上 下
167 / 257

第167話「そろそろタイムリミットです。日付が変わってしまいますわ」

しおりを挟む
ジョルジエット様、アメリー様は、既にルクレツィア様と話をつけていた。

3人一緒に、俺と結婚するのだと……

更にジョルジエット様は、今度は俺へではない。
3人の秘書達を見据える。

「シルヴェーヌ! シャルロット! そしてトリッシュ!」

びし! びし! びし!

凛とした声で秘書達の名を呼ぶジョルジエット様。

対して、ジョルジエット様へ呑まれたように臆して返事をする秘書3人。

「は、はい!」
「はいい!」
「は、はい!」

「先日、貴女達3人と話をしました。その時に貴女達は言いましたね?」

え?
何?
何を言ったっていうの?

「私とアメリーが、ロイク様と結ばれ、添い遂げると告げたら、憧れると!」

え?
ジョルジエット様とアメリー様が俺に添い遂げるのを憧れる?

そういえば……以前、トリッシュさんが俺へ片思いとかいう話から、
秘書達が盛り上がった事があったっけ。

その話を、ジョルジエット様、アメリー様ともしていたんだ。

「貴女達が言うロイク様に『憧れる』『好き』と言う言葉はどこまで本気……なのでしょう?」

ジョルジエット様の問いかけに対し、3人は無言である。

「……………………」
「……………………」
「……………………」

しかし3人は対照的だ。
顔を少ししかめ、むっつりしているのは、シルヴェーヌさんのみ。
シャルロットさん、トリッシュさんは、にこにこしてしていた。

そんな3人を見ながら、ジョルジエット様は言う。

「私とアメリーは、ロイク様が大好きですわ! 心よりお慕いし、愛しております。そして! 運命に翻弄されるお可哀そうなルクレツィア様のお相手として、ロイク様は最高の殿方だと確信しております」

ジョルジエット様の言葉を聞き、アメリー様は「うんうん」と頷いた。

秘書達はといえば……3人とも変わらずといった感じ。

「……………………」
「……………………」
「……………………」

「ロイク様は、私とアメリー同様、ルクレツィア様も必ず幸せにしてくれると信じております!」

「……………………」
「……………………」
「……………………」

「私とアメリーは、王女ルクレツィア様をお迎えし、3人で妻となり、ロイク様とともに歩いて行きます。そうなったら私は第二夫人、アメリーは第三夫人です。正室にはなれませんが、覚悟の上です!

「……………………」
「……………………」
「……………………」

「今! まさに人生のターニングポイントが来た! そう言えるでしょう」

「……………………」
「……………………」
「……………………」

「現在の貴女達は秘書という名の部下に過ぎません。もっと踏み込んで近しい間柄になるのか、否か、決断の時なのですよ」

「……………………」
「……………………」
「……………………」

「私は、決して強制はしませんわ。秘書に徹するのも、ひとつの道。公私の区別をつけるという意味で、プロとして良き選択かもしれません」

「……………………」
「……………………」
「……………………」

「今すぐ、答えを出せとは言いません。しかし、その事を踏まえてロイク様に仕え、しかるべき時が来た際、求められたら、はっきりとした答えを戻してくださいね」

「……………………」
「……………………」
「……………………」

相変わらず……3人の表情は変わらない。

シルヴェーヌさんは、むっつり。
シャルロットさん、トリッシュさんはにっこにこ。

だが3人とも、結局返事は『保留』となったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ジョルジエット様の話がひと段落した、その時。

とんとんとん!

書斎の扉がノックされた。

「皆様、夜分、恐れ入ります。家令のデルフィーヌ・ブルジェでございます」

ああ、ジョルジエット様、アメリー様を連れて来た後、
「失礼します」と退室したデルフィーヌさんか。

「そろそろタイムリミットです。日付が変わってしまいますわ。いくら閣下にご許可を頂いたとはいえ、ジョルジエット様、アメリー様は、そろそろお引き取りくださいませ」

ああ、もうそんな時間か。
かかっている魔導時計を見たら、確かに午前0時を回っていた。

「分かりました。アメリー、本館へ戻り、休みましょう」
「はい! ジョルジエット様」

さすがにジョルジエット様、アメリー様は、忠告に従う。
このまま俺の部屋へ泊まる!
とか言われたら、嬉しいけれど、やはり困る。

でも、このまま「さようなら」というわけにはいかない。

俺は秘書達に断り、
護衛のアンヌさん、ジュリーさんとともに、
ジョルジエット様、アメリー様を本館まで送ったのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

心から愛しているあなたから別れを告げられるのは悲しいですが、それどころではない事情がありまして。

ふまさ
恋愛
「……ごめん。ぼくは、きみではない人を愛してしまったんだ」  幼馴染みであり、婚約者でもあるミッチェルにそう告げられたエノーラは「はい」と返答した。その声色からは、悲しみとか、驚きとか、そういったものは一切感じられなかった。  ──どころか。 「ミッチェルが愛する方と結婚できるよう、おじさまとお父様に、わたしからもお願いしてみます」  決意を宿した双眸で、エノーラはそう言った。  この作品は、小説家になろう様でも掲載しています。

狂乱令嬢ニア・リストン

南野海風
ファンタジー
 この時代において、最も新しき英雄の名は、これから記されることになります。  素手で魔獣を屠る、血雨を歩く者。  傷つき倒れる者を助ける、白き癒し手。  堅牢なる鎧さえ意味をなさない、騎士殺し。  ただただ死闘を求める、自殺願望者。  ほかにも暴走お嬢様、爆走天使、暴虐の姫君、破滅の舞踏、などなど。  様々な異名で呼ばれた彼女ですが、やはり一番有名なのは「狂乱令嬢」の名。    彼女の名は、これより歴史書の一ページに刻まれることになります。  英雄の名に相応しい狂乱令嬢の、華麗なる戦いの記録。  そして、望まないまでも拒む理由もなく歩を進めた、偶像の軌跡。  狂乱令嬢ニア・リストン。  彼女の物語は、とある夜から始まりました。

自衛官、異世界に墜落する

フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・ 現代軍隊×異世界ファンタジー!!! ※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。

鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。 目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。 「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」 突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。 和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。 訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。 「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」 だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!? ================================================ 一巻発売中です。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき
ファンタジー
俺、多摩川奥野はクラスでも浮いた存在でボッチである。 クソなクラスごと異世界へ召喚されて早々に、俺だけステータス制じゃないことが発覚。 どんどん強くなる俺は、ふわっとした正義感の命じるままに世界を旅し、なんか英雄っぽいことをしていくのだ!

どうして振り向いてくれないの英雄王さま

夜桜
恋愛
 宮廷伯令嬢エレナは、帝国を救ったキュリオスと恋に落ち、婚約していた。半年が経ったある日、エレナはキュリオスの冷たい態度に不満を抱き、浮気の疑いを持つ。  婚約の噂をかき消すほど英雄王としての人気は絶大。だから、余計に怪しんだ。  いったん距離を置いたエレナは、幼馴染の城伯に相談した。すると、婚約破棄するように勧められた。エレナはどうするべきか苦悩するのだが……。

【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。 ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。 下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。 幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない! 「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」 「兵士の武器の質を向上させる!」 「まだ勝てません!」 「ならば兵士に薬物投与するしか」 「いけません! 他の案を!」 くっ、貴族には制約が多すぎる! 貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ! 「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」 「勝てば正義。死ななきゃ安い」 これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。

処理中です...