上 下
114 / 257

第114話「え!? 大ウソ!?」

しおりを挟む
気持ち的に『お腹いっぱい』になった俺は、
依頼完遂を決め、トレゾール公地を撤収。
王都ネシュラへ戻った。

ドラゴン10体を全て討伐したのが、午後8時30分を少し回った時刻。

あるじよ! もう撤収なのか? まだまだ戦えるだろう?』

ケルベロスは少し不満そうであったが……
この後、1時間、3時間、5時間と、夜通し次の魔物の出現を待ち、
改めて戦う気持ちは俺になかった。

火を消すなど、後始末をして、撤収したのが午後9時。

トレゾール公地の正門を開け、ケルベロスとともに出れば、
しばし経ち、正門は自動的に閉まった。

前世の街と違い、周囲は原野で真っ暗闇。

夜目が利く俺だが、革兜に小さな魔導灯をつけ、原野を走る。
ヘルメットライトという趣きで。

そして街道へ出てからも、ひた走る。

途中、小休憩をはさみながら、王都ネシュラまで、駆けて帰って来たのだ。

時速30km~100kmと、走行速度を変え、時間調整をしながら帰って来たので、王都『北』正門前に到着したのが、午前7時。

門番さんに、あいさつし、冒険者ギルドの所属登録証を提示し、ホテルへ……

フロントへ確認したが、手紙、伝言はなし。
「1週間の予定より出張の仕事がだいぶ早く終わった」と伝え、部屋へ入る。

すぐに装備一式を外し、簡単に手入れをした後、シャワーでさっぱり。
少し疲れたので、ベッドへ潜り込む。

すぐ眠りに落ちた。

ぐっすり眠って、起きたら……5時間ほど経っており、
午後0時30分、ゆうにお昼を回っていた。

部屋着に着替え、階下へ行き、ホテルのレストランでランチ。
お茶を飲んだら……ようやく落ち着いた。

どうしようかと、少し考えた。

結果、冒険者ギルドへ赴き、依頼の完遂報告をする事を決めた。

急ぎ、部屋へ戻り……

クローゼットから、新しい革兜、革鎧を出して、装着。
眠る前に手入れした剣を腰から提げ、夜には戻ると伝え、ホテルを出る。

徒歩で、冒険者ギルドへ……
俺の業務担当のトリッシュさんが居れば、ラッキーなんだけど。

王都の街中を歩く。
5時間眠り、疲れは完全に取れていた。

……やがて冒険者ギルドへ到着。

本館へ入り、受け付けで問い合わせると、幸いトリッシュさんは、在席していた。
すぐの打合せも可能だという。

ああ、俺はやっぱりラッキー。
パラメータのLUK:ラッキーが10,000の《MAX》だけある。

受付前で待っていると、トリッシュさんは、にこにこしながらやって来た。

早速、2階の応接室へ。
さすがに、ふたりきりで打合せするのも、もう慣れた。

「今朝、戻って来ました」

「お疲れ様ですう! ロイク様。ご無事で何よりです……でも、お戻りがとんでもなくお早かったですねえ」

「はあ、まあ……」

俺が口ごもると、トリッシュさんは、にっこり笑い、

「ロイク様。まあ、元気を出してくださいな。トレゾール公地は魔境と言われるくらい、とんでもない場所ですから」

おおっと。
励まされちゃったよ。

王都へ戻るのが早すぎたせいか、トリッシュさんは依頼が完遂されていない、
つまり未遂と思っているみたいだ。

いや、もしかしたら、行くのをやめて、途中で戻って来たと思っているかも……

片道300kmだからなあ。

とりあえず、話を合わせておくか。

「とんでもない場所ですか。確かにそうですね。はっきり、そう思いました」

ここでトリッシュさん。
急に小声に……

「ロイク様、ちなみに、ここだけの話、トレゾール公地へ王国軍兵士1,000人が赴いたら、ドラゴンの上位種が数百体もの大群で現れ、全滅させられた公式発表って、大ウソですから」

