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第202話「美少女悪魔軍団出現?」

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 邪神スパイラル様からお告げのあった、悪魔王国ディアボルスの危機。
 早速、緊急家族会議が開かれた……

 狭い大空亭の食堂において「ぎゅうぎゅう状態」で話し合いは行われたが、話はすぐにまとまった。
 俺にはこれから何が起ころうとしているか、大体予想がついていたからだ。
 
 それは、ズバリ!
 宰相ベリアルと親衛隊隊長エリゴスの軍事クーデター!
 イザベラの父、悪魔王アルフレードルを倒しての王国乗っ取り……
 それ以外は、絶対にありえない。

 どちらにしてもこの会議が終わったら、俺はすぐに悪魔王国へ向かうつもりだ。
 会議により家族間で情報共有は出来たから、問題は誰が魔界へ赴くかだ。

「はい!」「はい!」「はい!」
「はい!」「はい!」「はい!」

 当事者のイザベラは勿論だが、ジュリア以下嫁ズ全てが手を挙げたのには正直驚いた。
 だって魔界だよ、魔界!
 怖ろしい? 悪魔達の居る魔界だよ。
 魔界へ行った経験のあるジュリアやソフィアは良いとして、他の嫁ズは怖くないのだろうか?

 ここで目を輝かせ、真っ先に魔界行きを希望したのはソフィアである。

わらわはな、数千年も眠っていて虚しい人生を送って来た。旦那様に助けて貰い、命は限りあるものとなったが、ぜひ世界各地をめぐりたい。確かに1回行ってはいるが、魔界などはそう滅多に行けないじゃろう」

「おいおい、お前はもう自動人形オートマタじゃあないぞ。生身の身体で怖くないのか、ソフィア?」

「なんの! どうせ旦那様も皆も一緒じゃろ? 全然怖くなどない」

 次に「はいっ」と手をあげたのはアマンダである。

「旦那様が行かれるのなら、私は必ずお供しますし、絶対お役に立ちますよ。それに魔界……行ってみたいわ」

「おお、アマンダ……凄い気合だなぁ」

「ふふふ、貴方の妻ですもの、当然です!」

 こうなると最強の妹キャラも登場だ。

「お兄ちゃわん! 私もアマンダ姉に負けてはいられないわ! 絶対に離れないからね」

「わわわ、分かった」

 と、なれば、

「何も仰らないで、ハンナの同行を黙って許して下さい、ご主人様マスター

「りょ、了解!」

 最後に『締めた』のは、嫁ズの纏め役であるジュリアである。

「イザベラ、今度は私が貴女を助ける番だよ。全員で悪い奴をやっつけに行こう」

「ありがとう、ジュリア」

 ジュリアの呼び掛けに、イザベラが嬉しそうに微笑む。
 俺の嫁同士になってから、ジュリアとイザベラは価値観の相違により色々と衝突もあったが、今や姉妹以上の間柄と言えるだろう。

「ははは、魔界とは面白そうだな。儂も当然行くぞ」

 嫁ズの言葉を黙って聞いていたシュルヴェステル様までも、何と魔界行きを主張した。
 お祖父さんっ子のフレデリカが喜んだのは当然である。

「やった~! お祖父様、大好きぃ!」

 こうなるとエドヴァルド父も黙ってはいられない。
 というより、長幼の序でシュルヴェステルが魔界行きを言い出すのを待っていた節もあった。

「当然俺も行こう、今回の件でアモン殿には借りがある」

「エドヴァルド様!」

 部下の竜神族が一生懸命に止めるが、エドヴァルド父は聞き入れなかった。

「ここで行かなければ男ではない。それに娘が行くというのに、父が指をくわえて見ているなどありえないだろうよ」

 エドヴァルド父は、アモンに手を差し出した。
 そっぽを向いてアモンは鼻を鳴らすが、実は嬉しいのが俺にはよ~く分かった。
 やがてアモンはぎこちなく手を差し出し、ふたりはがっちり握手したのである。

 俺とはまた違う友情が、竜神王と悪魔侯爵の間に生まれた瞬間であった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 タトラ村から最寄の魔界への転移門は俺達が魔界入りしたジェトレ村附近の門である。
 しかしまともにジェトレまで行ったら日数がかかってしまう。
 だから、タトラ村の転移門から一旦、ゲネシスに戻りゲネシスからジェトレ村への転移門で 魔界への転移門まで移動する。
 まるで電車の乗り換えだが、まともに歩いて行くより断然早い。

 転移門を使う前にアモンからお達しがあった。
 アモンは、かつて俺達に言ったのと同じ事を繰り返した。

「魔界では悪魔以外に身体が順応しない者が多々居る。その為に魔法で悪魔化して貰う。我々が人間界では身体が順応しない為に人化するのと同じだ」

「アモン、今回は俺、ぜひ悪魔化してみたい! 何か恰好良さそうじゃん」

 俺がアモンの言葉が終わらない内に口火を切ると、次々に各々の手が挙がって結局は全員が手を挙げたのである。

「はぁ? 全員はありえないだろう? 少なくともトールやアールヴのソウェルには不要の筈だ」

「いいじゃんよぉ、ケチな事言わないでさぁ」

 渋い顔をするアモンを俺がケチ呼ばわりすると、すかさず追随したのはシュルヴェステル様だ。

「そうだ! その通り! 儂もたまには悪魔になりたいものだ」

 厳かで気高いアールヴ一族の長ソウェル、そんなイメージはどこへ行ったやら。
 目の前のシュルヴェステル様は、まるで子供のように笑っていた。

「そうよ」
「いいじゃない」
「せこい!」

 嫁ズからも援護の声が飛び、激しい攻撃に耐え切れなくなったアモン。
 遂に苦虫を噛み潰したような表情で、仕方なく頷いたのである。

 その結果……

 アモンの魔法で悪魔化した嫁ズといったら……
 俺でも惚れ直すくらい、その可憐さは悶絶ものであった。
 
 いつもの嫁ズとひと味違う、ちょっとやんちゃなワイルド系美少女軍団という趣きなのだ。
 こうなると早速、嫁ズ同士での『チェック』が始まった。
 ここが良い、こうした方が良い等々、言葉が飛び交う。
 ヘアスタイルとメイクチェック、そしてファッションバランスなどの身だしなみにも気合が入っているようだ。
  
 そして意外にもアモンは……
 仕方なく対応したという面持ちで不機嫌そうに頷いていたが、口元が緩んでいる。
 実は好みの女悪魔が勢揃いだという気持ちがありありだ。
 ホント、この人、いやこの悪魔は奥さん貰ってから変わった。
 強面兄貴が大喜びして、ドキドキウハウハしていたのは隠しようがない。

 これから戦いに赴くのだが、不謹慎と言うより、これだけ余裕があれば大丈夫。
 俺は遠き魔界へと、思いを馳せていたのである。
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