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第183話「はははははははは!! ロイク君!! 私に任せておけ!!」

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俺は胸を張り、その場で、

「朗報です! 今回の大破壊は収束。オーガども5千体はすべて討伐完了。被害はボドワン・ブルデュー辺境伯家兵士の軽傷者3名のみ。住民は全て避難済み。当然、ブルデュー辺境伯も無事です」

と、はきはきした口調で報告を入れた。

俺の報告をじっと聞いたグレゴワール様。

おお!
と小さくうめいて、目を大きく見開くと、満足そうな笑顔となった。

「ふ、ふむっ!! ロイク君!! ほ、本当に良くやってくれたっ!! さ、さあ!! もう少し詳しく聞こうっ!! な、中へ入ってくれるかっ!!」

いつもは、冷静沈着なグレゴワール様も、さすがに興奮を隠しきれない。
声が結構上ずっていた。

「はい!」

俺は、グレゴワール様にいざなわれ、王国宰相執務室へ入った。

……中には、誰も居なかった。
隣室に秘書達は居る気配はするが……人払いしたらしい。

長椅子ソファへかけてくれるか」

「はい!」

「よし、では改めて説明をしてくれるか?」

「了解です!」

返事をした俺は話し始める。

一旦、公爵邸へ戻り、支度をし、出撃した事。
睡眠もほとんど取らず夜通し、約1,000㎞を走り抜いた事。

明け方、ボドワン・ブルデュー辺境伯が立てこもる城へ到着したところ、
オーガの最上位種オーガキング以下、5,000体のオーガどもが城の正門を打ちこわし、中へ押し入ろうとしていた事。

このままでは辺境伯以下が危ういと思い、使い魔を召喚。
オーガどもへ突撃し、まず首魁たるオーガキングを倒した事。

首魁を失い、大混乱に陥ったオーガ5千体を討伐した事。

完全討伐を報せ、オーガを引き付け戦っていたブルデュー辺境伯達と合流。

辺境伯立ち合いの下、現場の検分を行い、完全討伐を確認して貰った事。

ブルデュー辺境伯を念入りに打合せをし、またも睡眠もほとんど取らず王都へ戻って来た事。

ここで俺は、ブルデュー辺境伯と連名でサインをした報告書を見せた。
同じものを3通作成し、俺とブルデュー辺境伯が1通ずつ所持。
残りの1通を、グレゴワール様宛にして、魔法鳩便で送ったのだ。

送った分はまだ、届いていないようだ。

俺の話を聞いたグレゴワール様は、渡した報告書を食い入るように読んだ。

更に俺はブルデュー辺境伯から預かった手紙を差し出した。
グレゴワール様へ届けて欲しいと、辺境伯から依頼されたものだ。

「ブルデュー辺境伯は本当にご立派です! 戦う者としての責務から、王国と王国民の為、ご自身を盾にされ、戦っておられました。オーガ5千体は城へ乱入しようとしていましたから、義を見てせざるは勇無きなり! 俺も戦わなくては! と思いました」

俺はそう言うと大きく頷いたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

報告書と手紙を読み終わったグレゴワール様。

すっくと立ち上がると、俺の傍へ来て、肩をがっし!とつかんだ。

「ロイク・アルシェ君!! 本当に!! 本当に良くやってくれたっ!! 王国執行官として!! 労をいとわず!! 自身を投げうって戦い!! 良くぞ見事な勝利を収めてくれた!! 王国宰相としてだけではなく!! 我が娘ジョルジエットの婿となる自慢の息子として!! 心の底から誇らしいぞっ!!」

おお、グレゴワール様が大絶賛、大賛辞。
少しくすぐったいな。
でも素直に嬉しいや。

「ブルデュー辺境伯とは、とても親しくさせて貰っている! 彼はうちの寄り子ではないが、信頼出来る誠実な男だ。その彼が君を大変ほめている。どうやらとても気に入られたようだな」

「そ、そうですか」

ええっと……
俺を褒めてくれるのは嬉しいけれど。

さっきから気になっているのは、
3万人の連合部隊を率いるフレデリク・バシュラール将軍の事。

俺がオーガ5千体を完全に討伐した事で、
王国が振り上げた拳……の行き先がなくなった。

3万人の連合部隊、オーガ討伐軍の派遣中止を告げ、
将軍以下メンツのケアを考え、実行しなくてはならない。

俺が少し渋い表情をしていたら、
グレゴワール様に一発で見抜かれた。

「はははははははは!! ロイク君!! 大破壊の危機が去ったというのに、浮かない顔をしているな? ……分かるぞ!! フレデリクと3万人の連合部隊へのケアの件だろう?」

「ええ、その通りです。いろいろ考えましたが、どのように告げれば、将軍、騎士達、兵士達へ『かど』がたたないかと思いまして」

俺がそう言うと、グレゴワール様はまたも高笑い。

「はははははははは!! ロイク君!! 私に任せておけ!! オーガどもを全て君が倒してしまう。こうなる可能性があるのではと、私は想定し、シミュレーションをしていたよ」

「え? そうなんですか?」

「ああ、但し、協力をして貰うから、いろいろ相談をさせてくれたまえ」

何か『策』を考えていたらしいグレゴワール様は、
俺に向かって「にやり」と笑ったのである。
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