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第57話「バスチアン、既に勝負はついた、そろそろ終わりにしろ」
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俺の勘働きが、巨大な気配ともうひとつの気配、
そして、訓練場の正門が開くのを察知した。
……こ、これは!?
この気配は!?
俺のスキル『勘働き』が伝えて来る。
一度、面と向かい会って話しているし間違いない。
クラン、グランシャリオのリーダー、
英雄たるマエストロ、ローラン・ケーリオ様だ!!
そして、プラスアルファみたいな言い方で誠に失礼だが、
魔法使いのクリストフ・エマールさんも一緒だ。
ふたりで馬車の御者台に乗り、
御者をクリスことクリストフさん。
隣にローラン様が座っている。
その気配が、はっきりと分かる。
朝一で、来るとバスチアンさんが言っていたのは本当だった。
まもなくここへやって来るだろう。
そろそろ潮時、『稽古』を終了するタイミング。
しかし!
「おい! 新人1号! まだまだだ! ガンガン行くぞ!」
とか言って、バスチアンさんは、戦闘態勢を崩さない。
え?
さすがにもう幕引きじゃないっすか?
ローラン様とクリスさん、来ちゃいますよ?
グランシャリオでシーフ職も担うバスチアンさんは、
当然、ローラン様とクリスの到着を感知しているはず。
なのに、稽古と言う名の戦いをやめようとしない。
「おらおらおらあっっっ!!」
更に気合を入れ、攻撃を仕掛けて来るバスチアンさん。
「このまま、ルーキーの勝ち逃げは許さねえぞ! 俺のプライドにかけてなあ!」
おいおい、勝ち逃げって?
なんという負けず嫌い!
そもそも、これは稽古でしょ?
という反論は一切無効の雰囲気。
……仕方がない。
このまま稽古……否! 戦闘を継続するしかない。
「了解です! お相手します!」
ヒートアップするバスチアンさんだが、
俺はペースを全く乱さず戦法を変えず、ヒットアンドアウェイ攻撃を続行。
そもそも、単に強さ、経験のみでは、俺はバスチアンさんに敵わない。
勘働きのスキル、そして若さで、バスチアンさんに立ち向かい、
互角以上に戦っている。
加えて、熱くなって、気持ちをあらわにするバスチアンさんの波動も、
意思がしっかり把握出来、行動を先読みしやすい。
落ち着け、俺。
焦らず、このままのペースで行けば、必ず勝てるぞ。
確信に近い思いが俺の心を満たして行く。
こうなると俺の気持ちに余裕が出て来る。
どっ!
びりびりびりっっ!
「ぐわう!」
びしっ!
びりびりびりっっ!
「がっ!」
どご!
びりびりびりっっ!
「ぐお!」
余裕どころか……
どんどん一方的に、俺が一撃を入れるようになって来た。
剣技、身体能力云々の差はあるのだが、俺の勘働きがはまり過ぎ、
行動が完全に予測可能なので、正解集を見ながら試験を受けているようなものだ。
こうなると申し訳ないが、バスチアンさんが俺に勝てるわけがない。
とここで、遂にロッジへ、ローラン様とクリスさんがやって来た。
ぱかぱかぱか、がらがらがらと馬車の音がして……
ローラン様だけが「ぱっ」と降りたのが分かる。
御者のクリスさんは、そのままロッジに併設した馬車の駐車場&厩舎へ行くようだ。
ローラン様を残し、馬車は離れて行く。
物音と気配で、俺たちが居るのに気づいたのだろう。
ローラン様が、ミニ訓練場へ来る気配が。
すたすたすたと歩いて来るローラン様。
「ああ、ローラン様!」
現れたローラン様を見て、驚き声を上げるフェルナンさんを手で制し、
「ほう! これはこれは、面白い事になっているようだ」
戦う俺とバスチアンさんを、興味深そうに眺めて、腕組みをし、
柔らかな笑みを浮かべたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
腕組みをするローラン様がじっと見守る中、やがてクリスさんもやってきて、
俺とバスチアンさんの戦いは継続された。
都合、3人の『観衆』の視線を浴びつつ、俺とバスチアンさんは、ひたすら戦う。
どっ!
びりびりびりっっ!
「ぐわう!」
びしっ!
びりびりびりっっ!
「がっ!」
どご!
びりびりびりっっ!
「ぐお!」
ひたすらこの繰り返し。
更に更に一方的となって来た。
先ほどから、ダメージを受けて続けているバスチアンさんだが……
やはり、超負けず嫌い、全く戦いをやめようとしない。
何が何でも!! 意地でも勝つ!!
という強い執念の波動も感じる。
それを見たクリスさんが、
「マエストロ、そろそろ……」
と、ローラン様へささやくのが聞こえた。
「うむ」
対して短く答え、頷いたローラン様は、きっぱり言い放つ。
「バスチアン、既に勝負はついた、そろそろ終わりにしろ」
低く重い声。
言い訳無用、有無を言わさないという雰囲気。
すると!
まさに、鶴の一声のことわざ通り!
「は! マエストロ!」
バスチアンさんは、あっさりと怒り&戦闘モードを解除。
構えを解き、鞘へ納剣。
びし!と直立不動となって、ローラン様へ向き直り、
「失礼いたしました!」
と、深くお辞儀をした。
おお!
さすがのバスチアンさんでも、クランリーダーたる、
マエストロ、ローラン様には絶対の服従なんだ。
少し驚き、ついその様子をぼ~っと見ていた俺であったが、
ハッと我に返り……
「お、お、おはようございます! ローラン様! クリスさん!」
大いに噛んでしまっが、姿勢を正した上で、何とか、
ふたりへあいさつする事が出来たのである。
そして、訓練場の正門が開くのを察知した。
……こ、これは!?
