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第143話「再会」
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ここは謎の存在が統治する地下王国?
闘技場らしき場所である……
人喰いの迷宮最下層10階から、ダン達は転移していた。
転移したのは、ダンの取り交わした約束が、ちゃんと守られたから。
そう!
リストマッティは、約束通り現れたのだ。
周囲から止められたのか……
さすがに、単身ではなかったが。
独特なデザインの法衣をまとったリストマッティ、配下のラッセ、そして護衛と思しき10名の戦士が出張っていた。
ダン達の方を向く、リストマッティの顔は見えない。
ラッセ共々、法衣についた頭衣で顔をすっぽり隠している。
一方護衛達はといえば、こちらも独特なデザインの革鎧に身を包んでいた。
フルフェイスの兜で頭部を覆っている為、リストマッティ同様、正体は分からない。
しかし……
彼等の法衣、武器装備、そしてこの闘技場のデザインを見て、エリンは改めて確信した。
全てに見覚えがある。
否、見覚えどころではない。
ずっと慣れ親しんで来たダークエルフ、つまりデックアールヴ族の様式だと。
更に……見覚えがある者達が居た。
まるでリストマッティ達を守るように、ダン達の目の前には、探していた冒険者5名が勢ぞろいしている。
まず、クラン炎の4名……
リーダーの戦士チャーリー・アトキンズ、シーフのアーロン・エイベル、僧侶のコンラッド・ウォール、そして魔法使いのニック・メラーズ。
エリンが、冒険者ギルドで会ったランクCの冒険者達であった。
そのチャーリーは良く言えば明るい、はっきり言えば……
相変わらず、能天気である……
「おお! ダン、どうしてここへ? おいおい! 何で、エリンちゃんまで居るの?」
チャーリーの言葉には、全く緊迫感がない。
囚われて、窮地に陥ったという表情ではない。
それどころか、まるで久々に会った旧友を認めるように、笑顔で手を振っていた。
傍らでは『常識人』らしい、アーロン達他のクランメンバーは苦笑し、肩をすくめていた。
「…………」
こちらも、無言で苦笑いするダン。
そしてエリンはというと、はっきり言って……怒っていた。
「どうして、ここ? って……もう! 何? こっちは凄く心配して来たのに……チャーリーったら……呆れたよぉ!」
「え? 彼等が、クラン炎?」
ヴィリヤも、違和感を覚えていた。
不思議な事に、囚われた?冒険者達が、こちらへ助けを求める様子がない。
謎の存在により、無理やり「拉致された!」という雰囲気ではないからだ。
「お~い! ダンなんか、どうでも良いけどさぁ。エリンちゃん、よく来たねぇ! 会いたかったよぉ」
チャーリーが叫ぶと、エリンが、「きっ!」と睨む。
そして、つかつかと歩いて行く。
これは、「またも」という感じだ。
やがて起こる事を、チャーリー以外のクランメンバーは分かっていた。
前回同様、気付かないのは、チャーリーだけなのである。
「へ? 何?」
エリンから独特の『殺気』を感じ、護衛の戦士達が身構えるが、リストマッティが手を挙げ、制止した。
そうこうしている間に、チャーリーの真ん前に、エリンが立った。
その瞬間!
びった~~ん!!!
「ぎゃうっ!」
やはり、初めて出会った時と同じであった。
エリンの渾身のびんたを受け、チャーリーは軽々と吹っ飛んでいたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ぎゃはははは!」
「相変わらず、ばっかでぇ~」
「永久に間抜け~」
一度ならず二度もエリンのびんたを喰らい……
クランの仲間から、またも笑いものになっている、チャーリー。
行方不明になった自分達を心配し、危険を冒し、ここまで来てくれたのに……
場の空気を全く読まない為、エリンからお仕置きされてしまったのだ。
そして、
「わ、悪い……本当に。俺達、無事だよ、この通り」
今やチャーリーは平謝りだ。
両手を合わせて、ひたすら頭を下げていた。
何故なら、びんたをしたエリンが、大粒の涙を流しているからである。
「心配したんだよ、凄く!」
思わず叩いてしまったが……
エリンは、本当に嬉しかった。
自分を仲間だと言ってくれた、チャーリー達が生きていてくれた事に。
父と仲間をアスモデウスに惨殺され、心に刻まれた喪失感を、もう味わいたくないのだ。
「エリンちゃん! あ、ありがとう!」
「ううん! もういいの。チャーリー達が生きていて、本当に良かったよぉ!」
一方……
再会を喜ぶエリンの傍らで、ダンはチャーリー達の様子を見てすぐ分かった。
力づくでさらわれたのは勿論、洗脳されている様子もない。
そしてダンも、エリン同様に気付いていた。
悪魔王アスモデウスを倒し、エリンを助けた際、地下で目にした様々な建築的仕様を覚えていたから。
そう、今ダン達が居る地下世界は、エリンが暮らしていたダークエルフの国と全く同じなのだ。
「貴方が……ダンさんですね」
頃合いと見たのか、今迄控えていた、ひとりの冒険者が進み出た。
若い男である。
ほぼ少年と言って良い。
まだ年齢は、20歳に達していないだろう。
初対面なのに、ダン達は全くそんな気がしない。
「チャーリーさん達から聞きました。ニーナを、妹の危機を救って頂いたそうで」
冒険者から問われ、ダンは、首を振った。
「いや、大したことじゃない。じゃあ、貴方がルネさんか?」
「はい! 僕がニーナの兄、ルネです」
ニーナに酷似した顔立ちを、嬉しそうにほころばせたのは……
死んだと言われていた、彼女の兄……ルネだったのである。
闘技場らしき場所である……
人喰いの迷宮最下層10階から、ダン達は転移していた。
転移したのは、ダンの取り交わした約束が、ちゃんと守られたから。
そう!
