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第68話「騎士達と車座で」

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リヴァロル公爵家闘技場『中』……
午前5時過ぎ……

ストレッチ、ランニング、剣の素振り、模擬戦……
騎士達との朝練が終わり……
俺はフィールドで車座になって、バジルさん、アンヌさん、ジュリーさんと打合せ。
周囲を50人以上の騎士が囲む。

ちなみに、自分達を呼び捨てにしてくれとバジルさんからは言われたが、
やはり無理なので、結局騎士達を全員『さん』付けにする事で決着した。

但し、俺は将来、ジョルジエット様と結ばれ、リヴァロル公爵家を継ぎ、当主になる可能性もゼロではない。
……という事で、こそばゆいが、引き続き『ロイク様』と呼ばれる事に。

話を戻せば、打合せの内容は、当然本日のデート……
じゃなかった!
ジョルジエット様、アメリー様『外出の際の警護』に関してである。

騎士全員をこの場に残して貰ったのは、情報を共有する為だ。

今後もこのように段取りを組みたいと思う。

という事で、俺が、ざっくりと、考えたプラン……本日の行動スケジュールを話す。

用意しておいた、王都の地図をなぞりながらだ。

え?
行先は、『誰にも内緒のサプライズ』じゃないのかって?

いやいやいや!
例外はあるのだが、警護する側は、
行動予定を始めとした情報を共有しておかなければならない。

それぐらいは、素人の俺でも少し考えれば分かる。

サプライズさせるのは、ジョルジエット様、アメリー様のおふたりだけでOKなのだ。

俺の外出プランの説明を聞き、騎士達のリーダーたる警護主任のバジルさんは、
「うんうん」と納得し、頷いている。

「成る程、ロイク様。面白いプランですね。ジョルジエット様、アメリー様がお喜びになりそうだ」

「バジルさんからそう、おっしゃって頂けると嬉しいです」

俺が王道的なお礼を戻すと、いきなり突っ込みが。

「しかし王都に来られて、わずか1か月少しと思えないくらい街の勝手をご存じですね? 裏道とか、危険な場所とか」

「えええ?」

俺が持つ王都の知識は、前世のケン・アキヤマが、
ステディ・リインカネーションをやり込んで得たものだ。

更にバジルさんは、突っ込んでくる。

「街の様子を話されるロイク様は、まるで王都が生まれ故郷か、長年住んでいらっしゃるようだ」

うお!
鋭い!

「ええっと! ま、まあ、これから暮らして行く街なので、いろいろと調べました」

「おお、そうですか。だが、驚いた。ロイク様が護衛を依頼されたのは昨夜、それをこの短時間に、ここまでお考えになったとは……このバジル、感服致しました」

「ありがとうございます。つきましてはバジルさんの部下をアンヌさん、ジュリーさん以外に10名ほど、お借りしたいのですが……昨日あんな事件があったばかりなので」

「ごもっともです。しかし、たった10名で、宜しいのでしょうか?」

「はい、基本は俺、アンヌさん、ジュリーさんで、警護します。10名の騎士の方は、俺達5人を、少し離れた場所で……つまり『遠巻き』にして『つかず離れず』で護って頂ければと思います」

「ほう、遠巻きでつかず離れずで、ですか?」

「はい、これ以上多いと、ものものしくなり、ジョルジエット様、アメリー様が嫌がるのと、それ以上の人数をお借りして、この屋敷の警備が手薄になったら本末転倒ですので」

「ふむ、成る程」

「バジルさんがもろもろご了解されたという報告も兼ね、私から公爵閣下へ報告を入れさせて頂きますが、宜しいでしょうか?」

「はい、構いません」

「では、ジョルジエット様、アメリー様がご出発なさる前後に、時間差で都合10名の騎士が別れて出発するよう、バジル様が段取りを組んでください」

「了解致しました! ロイク様! 各所にも私から連絡を入れておきます」

返事を戻したバジルさんは、「すっく!」と立ち上がった。
聞き役のアンヌさん、ジュリーさん、50名の騎士達も一斉に立ち上がる。

これは、展開が予想出来る。
なので、俺も慌てて立ち上がる。

全員が立ったのを確認すると、バジルさんは、すかさず敬礼。
騎士達50名も続いて、敬礼。

同じく俺も敬礼する。

これで打合せは終わった。
今、話を聞いた騎士50人余の中から、10名が派遣されるはずだ。

最後に、俺は表向き使い魔の犬とした、魔獣ケルベロスを召喚、
騎士達へ披露しておく。

昨日のように、呼び出し、いろいろと動いて貰うケースもあるだろう。
存在をしっかり認識して欲しいと、考えたのである。

うおおお~ん!!

バジルさん以下、灰色狼風に擬態した巨大なケルベロスが魔方陣から出現し、驚く。
犬と言いながら、体長2m体高1mを超えているからだ。

「おおお! ロ、ロイク様! こ、これが! 現場でアメリー様を護った使い魔なのですか?」

「はい、そうです。何卒宜しくお願い致します」

バジルさんから問われ、俺は大きく頷いたのである。
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