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第45話「シャルロットさんの言う通り、俺は彼女を何かあれば、励ましていた気がする」

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俺はシャルロットさんを、しっかりおぶり直すと、

「では、お先に失礼します」

と言い、軽快に走り出した。

ここは、どこかへ寄り道してシャルロットさんとデートしないの?
彼女をお持ち帰りしないの?

と突っ込まれそうだが、ふたりっきりで、どこかにしけこむなんて、しない。

俺は健康な16歳男子だが、自制&我慢。

そもそも仕事中だし、公私混同はいかん。

いくら面白おかしく、公認カップルのように、
いじられているからと言っても限度がある。

加えて、時間を置かず、
バスチアンさん、セレスさん、フェルナンさんが戻って来るもの。

で、あれば一択。

一足先にロッジへ戻り、3人の帰りを待ちながら、
ゆっくりいちゃしている方が賢い。
当然、健全な形でね。

元々俺は、いちゃしなくとも、楽しく話しているだけで満足。
それでノープロブレムだ。

シャルロットさんをしっかり、おんぶし、
ロッジへ帰還すべく、たっ、たっ、たっ、たっ、と軽快に走る。

「うふふふふ♡」

さっきから、俺の背中で、シャルロットさんは、ず~っと笑っている。

厳しい訓練に弱音を吐き、「泣いていたなんとかが、もう笑った」じゃないけど、
もの凄く機嫌が良い。

こういう時、どうして? 機嫌が良いの? 
なんてシャルロットさんへ聞くのは野暮。

だから別の話題を振る事にした。

話す際、舌をかむと困るので、ペースダウンし、本当にゆっくりと走る。
歩きに毛が生えたようなものだ。
すた、すた、すた、になっている。

別の話題は、少し考えた末に、
俺はシャルロットさんの気持ちを再確認する事にした。

今の状況で、破局するとは思えないが、
愛の言質げんちを取っておきたいという、
彼女歴居ない16年ならではの、ヘタレチキンな不安もあった。

なので俺は言う。

「なあシャルロット、話がある」

「話? 何? エル君」

「うん、フェルナンさんに聞かれたんだ」

「へえ? フェルナンさんにね? ふ~ん、それで?」

フェルナンさんの名を聞き、シャルロットさんは興味がなさそうにトーンダウン。

とても分かりやすいけど、次の質問はどうだろう?

「うん、エルヴェ君はシャルロットさんと凄く仲が良いけど、付き合うつもりかって」

「え!? そ、それで!? エ、エル君は!! な、何て答えたの?」

いきなり、豹変。
すっげえ喰いつき。

俺の答えは、シャルロットさんにとって、
最重要と言えるかもしれないから無理もない。
まあ、それも単なる自惚れだけど。

ひと呼吸置き、俺は質問に答える。

「ああ、この研修が終わり、シャルロットさんの気持ちが変わらなければ、付き合うつもりだと答えたよ」

俺がそう言うと、シャルロットさんは、俺の肩をぎゅ!とつかみ、

「じゃあ、決まり!!」

と叫んだ。そして、

「エル君に対して、私の気持ちが変わるわけない! 研修が終わってから、なんて言わずに、この場で決めよう! 彼女、彼氏確定だよ!」

と、きっぱり言い切った。

対して俺も、

「ありがとう! シャルロット! 必ずお前を大事にする! これからよろしく頼むよ!」

と言えば、

「エル君!! だいしゅき!! だいしゅき!! だいしゅき!! こちらこそよろしくね!!」

と大きな声で叫び、再び俺の肩を、 さっきより力を込め、
ぎゅ!ぎゅ!ぎゅ!とつかんだのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

俺とシャルロットさんは、いちゃラブモードで帰って来た。

当然、ロッジには誰も居ない。

帰って来て、今のうち、という事でだいしゅきハグをたっぷり。

だいしゅきハグで盛り上がったので、
記念すべき、人生初のファーストキスも熱~く済ませておいた。
まあ、これくらいはギリギリ許されるレベルでしょ。

でも、何という想定外な展開。

まさかクランの研修へ来て、可愛い彼女が出来るとは思わなかった。

よし!
これで、遂に!遂に!遂に!俺にも人生初の彼女が出来た!
彼女居ない歴16年に終止符をうった!

……そう思うと、ひどく感慨深い。

ミランダには、

「あんたみたいなさえない屑男は、絶対に彼女なんか出来ないわ。私が保証する! 100%一生彼女なしよ!」

と散々毒舌を吐かれたから、
「何が100%一生彼女なしだ! どうだあ!」と、ざまあ、してやりたい。

先日、熊の襲撃もあったしと、
勘働き――索敵を継続させながら、辺りを探ると

……まだ、バスチアンさん、セレスさん、フェルナンさんは少し離れた場所に居て、
しばらくは戻って来ないみたい。
 
ん?
もしかしたら、俺とシャルロットさんに気を利かせてる?

そんなわけないか。

まあ、良い。
今のうちに、い~っぱい話しておこう。

ハグを解いた俺とシャルロットさんは、ロッジの前でいろいろとおしゃべりする。
ずっとハグしていたかったが、さすがに我慢した。

「今日の研修はなかなか、だったなあ」

俺が言えば、シャルロットさんは同意して頷く。

「うん! 昨日も今日もすっごくきつかった。でも……」

「でも?」

「今日の訓練場5周の持久走の時は、エル君が途中からず~っと伴走してくれたし、さっきのほふく前進の時は、こまめに振り向いて、励ましてくれた。エル君の、がんばれ!を、私、い~っぱい貰ったよ♡」

シャルロットさんの言う通り、俺は彼女を何かあれば、励ましていた気がする。

まあ、正直、声掛けくらいで、大した事をしていないが。

「あはは、俺はそれくらいしか出来ないから」

「ううん。エル君の励ましはね、くじけそうになる私を何度も何度も救ってくれた! すっごく嬉しかった! 初日から今日まで、いろいろ減点はされたけど、何とか乗り切った。全部エル君のお陰だよ!」

「いやいや、乗り切れたのはシャルロットが凄~く頑張ったからだよ」

などと、楽しく話していたら……
あっという間にタイムアップ。

バスチアンさん、セレスさん、フェルナンさんの3人が、
ロッジへ帰還したのである。
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