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第39話「全て、人外と言われても仕方がない身体能力だ」
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俺は、廃墟と化したオークの巣くう砦へ向け、
足音も無く、弾丸のように走り出した。
スーパーカー並みの脚力。
時速100㎞に達するのが、4秒かからない!
それに走行速度はまだまだ上がる!
そんな確信に心を満たしながら、走っていれば、すぐ後方に魔獣ケルベロスの気配を感じる。
犬なのに、猫のように足音を立てず、俺と同じように、
楽々と時速100㎞超えで走っていた。
やはりレベル60オーバーたる冥界の魔獣、とんでもない奴だ。
当然、俺とケルベロスはあっという間に、砦の正門が見える雑木林に到着。
当然『隠形』と『忍び足』の効果で、気配を消していたから、
正門脇の見張りを始め、オークどもはまだ俺達に気づいていない。
砦の中は、相変わらず静まりかえっていた。
俺は、ケルベロスへ指示を出す。
『ケルベロス。向かって左側奥の石壁が壊れている。そこから侵入し、派手に暴れてくれ。吠えても構わないからな』
『そうか! ならば吠えるが、麻痺には気を付けよ、主』
『え? 麻痺?』
『うむ! 我が本気で放つ咆哮には、レベルが下位なら、人間でも魔物でも不死者でも麻痺の付帯効果がある!』
『成る程。それ、まともに聞くと動けなくなって、同士討ちになるな。俺がその麻痺を防ぐにはどうしたら良い?』
『うむ! 主なら、我が本気で咆哮する前に発する気配で分かるはずだ』
『成る程』
『うむ! その瞬間に己の心を強く持て。人間でいう気合を入れ、ぐっと耐えれば、心身を囚われる事はない』
おいおい……
気合を入れてぐっと耐え、麻痺を防げとか、
前世の社長や部長並みの精神論じゃないか?
俺は苦笑したが……
『どうか、したか、主。我の告げる言葉に、疑問を持っているのを感じたが』
『い、いや! 何でもない。でも気合を入れて、俺は麻痺を防ぐなんて出来るのかなって』
『うむ! 主には刺激に対して、耐性の生成及び無効化の能力がある! 我の咆哮を何度か聞けば、心身に耐性が生成されて、終いには無効化される」
『おいおい、それって、もしや麻痺以外に毒とか、石化とか、呪いとかも対応するのか?』
『無論、その通りだ!』
ええっと。
無論、その通りって……ありがたいけど、やはり凄いな、俺。
まあ、良いや。
自信を持つことは必要だと思うけれど、酔いしれすぎる自画自賛はやめておこう。
……それよりも、作戦続行だ。
『ケルベロス、いろいろアドバイスありがとう! 今後とも宜しく頼むよ』
『うむ、任せておけ』
『では、大回りして、見張りに気付かれぬよう、左奥の壊れた石壁よりそっと侵入、侵入さえしたら、もう遠慮はいらない。中で思う存分に暴れてくれ! 頃合いを見て、俺も突入し、参戦。最後には合流だな』
『うむ! 了解だ!』
ケルベロスは再び、弾丸のように駆けだすと、あっという間に姿を消した。
……やがて、砦の左奥で、ケルベロスが砦内へ侵入した気配が伝わり、
ぎゃあああああああ!!!
ぐおおおおおおおお!!!
がああああああああ!!!
オークどもの断末魔の絶叫が轟き、ケルベロスが咆哮を発する気配も感じた。
事前にアドバイスされていた俺は、ダメージを受けないよう耐える態勢を取った。
瞬間!
うおおおおおおおおおおおんんんん!!!!
大気がびりびり振動するような、怖ろしい咆哮が、砦内へ満ちたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
オークの絶叫、ケルベロスの咆哮と同時に、
砦内の各所から慌てた様子の気配が、数多ケルベロスへ集まって行く……
ケルベロスは立派に、先制攻撃、囮の役目を果たした。
攪乱も上手くやってくれそうだ。
一方、俺の方はと言えば、アドバイスに従い、
ケルベロスの咆哮に事前に備えていたから、ダメージを受けなかった。
という事で、俺は頷くとダッシュし、ケルベロスが向かったのと反対側。
向かって右側の石壁に取り付き、登り始めた。
わずかな手がかり、足がかりで全然OK!
