、ここでギルドマスターが直接出迎えに来るわけがない。
彼女は案内役であろう。

という事で、専任女性秘書さんに案内され……

俺は、表向きほどよい緊張感を見せながら、秘書3人とともにギルドマスター室へ。

多分通されるのは、3つある応接室のひとつであろう。

と思ったら案の定だが、何と何と! 
一番豪華な応接室へ通された。

専任女性秘書さんがノックし、扉を開け、俺達4人は室内へ。

テオドールさんは、座っていた巨大で豪奢な長椅子から立ち上がった。

「これはこれはロイク様。おはようございます! ようこそ、冒険者ギルドへいらっしゃいました」

へ?
俺へ敬語?

驚いた俺。
65歳のテオドールさんが?

もっと年配のルナール商会会頭セドリックさんが、
お前に敬語を使ってるじゃないかよ、と突っ込みがありそうだが、
根本的なものが違う。

セドリックさんは、商隊を襲った山賊を俺が退治したから、恩があったのと、
ジョルジエット様、アメリー様救出の経緯絡みもあった。
依頼された仕事も完璧にクリアし、商会にも貢献した。
自然な流れの敬語である。

しかし、テオドールさんは違う。
彼は俺に恩義などないし、冒険者ギルドの長たるギルドマスター。
加えて、過去に狂暴な竜を倒し、人々に尊敬されるドラゴンスレイヤーなのだ。

だから、トレゾール公地で俺が竜を10体倒した際も、
ロイク君と、君付くんづけで、上から目線だった。

まあ、良いや。
俺のスタンスは変わらない。
元気にあいさつしよう。

「おはようございます! ギルドマスター!」

俺があいさつすると、秘書3人も続く。

「「「おはようございます! ギルドマスター!」」」

「皆さん、おはようございます!」

テオドールさんは、秘書へもあいさつし、

「話は聞きましたぞ、ロイク様。人間技とは思えぬ、夜を徹しての往復2,000㎞の神速走破。その上、たったひとりで、オーガ5千体を倒し、良くぞ大破壊を収束して頂いた。そんなロイク様が我がギルドの顧問なのは、誇らしい限りです」

ああ、すっごく称賛されてる。
ここで、プレートの件も聞いておこう。

「はあ、お褒めに預かり、光栄です。それで、マスター」

「何でしょう?」

「自分の部屋……プレートの記載が最高顧問に変わっていたのですが 何かの間違いでしょうか?」

「いえ! 合っています! 全然間違いではありません!」

テオドールさんは、まっすぐに俺を見て、きっぱりと言い切ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

俺の執務室の表記を間違いではない!と言い切ったテオドールさん。
相変わらず敬語で言う。

「徹夜の大破壊収束明けで、ロイク様は大変お疲れであり、身体をいたわられていると思い、秘書のパトリシアともども、昨日はお声がけを致しませんでした」

「は、はあ……」

……確かに、俺、昨日は丸一日寝ていたからなあ。

「昨日、ギルド内で緊急幹部会議を開き、全員賛成で決議しました」

「え? 緊急幹部会議を開き、全員賛成で決議ですか?」

「はい! その為、申し訳ありませんが、昨日中に、内々で決めさせて頂きました。ロイク・アルシェ顧問のランクを私と同じSとし、最高顧問へ昇格させる決議ですよ!」

え?
俺がランクSで、やっぱり最高顧問?

ランクSは実感あるけど、最高顧問って何なのよ?

戸惑う俺、秘書達をよそに、テオドールさんは、どんどん話を進めて行く……

「ロイク様はランクS、最高顧問へご昇格されたので、待遇は変わります。執務室も新設し、ギャランティも大幅にアップさせて頂きます!」

えっと……それは良いんだけれども。

仕事内容は、一体どうなるのだろうか?
それと最高顧問って、ギルド内での地位は?

ここはストレートに聞いた方が良いだろう。

「ギルドマスター」

「はい」

「今後、自分の仕事内容はどうなりますか? それと最高顧問って、ギルド内での地位はどれくらいになるのでしょう? 自分は名誉職って認識なんですが」

「はい、当ギルドでは最高顧問は、顧問同様、名誉職ですよ。仕事内容は現在と大差ありません。ちなみに階級的には私に準ずる地位です」

「そ、そうですか」

「はい、仕事の義務、ノルマなどありませんし、ご希望されない限り、幹部会議に出て頂く必要もありません。王国執行官のお仕事をメインに、ルナール商会のお仕事も優先して頂いて構いませんよ」

「え? 本当に良いんですか、それ」

「はい、構いません。今まで通りお仕事をして頂きます。出勤日、労働時間、退勤時間はご自由に。いつでもお好きな依頼を受諾して頂き、何かご意見、ご提案、ご要望があれば、遠慮なくおっしゃってください。内容を精査し、案件によっては検討させて頂きますから」

おお、何でもかんでも、至れり尽くせりじゃないか。

そいつは凄く助かる。

でも何故、そこまで優遇してくれるのだろう?

と思ったら、テオドールさんは言う。

「ロイク様」

「はい」

「私は感動したのです。ロイク様のご活躍をお聞きして」

「感動ですか?」

「はい、竜を10体も倒し、私など到底敵わないと思った上に、今度は大破壊で危機に陥った辺境伯閣下と麾下の2,000名を救い、数多の王国民の為に戦った。ロイク様、貴方は、まさに私が子供の頃、夢見て憧れた、伝説の勇者なのです」

「いえ、そこまででは」

「ははは、ご謙遜を! そんなロイク様が、我が冒険者ギルドの近しい身内という事をとても誇りに思うのですよ」

テオドールさんは、そう言うと、嬉しそうに微笑んだのである。
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