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第62話「グレゴワール様は「うんうん」と満足そうに頷いた」

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冒険者としての俺の初仕事、ジョルジエット様、アメリー様救出事件は、
紆余曲折の末、大きくスケールアップした。

何と何と! ジョルジエット様、アメリー様ふたりから、慕われた挙句、
ジョルジエット様父、グレゴワール・リヴァロル公爵まで巻き込み、
精鋭騎士50人とグレゴワール様本人が参加した腕相撲、模擬試合までに発展。

俺が圧倒的な強さを見せ勝利した結果、交際、婚約、結婚を前提とした交際OK、

更にジョルジエット様、アメリー様の護衛役の契約が締結してしまったのだ。

そして、グレゴワール様は、「ふたりのうちどちらを選ぶのか」
と思い悩む心の内を見抜き、俺を誠実だと気に入ってくれた。
その上、いろいろアドバイスをしてくれたのである。

グレゴワール様は「話がまとまった」と、家令のセバスチャンを呼んだ。

「何か、御用でしょうか? 閣下」

セバスチャンは速攻で、書斎へ来た。
少し緊張した面持ちであった。

「うむ、セバスチャン。実はな……」

そして、グレゴワール様は、今後、俺ロイク・アルシェが、
イレギュラーなスケジュールで、ジョルジエット様、アメリー様の護衛役を務める事を告げる。

その間、俺はグレゴワール様から渡された護衛役の『契約書』に目を通していた。

内容は先ほど、グレゴワール様がおっしゃった通り、
念の為、コメントの原文ママで記載しておこう。

「……うむ、出勤、退勤は当リヴァロル公爵家にて。勤務場所は当家と王都市内。拘束時間は前日の午後5時から、翌日夕方の5時の24時間。女子騎士をふたりを助手につける。休憩時間は睡眠、トイレ以外は基本なし。日給は金貨500枚。残業代、諸手当有り。3食付き、経費は別途請求OKだ」

ちなみに……
契約書の文面は、全然堅い文面だが、上記のコメントと比べ内容に相違はない。

俺は念の為、契約書を隅から隅まで3度読み返して、不明な部分の確認もした。

……やはり問題はない。

サインをして、グレゴワール様へ戻すと『控え』を渡された。

これで、正式に、ジョルジエット様、アメリー様の護衛役契約が成立だ。

同時に、ジョルジエット様、アメリー様が立ち上がり、ばばばっつと、猛ダッシュ!
長椅子に座っている俺の両脇に来て、がっし!と抱きついて来た。

おいおい、お父様の目前で大丈夫か?
と思ったが……平気みたいだ。

グレゴワール様も、にこにこしてるし。

元日本人の俺には理解しがたいが、コミュニケーションの一環として、
父親の前でも、熱くハグするのが当たり前の文化なのかな?

ジョルジエット様、アメリー様にぎゅうぎゅう抱きつかれ、
サンドイッチの『ぐ』状態にされた俺へ、グレゴワール様は言う。

「で、早速だが! 第一回目の発注をしたい。今から明日の午後5時まで、都合の方はどうだろう?」

おお!
いきなり発注来た!

都合かあ……
一旦、ホテルへ戻って、気持ちを切り替えたがったが、仕方がない。

俺は少し考えて決めた。

「はい。問題ありません。お受け致します」

「うむ! では、ロイク君。君の助手となる、女子騎士ふたりを紹介しよう。元々、そのふたりは、バジルの部下で、ジョルジエットとアメリーの護衛役を務めて貰っている」

「分かりました。お願い致します」

成る程。
俺は休日だけの勤務だが、
女子騎士のふたりは平時も1日中、護衛役を務めているわけだ。

一体、どんな人なんだろうか?

でも、驕り高ぶって助手扱いするのは厳禁。

平民の俺が偉そうに!
とか思われるのは致命的。

スムーズに仕事をする為、
今後、護衛役を務める女子騎士のふたりとは仲良くしたいし、
低姿勢で接するのが賢明だろう。

ここでグレゴワール様は言う。

「良いかな、セバスチャン、ロイク君との契約書の内容をお前も含め、使用人達全員にも周知するように。それと、バジルに、アンヌ、ジュリーと3人一緒で、書斎へ来るよう伝えてくれ」

「はい! 閣下! かしこまりました!」

セバスチャンはびしっと直立不動で敬礼。
すぐ退出して行った。

ええっと……

警護主任騎士のバジルさんが来て、
助手となる、部下のアンヌさん、ジュリーさんを俺に紹介するって事か。

ここで、あ!
と俺は気付いた。

ふたりの女子に抱きつかれた、このままの拘束状態ではまずいと。

主にあたる女子ふたりをべたべたさせて、紹介されるのって……いかがなものか?
俺のファーストインプレッションが最悪だろ。

となれば、急ぎ、拘束の解除をしなければならない。

「ジョルジエット様、アメリー様」

「何でしょう? ロイク様」
「御用がありますか? ロイク様」 

一瞬、伝え方は迷ったが、丁寧にかつ単刀直入がベスト。

「バジルさんと、女子騎士さん達が来ます。ちゃんとあいさつをしたいので、一旦離れて頂けますか?」

俺がお願いする様子を、グレゴワール様がじっと見ていた。

どうなるのか、成り行きを見守っているようだ。

俺もどうなるのか、半信半疑。

嫌だ!とか、このまま! とか言われても不思議ではない。

しかし!
意外な事に!

「分かりました! ロイク様!」
「ロイク様! かしこまりました!」

ジョルジエット様、アメリー様は素直に聞き入れ、
俺が座っている長椅子のやや離れた両隣に、ちゃんと姿勢を正して座ってくれた。

それを見て、グレゴワール様は「うんうん」と満足そうに頷いたのである。
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