リストマッティは、約束通り現れたのだ。
周囲から止められたのか……
さすがに、単身ではなかったが。
独特なデザインの法衣をまとったリストマッティ、配下のラッセ、そして護衛と思しき10名の戦士が出張っていた。
ダン達の方を向く、リストマッティの顔は見えない。
ラッセ共々、法衣についた頭衣で顔をすっぽり隠している。
一方護衛達はといえば、こちらも独特なデザインの革鎧に身を包んでいた。
フルフェイスの兜で頭部を覆っている為、リストマッティ同様、正体は分からない。
しかし……
彼等の法衣、武器装備、そしてこの闘技場のデザインを見て、エリンは改めて確信した。
全てに見覚えがある。
否、見覚えどころではない。
ずっと慣れ親しんで来たダークエルフ、つまりデックアールヴ族の様式だと。
更に……見覚えがある者達が居た。
まるでリストマッティ達を守るように、ダン達の目の前には、探していた冒険者5名が勢ぞろいしている。
まず、クラン炎の4名……
リーダーの戦士チャーリー・アトキンズ、シーフのアーロン・エイベル、僧侶のコンラッド・ウォール、そして魔法使いのニック・メラーズ。
エリンが、冒険者ギルドで会ったランクCの冒険者達であった。
そのチャーリーは良く言えば明るい、はっきり言えば……
相変わらず、能天気である……
「おお! ダン、どうしてここへ? おいおい! 何で、エリンちゃんまで居るの?」
チャーリーの言葉には、全く緊迫感がない。
囚われて、窮地に陥ったという表情ではない。
それどころか、まるで久々に会った旧友を認めるように、笑顔で手を振っていた。
傍らでは『常識人』らしい、アーロン達他のクランメンバーは苦笑し、肩をすくめていた。
「…………」
こちらも、無言で苦笑いするダン。
そしてエリンはというと、はっきり言って……怒っていた。
「どうして、ここ? って……もう! 何? こっちは凄く心配して来たのに……チャーリーったら……呆れたよぉ!」
「え? 彼等が、クラン炎?」
ヴィリヤも、違和感を覚えていた。
不思議な事に、囚われた?冒険者達が、こちらへ助けを求める様子がない。
謎の存在により、無理やり「拉致された!」という雰囲気ではないからだ。
「お~い! ダンなんか、どうでも良いけどさぁ。エリンちゃん、よく来たねぇ! 会いたかったよぉ」
チャーリーが叫ぶと、エリンが、「きっ!」と睨む。
そして、つかつかと歩いて行く。
これは、「またも」という感じだ。
やがて起こる事を、チャーリー以外のクランメンバーは分かっていた。
前回同様、気付かないのは、チャーリーだけなのである。
「へ? 何?」
エリンから独特の『殺気』を感じ、護衛の戦士達が身構えるが、リストマッティが手を挙げ、制止した。
そうこうしている間に、チャーリーの真ん前に、エリンが立った。
その瞬間!
びった~~ん!!!
「ぎゃうっ!」
やはり、初めて出会った時と同じであった。
エリンの渾身のびんたを受け、チャーリーは軽々と吹っ飛んでいたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ぎゃはははは!」
「相変わらず、ばっかでぇ~」
「永久に間抜け~」
一度ならず二度もエリンのびんたを喰らい……
クランの仲間から、またも笑いものになっている、チャーリー。
行方不明になった自分達を心配し、危険を冒し、ここまで来てくれたのに……
場の空気を全く読まない為、エリンからお仕置きされてしまったのだ。
そして、
「わ、悪い……本当に。俺達、無事だよ、この通り」
今やチャーリーは平謝りだ。
両手を合わせて、ひたすら頭を下げていた。
何故なら、びんたをしたエリンが、大粒の涙を流しているからである。
「心配したんだよ、凄く!」
思わず叩いてしまったが……
エリンは、本当に嬉しかった。
自分を仲間だと言ってくれた、チャーリー達が生きていてくれた事に。
父と仲間をアスモデウスに惨殺され、心に刻まれた喪失感を、もう味わいたくないのだ。
「エリンちゃん! あ、ありがとう!」
「ううん! もういいの。チャーリー達が生きていて、本当に良かったよぉ!」
一方……
再会を喜ぶエリンの傍らで、ダンはチャーリー達の様子を見てすぐ分かった。
力づくでさらわれたのは勿論、洗脳されている様子もない。
そしてダンも、エリン同様に気付いていた。
悪魔王アスモデウスを倒し、エリンを助けた際、地下で目にした様々な建築的仕様を覚えていたから。
そう、今ダン達が居る地下世界は、エリンが暮らしていたダークエルフの国と全く同じなのだ。
「貴方が……ダンさんですね」
頃合いと見たのか、今迄控えていた、ひとりの冒険者が進み出た。
若い男である。
ほぼ少年と言って良い。
まだ年齢は、20歳に達していないだろう。
初対面なのに、ダン達は全くそんな気がしない。
「チャーリーさん達から聞きました。ニーナを、妹の危機を救って頂いたそうで」
冒険者から問われ、ダンは、首を振った。
「いや、大したことじゃない。じゃあ、貴方がルネさんか?」
「はい! 僕がニーナの兄、ルネです」
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