身体がえらく軽い。
するすると、猿のように身軽に登って行く。
先ほど正門上に陣取っていた見張りも居なくなっていた。
石壁上から見やれば……
砦内の本館、兵舎等の出入り口から、
潜んでいたオークどもがわらわらと湧き出るように出現。
続々と、ケルベロスの方へ向かっている。
わらわらと襲いかかるオークどもに、ケルベロスは奮戦。
しかし、苦戦という雰囲気は皆無。
余裕をもって「あしらっている」という様子が伝わって来る。
繰り返すが、この1か月間、身体も徹底的に鍛え、冒険者ギルド総本部の施設、
地形を模した5つの実戦訓練場を借り受け、単独訓練も行っていた。
更に身体能力の限界もいろいろ試している。
高所からの落下緩和を使う高さの限界も。
俺は、石壁の上に立っているが……
高さは15mほど。
飛び降りて着地は可能かって? ……そんなの楽勝。
俺の高所落下の現時点でのリミットは、高さ20mなのである。
高所落下の限界を確かめるには少し苦労した。
いきなりそんな高所から飛び降りるのは、さすがに危険。
だから、3m刻みで少しずつ、距離を高くして行って、試し、到達した結果だ。
良い子は絶対にマネしちゃいけません。
ちなみにジャンプ力は、垂直で10m。
こちらは遠慮なくガンガン試した。
また走り幅跳びでは、20m平均、最高で30m以上。
全て、人外と言われても仕方がない身体能力だ。
オークどもは、ケルベロスに気を取られているか、
『人間』の俺など気にしていないのか、全く注目されない。
それが逆に幸いである。
俺は、登った岩壁から「すたっ」と軽々、地へ降りる。
そして、たったひとりだが、余裕で戦うケルベロスの下へ、
再び、弾丸のように駆け出していたのである。
足音も無く、弾丸のように走り出した。
スーパーカー並みの脚力。
時速100㎞に達するのが、4秒かからない!
それに走行速度はまだまだ上がる!
そんな確信に心を満たしながら、走っていれば、すぐ後方に魔獣ケルベロスの気配を感じる。
犬なのに、猫のように足音を立てず、俺と同じように、
楽々と時速100㎞超えで走っていた。
やはりレベル60オーバーたる冥界の魔獣、とんでもない奴だ。
当然、俺とケルベロスはあっという間に、砦の正門が見える雑木林に到着。
当然『隠形』と『忍び足』の効果で、気配を消していたから、
正門脇の見張りを始め、オークどもはまだ俺達に気づいていない。
砦の中は、相変わらず静まりかえっていた。
俺は、ケルベロスへ指示を出す。
『ケルベロス。向かって左側奥の石壁が壊れている。そこから侵入し、派手に暴れてくれ。吠えても構わないからな』
『そうか! ならば吠えるが、麻痺には気を付けよ、主』
『え? 麻痺?』
『うむ! 我が本気で放つ咆哮には、レベルが下位なら、人間でも魔物でも不死者でも麻痺の付帯効果がある!』
『成る程。それ、まともに聞くと動けなくなって、同士討ちになるな。俺がその麻痺を防ぐにはどうしたら良い?』
『うむ! 主なら、我が本気で咆哮する前に発する気配で分かるはずだ』
『成る程』
『うむ! その瞬間に己の心を強く持て。人間でいう気合を入れ、ぐっと耐えれば、心身を囚われる事はない』
おいおい……
気合を入れてぐっと耐え、麻痺を防げとか、
前世の社長や部長並みの精神論じゃないか?