「え!? 公式発表が大ウソ!?」

「し~っ。お静かに」

「は、はい」

おいおい、その話。
ステディ・リインカネーションをやり込んだ俺でも、知らなかったぞ。

「まあ、ドラゴンに襲われ全滅したのは、本当なのです」

「はあ……」

「実際はノーマルタイプのドラゴン10体と少しが、出たそうです。それでも王国軍の兵士1,000人では全然歯が立たなかったようです……お気の毒でした」

「そうだったんですか……」

「はい! 金、宝石にみちあふれた、トレゾール公地の盗掘防止の為、おおげさに話を盛ったんですよ」

「おおげさにですかあ」

「はい、ただ、採集、採掘者が10人以上で行くとノーマルタイプのドラゴンが10体現れるのは確かです」

「成る程」

うん、確かに出たよ、ノーマルタイプのドラゴン10体が。
ケルベロスとともに、全て倒したけどね。

「王国と冒険者ギルドの取り決めで、トレゾール公地へ赴き、帰還した冒険者には、真実を話してOKだと、決められておりますから」

「はあ、そうなんですか」

「でも、ロイク様はおひとりで行かれて、犬の使い魔を1体召喚されるくらいだから、ドラゴン10体は関係なかったですよね」

トリッシュさんはそう言うと、にっこり笑ったのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

心から愛しているあなたから別れを告げられるのは悲しいですが、それどころではない事情がありまして。

ふまさ
恋愛
「……ごめん。ぼくは、きみではない人を愛してしまったんだ」  幼馴染みであり、婚約者でもあるミッチェルにそう告げられたエノーラは「はい」と返答した。その声色からは、悲しみとか、驚きとか、そういったものは一切感じられなかった。  ──どころか。 「ミッチェルが愛する方と結婚できるよう、おじさまとお父様に、わたしからもお願いしてみます」  決意を宿した双眸で、エノーラはそう言った。  この作品は、小説家になろう様でも掲載しています。

狂乱令嬢ニア・リストン

南野海風
ファンタジー
 この時代において、最も新しき英雄の名は、これから記されることになります。  素手で魔獣を屠る、血雨を歩く者。  傷つき倒れる者を助ける、白き癒し手。  堅牢なる鎧さえ意味をなさない、騎士殺し。  ただただ死闘を求める、自殺願望者。  ほかにも暴走お嬢様、爆走天使、暴虐の姫君、破滅の舞踏、などなど。  様々な異名で呼ばれた彼女ですが、やはり一番有名なのは「狂乱令嬢」の名。    彼女の名は、これより歴史書の一ページに刻まれることになります。  英雄の名に相応しい狂乱令嬢の、華麗なる戦いの記録。  そして、望まないまでも拒む理由もなく歩を進めた、偶像の軌跡。  狂乱令嬢ニア・リストン。  彼女の物語は、とある夜から始まりました。

自衛官、異世界に墜落する

フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・ 現代軍隊×異世界ファンタジー!!! ※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。

鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。 目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。 「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」 突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。 和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。 訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。 「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」 だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!? ================================================ 一巻発売中です。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき
ファンタジー
俺、多摩川奥野はクラスでも浮いた存在でボッチである。 クソなクラスごと異世界へ召喚されて早々に、俺だけステータス制じゃないことが発覚。 どんどん強くなる俺は、ふわっとした正義感の命じるままに世界を旅し、なんか英雄っぽいことをしていくのだ!

どうして振り向いてくれないの英雄王さま

夜桜
恋愛
 宮廷伯令嬢エレナは、帝国を救ったキュリオスと恋に落ち、婚約していた。半年が経ったある日、エレナはキュリオスの冷たい態度に不満を抱き、浮気の疑いを持つ。  婚約の噂をかき消すほど英雄王としての人気は絶大。だから、余計に怪しんだ。  いったん距離を置いたエレナは、幼馴染の城伯に相談した。すると、婚約破棄するように勧められた。エレナはどうするべきか苦悩するのだが……。

【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。 ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。 下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。 幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない! 「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」 「兵士の武器の質を向上させる!」 「まだ勝てません!」 「ならば兵士に薬物投与するしか」 「いけません! 他の案を!」 くっ、貴族には制約が多すぎる! 貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ! 「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」 「勝てば正義。死ななきゃ安い」 これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。

処理中です...