上 下
128 / 257

第128話「再び、俺はここへ来た!」

しおりを挟む
いろいろな部分を考慮して貰った形で、王国執行官に任命され……

国外逃亡とか、名前を変えて隠遁生活とか、
最悪の結末は回避出来た。

俺はグレゴワール様始め、3人全員に深く感謝すると同時に、
大いに安堵した。

ほっと、ため息をついた俺へ、グレゴワール様は言う。

「ロイク君、すぐに出かけるぞ!」

「え? すぐに出かけるって?」

「うむっ! 馬車で王宮へ行く! 早速だが、国王陛下に会って貰う。宰相たる私、ギルドマスター、ルナール商会会頭も一緒だ」

グレゴワール様は、敢えて名前で言わず、肩書で告げた。

「では、俺を入れ、4人で?」

「そうだ! 先ほどの話通り、3人から国王陛下へ、ロイク君を推挙したという話にするのだ」

「分かりました」

ああ、国王陛下にお会いするなんて、一番高価で綺麗な革鎧を着て来て良かった!
再び、安堵する俺。

「馬車2台に分乗し、1台目が私とロイク君、2台目が、ギルドマスターとルナール商会会頭だ」

……成る程。

このような組み合わせにするという事は、王宮に行くまでの車中、
グレゴワール様は、俺へ対し、ふたりきりで話したい内容の話があるという事だ。

「当然、護衛もつく。ロイク君も良く知っている面々で、警護主任のバジル・オーリク以下、20名の騎士だよ」

「了解です」

「という事だ。さあ! 行こう! テオドールさん、セドリック会頭も出ますよ」

「「「はい!」」」

という事で、廊下に出れば、バジルさん以下騎士5名が居た。

俺達へ向かってびしっ!と敬礼する。

対して、グレゴワール様は大きく頷く。

「バジル! 護衛を頼むぞ!」

「は! かしこまりました!」

「はきはき」と答えたバジルさん。
俺の方をちらと見た。

もしかしたら、今回の件、ある程度話を聞いているのかもしれない。

バジルさんに先導され、俺達は本館を出て、表玄関へ。

玄関前には、残りの騎士15名、騎士達の乗る馬が20頭。
そして俺達が乗って行く馬車が2台止まっていた。

1台目の馬車の御者が扉を開け、まずグレゴワール様が、そして俺が乗り込む。
2台目も同様にテオドールさんとセドリック会頭も乗り込んだようである。

間を置かず、馬車が動き出し……
俺達は、国王陛下が待つ、王宮へ向け、出発したのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

バジルさんの騎馬が先導。
都合2台の馬車、20名の騎士からなる一行は、王宮へ向かい、
王都の街中を粛々と進む。

念の為、俺も索敵……魔力感知を張り巡らす。

騎士達が護衛にあたるから大丈夫なのだが……
いざとなれば、俺も護衛組に合流し、戦う気構えだ。

そんな俺へグレゴワール様が、話しかけて来る。

「ロイク君」

「はい」

「国王陛下が、今回の件を快くご了解してくださったのは、いろいろ理由がある」

「いろいろな理由がですか?」

「うむ、そして君に了解を取らず話を進めてしまった事を詫びよう」

「いえ、そんな」

「それでだな。今回のドラゴンの売却先に関しては、私に任せてくれないか。金額等、悪いようにはしない」

「分かりました」

グレゴワール様に、いろいろと執り成して貰い、事なきを得た。
冒険者ギルド、ルナール商会に売却しようと思っていたドラゴンの死骸だが、
グレゴワール様の判断で売却する事で、円滑に物事が進むのなら、全然OKだ。

そんな話をしている間も、馬車は走る。

幸い、何の妨害もなく、俺達は無事、王宮へ到着した。

王宮内へ入り、やはりバジルさんの先導で進んで行く。

長い廊下を歩いて行くと、王宮内の護衛を務める大勢の騎士達、
美しい侍女を始め、同じく大勢の使用人達が目に入る。

……少し、懐かしいかもしれない。

前世において『アラン・モーリア』でステディ・リインカネーションをプレイしていた際、王宮にも何度も来ている。

再び、俺はここへ来た!
という思いである。

さて!
一体どこで、国王陛下に謁見するのだろうか?

基本的に公式の謁見ならば、王宮の大広間で行う。

しかし、今歩いているのは、大広間へのルートではない。

そう、俺達が向かっているのは、グレゴワール様によれば、
王宮の奥にある国王陛下のプライベートルームのひとつ、
特別応接室付きの国王専用書斎なのである。

王宮内へ入って15分以上歩き、俺達は国王陛下の専用書斎へ到着した。

入口には、やはりというか騎士が2名、護衛として立っていた。

まずは、バジルさんが騎士達へ敬礼。

「王国宰相、グレゴワール・リヴァロル公爵閣下と、そのご一行をお連れした!」

続いて、グレゴワール様が、声を張り上げる。

「事前にお願いし、お時間を頂いておる! 陛下にお会いしたい!」

すると、騎士のひとりが、びしっと敬礼。

「かしこまりました! 陛下より、お聞きしております! どうぞ! 中へお入りくださいませ!」

と言い放ち、更に書斎へ向かい、

「陛下! 王国宰相、グレゴワール・リヴァロル公爵閣下と、そのご一行がいらっしゃいました!」

とひときわ大きな声で言い放った。

対して、

「うむ!! 大儀である!! すぐ中へ通してくれ!!」

と、ファルコ王国第81代国王、アレクサンドル・ファルコ陛下の声が、
大きく大きく響いていたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。

晴行
ファンタジー
 ぼっち高校生、冷泉刹華(れいぜい=せつか)は突然クラスごと異世界への召喚に巻き込まれる。スキル付与の儀式で物騒な名前のスキルを授かるも、試したところ大した能力ではないと判明。いじめをするようなクラスメイトに「ビビらせんな」と邪険にされ、そして聖女に「スキル使えないならいらないからどっか行け」と拷問されわずかな金やアイテムすら与えられずに放り出され、着の身着のままで異世界をさまよう羽目になる。しかし路頭に迷う彼はまだ気がついていなかった。自らのスキルのあまりのチートさゆえ、世界のすべてを『殺す』権利を手に入れてしまったことを。不思議なことに自然と集まってくる可愛い女の子たちを襲う、残酷な運命を『殺し』、理不尽に偉ぶった奴らや強大な敵、クラスメイト達を蚊を払うようにあしらう。おかしいな、俺は独りで静かに暮らしたいだけなんだがと思いながら――。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
 主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。  しかし、ある日―― 「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」  父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。 「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」  ライルは必死にそうすがりつく。 「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」  弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。  失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。 「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」  ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。  だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。

追放された付与術士、別の職業に就く

志位斗 茂家波
ファンタジー
「…‥‥レーラ。君はもう、このパーティから出て行ってくれないか?」 ……その一言で、私、付与術士のレーラは冒険者パーティから追放された。 けれども、別にそういう事はどうでもいい。なぜならば、別の就職先なら用意してあるもの。 とは言え、これで明暗が分かれるとは……人生とは不思議である。 たまにやる短編。今回は流行りの追放系を取り入れて見ました。作者の他作品のキャラも出す予定デス。 作者の連載作品「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」より、一部出していますので、興味があればそちらもどうぞ。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

処理中です...