俺は苦笑したが……
『どうか、したか、主。我の告げる言葉に、疑問を持っているのを感じたが』
『い、いや! 何でもない。でも気合を入れて、俺は麻痺を防ぐなんて出来るのかなって』
『うむ! 主には刺激に対して、耐性の生成及び無効化の能力がある! 我の咆哮を何度か聞けば、心身に耐性が生成されて、終いには無効化される」
『おいおい、それって、もしや麻痺以外に毒とか、石化とか、呪いとかも対応するのか?』
『無論、その通りだ!』
ええっと。
無論、その通りって……ありがたいけど、やはり凄いな、俺。
まあ、良いや。
自信を持つことは必要だと思うけれど、酔いしれすぎる自画自賛はやめておこう。
……それよりも、作戦続行だ。
『ケルベロス、いろいろアドバイスありがとう! 今後とも宜しく頼むよ』
『うむ、任せておけ』
『では、大回りして、見張りに気付かれぬよう、左奥の壊れた石壁よりそっと侵入、侵入さえしたら、もう遠慮はいらない。中で思う存分に暴れてくれ! 頃合いを見て、俺も突入し、参戦。最後には合流だな』
『うむ! 了解だ!』
ケルベロスは再び、弾丸のように駆けだすと、あっという間に姿を消した。
……やがて、砦の左奥で、ケルベロスが砦内へ侵入した気配が伝わり、
ぎゃあああああああ!!!
ぐおおおおおおおお!!!
がああああああああ!!!
オークどもの断末魔の絶叫が轟き、ケルベロスが咆哮を発する気配も感じた。
事前にアドバイスされていた俺は、ダメージを受けないよう耐える態勢を取った。
瞬間!
うおおおおおおおおおおおんんんん!!!!
大気がびりびり振動するような、怖ろしい咆哮が、砦内へ満ちたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
オークの絶叫、ケルベロスの咆哮と同時に、
砦内の各所から慌てた様子の気配が、数多ケルベロスへ集まって行く……
ケルベロスは立派に、先制攻撃、囮の役目を果たした。
攪乱も上手くやってくれそうだ。
一方、俺の方はと言えば、アドバイスに従い、
ケルベロスの咆哮に事前に備えていたから、ダメージを受けなかった。
という事で、俺は頷くとダッシュし、ケルベロスが向かったのと反対側。
向かって右側の石壁に取り付き、登り始めた。
わずかな手がかり、足がかりで全然OK!
身体がえらく軽い。
するすると、猿のように身軽に登って行く。
先ほど正門上に陣取っていた見張りも居なくなっていた。
石壁上から見やれば……
砦内の本館、兵舎等の出入り口から、
潜んでいたオークどもがわらわらと湧き出るように出現。
続々と、ケルベロスの方へ向かっている。
わらわらと襲いかかるオークどもに、ケルベロスは奮戦。
しかし、苦戦という雰囲気は皆無。
余裕をもって「あしらっている」という様子が伝わって来る。
繰り返すが、この1か月間、身体も徹底的に鍛え、冒険者ギルド総本部の施設、
地形を模した5つの実戦訓練場を借り受け、単独訓練も行っていた。
更に身体能力の限界もいろいろ試している。
高所からの落下緩和を使う高さの限界も。
俺は、石壁の上に立っているが……
高さは15mほど。
飛び降りて着地は可能かって? ……そんなの楽勝。
俺の高所落下の現時点でのリミットは、高さ20mなのである。
高所落下の限界を確かめるには少し苦労した。
いきなりそんな高所から飛び降りるのは、さすがに危険。
だから、3m刻みで少しずつ、距離を高くして行って、試し、到達した結果だ。
良い子は絶対にマネしちゃいけません。
ちなみにジャンプ力は、垂直で10m。
こちらは遠慮なくガンガン試した。
また走り幅跳びでは、20m平均、最高で30m以上。
全て、人外と言われても仕方がない身体能力だ。
オークどもは、ケルベロスに気を取られているか、
『人間』の俺など気にしていないのか、全く注目されない。
それが逆に幸いである。
俺は、登った岩壁から「すたっ」と軽々、地へ降りる。
そして、たったひとりだが、余裕で戦うケルベロスの下へ、
再び、弾丸のように駆け出していたのである。
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