上 下
67 / 257

第67話「プランニングOK! そして騎士達全員と仲良くなる事に成功した」

しおりを挟む
「ロイク様、明日、外出して、いつどこへどう行って何をするのか、プランニングは一切お任せ致しますわ! 私とアメリーがお慕いするロイク様と、楽しく過ごせるプランを期待しております!」 

「はあっ!?」

「お約束致します。どのようなプランでも文句は一切、言いません。ちなみに、予算は気にしないでお考え下さいませ。何卒宜しくお願い致します!」

と、ジョルジエット様からいきなり言われ……青天の霹靂へきれきだったが、仕方がない。

一方的に、押し切られてしまったが、これも仕事だと割り切ろう。

そもそも、人間の感情は複雑だ。
ぱあっと燃え上がったかと思えば、冷めてしまう場合もある。

ジョルジエット様、アメリー様も、今は「ロイク様をお慕いしております」だが……
結局「さようなら!」「ご縁がありませんでしたね」は充分ありうると思う。

予定は未定。
この先、どうなるかは分からない。

先述したが、今回の一件、俺にデメリットは殆どない。

2億円もの大金を貰い、超が付く上顧客から大口の仕事を一件、受注した。

精鋭騎士達との貴重なバトルも経験し、レベルもひとつ上がり、
必殺技『五段突き』も習得した。

という事で、俺はジョルジエット様、アメリー様の好みに合わせ、条件をセッティングし、外出のプランニングをする事にした。

こういう時、前世の俺ケン・アキヤマの経験則は役に立つ。
やり込みぬいたステディ・リインカネーションのゲーム知識だけじゃない。
営業経験も役に立つのだ。

デートの経験はほとんどない。
だが、飛び込み営業で、クライアントの新規開拓をした経験は充分にある。

新規クライアント開拓の営業経験が、デート経験に即、流用出来るとは思えないが、今回のプランニングをする上で、役に立つとは思う。

「ええっと、ジョルジエット様、アメリー様、おふたりに、お聞きしたい事があります」

「はい! 何でございましょう? ロイク様!」
「何でも、お尋ねくださいませませっ!」

ここで、俺から、ジョルジエット様、アメリー様へ嗜好、趣味などを、
べた&ストレートに聞くのは愚の骨頂である。

普段の生活の様子を、警戒されないようにさりげなく、もっと詳しく聞き出した上、
そこから、彼女達の嗜好を推測する。

また会話から、好きなものを認識理解するのは勿論なのだが、
敢えて、嫌い&苦手なものを尋ねる事が、プランニングや提案で、
いきなり地雷を踏まないコツなのだ。

後で、それ知らなかった!
では、取り返しのつかない結果となる。

という事で、聞き役に徹した俺に対し、
ジョルジエット様、アメリー様は、進んでいろいろと話してくれた。
話の合間に、アンヌさん、ジュリーさんも補足してくれた。

なんやかんやで、質疑応答完了!

よし!
4人の女子から教えて貰った事は全て、おぼえた!

改めて認識したが、アラン・モーリアの初期設定たる俺は記憶力も中々のようだ。

全て! ……というわけではないが、これでジョルジエット様、アメリー様の、
『基本データベース』が完成した。

貴族女子ふたりの『基本データベース』と、
俺ケン・アキヤマの記憶にある王都の完璧データベースと重ね、すり合わせる。

ぱぱぱぱぱっと、考えた俺。

明日のデートコース?が出来上がった。

ここでタイムリミット。
午後9時30分となった。

聞けば、ジョルジエット様、アメリー様の就寝時間は午後10時前後。

そろそろ寝る準備をするらしいし、その為に当然使用人が数多、
つまりメイド軍団も来るようだ。

名残惜しそうに見るジョルジエット様、アメリー様へ、
「おやすみなさい」のあいさつ。

俺は与えられた自分の部屋に戻ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

翌朝……
というか、まだ夜中の、午前3時30分に俺は起きた。

部屋に入って、午後11時には就寝。
なので4時間30分は、眠れた。

はっきり言って、少し眠い。
だが……
今日の仕事を無事クリアし、ホテルに戻ったら、ゆっくり眠ろう。

そう思いながら、15分で身支度をし、革鎧姿で部屋の外へ。

主屋内で使用人数人と出会ったが、
声を抑えめにして「おはようございます」のあいさつ。

対して、使用人も笑顔であいさつしてくれる。
セバスチャンさんが、周知してくれたらしく、見とがめられる事はなかった。

1階へ降り、主屋から出て……広大な庭を歩く。
昨日の『大』ではなく、ここで訓練を行うと聞いた『中』闘技場へ。

既に大勢の騎士達が来て、ストレッチ等、身体をほぐしていた。

アンヌさん、ジュリーさんも居る。

昨日の今日である。
若手騎士など、ジョルジエット様、アメリー様と仲良くする俺を、
目のかたきにしていたが、どうだろう?

と、思ったが……

だだだだだだだだだだだっっっっ!!!