この気配は!?
俺のスキル『勘働き』が伝えて来る。
一度、面と向かい会って話しているし間違いない。
クラン、グランシャリオのリーダー、
英雄たるマエストロ、ローラン・ケーリオ様だ!!
そして、プラスアルファみたいな言い方で誠に失礼だが、
魔法使いのクリストフ・エマールさんも一緒だ。
ふたりで馬車の御者台に乗り、
御者をクリスことクリストフさん。
隣にローラン様が座っている。
その気配が、はっきりと分かる。
朝一で、来るとバスチアンさんが言っていたのは本当だった。
まもなくここへやって来るだろう。
そろそろ潮時、『稽古』を終了するタイミング。
しかし!
「おい! 新人1号! まだまだだ! ガンガン行くぞ!」
とか言って、バスチアンさんは、戦闘態勢を崩さない。
え?
さすがにもう幕引きじゃないっすか?
ローラン様とクリスさん、来ちゃいますよ?
グランシャリオでシーフ職も担うバスチアンさんは、
当然、ローラン様とクリスの到着を感知しているはず。
なのに、稽古と言う名の戦いをやめようとしない。
「おらおらおらあっっっ!!」
更に気合を入れ、攻撃を仕掛けて来るバスチアンさん。
「このまま、ルーキーの勝ち逃げは許さねえぞ! 俺のプライドにかけてなあ!」
おいおい、勝ち逃げって?
なんという負けず嫌い!
そもそも、これは稽古でしょ?
という反論は一切無効の雰囲気。
……仕方がない。
このまま稽古……否! 戦闘を継続するしかない。
「了解です! お相手します!」
ヒートアップするバスチアンさんだが、
俺はペースを全く乱さず戦法を変えず、ヒットアンドアウェイ攻撃を続行。
そもそも、単に強さ、経験のみでは、俺はバスチアンさんに敵わない。
勘働きのスキル、そして若さで、バスチアンさんに立ち向かい、
互角以上に戦っている。
加えて、熱くなって、気持ちをあらわにするバスチアンさんの波動も、
意思がしっかり把握出来、行動を先読みしやすい。
落ち着け、俺。
焦らず、このままのペースで行けば、必ず勝てるぞ。
確信に近い思いが俺の心を満たして行く。
こうなると俺の気持ちに余裕が出て来る。
どっ!
びりびりびりっっ!
「ぐわう!」
びしっ!
びりびりびりっっ!
「がっ!」
どご!
びりびりびりっっ!
「ぐお!」
余裕どころか……
どんどん一方的に、俺が一撃を入れるようになって来た。
剣技、身体能力云々の差はあるのだが、俺の勘働きがはまり過ぎ、
行動が完全に予測可能なので、正解集を見ながら試験を受けているようなものだ。
こうなると申し訳ないが、バスチアンさんが俺に勝てるわけがない。
とここで、遂にロッジへ、ローラン様とクリスさんがやって来た。
ぱかぱかぱか、がらがらがらと馬車の音がして……
ローラン様だけが「ぱっ」と降りたのが分かる。
御者のクリスさんは、そのままロッジに併設した馬車の駐車場&厩舎へ行くようだ。
ローラン様を残し、馬車は離れて行く。
物音と気配で、俺たちが居るのに気づいたのだろう。
ローラン様が、ミニ訓練場へ来る気配が。
すたすたすたと歩いて来るローラン様。
「ああ、ローラン様!」
現れたローラン様を見て、驚き声を上げるフェルナンさんを手で制し、
「ほう! これはこれは、面白い事になっているようだ」
戦う俺とバスチアンさんを、興味深そうに眺めて、腕組みをし、
柔らかな笑みを浮かべたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
腕組みをするローラン様がじっと見守る中、やがてクリスさんもやってきて、
俺とバスチアンさんの戦いは継続された。
都合、3人の『観衆』の視線を浴びつつ、俺とバスチアンさんは、ひたすら戦う。
どっ!
びりびりびりっっ!
「ぐわう!」
びしっ!
びりびりびりっっ!
「がっ!」
どご!
びりびりびりっっ!
「ぐお!」
ひたすらこの繰り返し。
更に更に一方的となって来た。
先ほどから、ダメージを受けて続けているバスチアンさんだが……
やはり、超負けず嫌い、全く戦いをやめようとしない。
何が何でも!! 意地でも勝つ!!
という強い執念の波動も感じる。
それを見たクリスさんが、
「マエストロ、そろそろ……」
と、ローラン様へささやくのが聞こえた。
「うむ」
対して短く答え、頷いたローラン様は、きっぱり言い放つ。
「バスチアン、既に勝負はついた、そろそろ終わりにしろ」
低く重い声。
言い訳無用、有無を言わさないという雰囲気。
すると!
まさに、鶴の一声のことわざ通り!
「は! マエストロ!」
バスチアンさんは、あっさりと怒り&戦闘モードを解除。
構えを解き、鞘へ納剣。
びし!と直立不動となって、ローラン様へ向き直り、
「失礼いたしました!」
と、深くお辞儀をした。
おお!
さすがのバスチアンさんでも、クランリーダーたる、
マエストロ、ローラン様には絶対の服従なんだ。
少し驚き、ついその様子をぼ~っと見ていた俺であったが、
ハッと我に返り……
「お、お、おはようございます! ローラン様! クリスさん!」
大いに噛んでしまっが、姿勢を正した上で、何とか、
ふたりへあいさつする事が出来たのである。
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