一斉に騎士達が、駆けて来て整列。

そこへ、たっ! たっ! たっ! 
と、警護主任騎士のバジルさんが駆けて来て、騎士達の前に立った。

大きく声を張り上げ、直立不動で敬礼。

「ロイク様に敬礼!」

当然、騎士達はバジルさんの命令に従い、直立不動で敬礼。

おいおいおい!
そこまで、俺に対し、礼を尽くしてくれるのか?

ジョルジエット様、アメリー様との関係がどうなるか、分からないのに?

と思ったが、バジルさんの好意に感謝し、
ここは彼らにならい、俺も敬礼する事にした。

びしっと! 直立不動で敬礼し、

「おはようございます! 昨日はお疲れ様でした! ありがとうございました!」

と、大きな声であいさつした。

前世の営業経験、そしてこのステディ・リインカネーションの世界で認識している。

何はなくとも、まずあいさつだけは、きちんとやる!
大きな声ではっきりと。

それがダークサイド企業で学んだ、数少ない正しいルールのひとつだ。

礼儀正しい対応をした俺を見て、バジルさんは笑顔である。

ここでアンヌさん、ジュリーさんが駆け寄って来る。

「ロイク様、おはようございます!」
「おはようございます! まずは一緒にストレッチ、ランニングから始めましょう!」

騎士達が行う訓練の手順は全く分からない俺であったが……
仲良くなったアンヌさん、ジュリーさんのフォローもあり、
問題なく、スムーズに訓練へ入って行けた。

ストレッチ、ランニングの後は、剣、槍等の素振り、
その後は、まだ昨夜の興奮が残っていたらしく、
練習用の雷撃剣を使った格闘ありの模擬戦闘へ……

俺は真っ先に名乗りをあげた、アンヌさん、ジュリーさんを始め、
騎士達5名ほどを、またも子ども扱いした。

しかし、子ども扱いしたと言っても、適度に戦う。
瞬殺するほど、身体能力を最大レベルで使わず、本気では戦わない。

単に昨日と同じ繰り返しでは、訓練にならないし、
騎士達との懇親が、はかれないから。

接する態度も、腰を低くし、けして誇らず、驕らずを心がけ、
俺は、騎士達全員と仲良くなる事に成功したのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

心から愛しているあなたから別れを告げられるのは悲しいですが、それどころではない事情がありまして。

ふまさ
恋愛
「……ごめん。ぼくは、きみではない人を愛してしまったんだ」  幼馴染みであり、婚約者でもあるミッチェルにそう告げられたエノーラは「はい」と返答した。その声色からは、悲しみとか、驚きとか、そういったものは一切感じられなかった。  ──どころか。 「ミッチェルが愛する方と結婚できるよう、おじさまとお父様に、わたしからもお願いしてみます」  決意を宿した双眸で、エノーラはそう言った。  この作品は、小説家になろう様でも掲載しています。

狂乱令嬢ニア・リストン

南野海風
ファンタジー
 この時代において、最も新しき英雄の名は、これから記されることになります。  素手で魔獣を屠る、血雨を歩く者。  傷つき倒れる者を助ける、白き癒し手。  堅牢なる鎧さえ意味をなさない、騎士殺し。  ただただ死闘を求める、自殺願望者。  ほかにも暴走お嬢様、爆走天使、暴虐の姫君、破滅の舞踏、などなど。  様々な異名で呼ばれた彼女ですが、やはり一番有名なのは「狂乱令嬢」の名。    彼女の名は、これより歴史書の一ページに刻まれることになります。  英雄の名に相応しい狂乱令嬢の、華麗なる戦いの記録。  そして、望まないまでも拒む理由もなく歩を進めた、偶像の軌跡。  狂乱令嬢ニア・リストン。  彼女の物語は、とある夜から始まりました。

自衛官、異世界に墜落する

フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・ 現代軍隊×異世界ファンタジー!!! ※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。

鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。 目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。 「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」 突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。 和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。 訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。 「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」 だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!? ================================================ 一巻発売中です。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき
ファンタジー
俺、多摩川奥野はクラスでも浮いた存在でボッチである。 クソなクラスごと異世界へ召喚されて早々に、俺だけステータス制じゃないことが発覚。 どんどん強くなる俺は、ふわっとした正義感の命じるままに世界を旅し、なんか英雄っぽいことをしていくのだ!

どうして振り向いてくれないの英雄王さま

夜桜
恋愛
 宮廷伯令嬢エレナは、帝国を救ったキュリオスと恋に落ち、婚約していた。半年が経ったある日、エレナはキュリオスの冷たい態度に不満を抱き、浮気の疑いを持つ。  婚約の噂をかき消すほど英雄王としての人気は絶大。だから、余計に怪しんだ。  いったん距離を置いたエレナは、幼馴染の城伯に相談した。すると、婚約破棄するように勧められた。エレナはどうするべきか苦悩するのだが……。

【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。 ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。 下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。 幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない! 「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」 「兵士の武器の質を向上させる!」 「まだ勝てません!」 「ならば兵士に薬物投与するしか」 「いけません! 他の案を!」 くっ、貴族には制約が多すぎる! 貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ! 「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」 「勝てば正義。死ななきゃ安い」 これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。

処理中です...