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第159話「従士が欲しいっ! ……だけど」
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ペルデレ迷宮地下3階に降りた、ワクワク感一杯な俺。
何故なら、いよいよ憧れの召喚魔法を使って我が忠実なる従士をゲットだから。
邪神様に改造された俺に召喚魔法は授けられなかった。
というか魔法に関してはゼロに近い能力。
相変わらずしょぼい生活魔法しか使えない。
その代わりに違うチートはいろいろ貰えたけど、魔法に関しては高望みせずに来た。
だけどラッキーな事が起こった。
イザベラの姉レイラの夫、義理の兄となった悪魔エフィムが魔道具『召喚の指輪』授けてくれたのである。
エフィムは使用マニュアルを次のように述べた。
『まず指輪に魔力を込める。そして戦った敵に勝って止めを刺す前に支配と唱えて成功すれば、指輪内に封じ込める事が出来るぞ。なおかつ10体迄、召喚対象に出来るのだ』
おお! 感動した。
これぞ、まさしく古の王が使った悪魔や魔物を使役する伝説の指輪。
何という中二病的な素晴らしいアイテムだろうか!
この俺が何と憧れの召喚士になれるのである。
それを……いよいよ使うのだ。
だが、今の俺はクランリーダー。
仲間を差し置いて目立ち過ぎるスタンドプレーは厳禁。
その為無茶は出来ないが、新婚のアマンダ辺りには恰好良い所を見せておきたいのは本音である。
よっし、早速、ファースト従士ケルベロスを召喚だ。
「じゃあ、皆行くぜっ! ケルベロス! 出でよっ!」
指輪の力は期待通り、絶大だった。
古のソロモン王の指輪に匹敵するというスグレモノ。
魔力波が立ち昇って巨大な影が現れたのだ。
おお、感動!
身体が打ち震える。
大袈裟じゃなくて、これ本当。
中二病全開の俺は、ずっと召喚の言葉を言ってみたかった。
現れたケルベロスは3つの首を振りたて、堂々たる体躯、尾は毒蛇。
すっげぇ頼もしい!
「う? へ、蛇? トール……ちょっと良い?」
青ざめたジュリアが挙手。
意見が出されてしまう。
「あのさ、悪いけどあの子擬態させてくれる?」
「へ?」
「なるべく可愛いのが良いわ。ねぇ頼んでみてよ、従士様へ」
すると、
「そうだね、私はジュリアに賛成! 可愛いのが良い」
「妾《わらわ》もじゃ」
「じゃ、じゃあ、私も……御免なさい、旦那様」
ああ……嫁ズ全員の希望で、ケルベロスの見た目をシベリアンハスキーへ変更。
これはこれで精悍な感じだが……
本来の姿に比べてスケールダウンした感じで、ちょっちガッカリ。
でもケルベロスは元気だ。
俺のやる気が乗り移ったように気合が入っていた。
怖い顔をして唸ってる。
こうなったらすぐ実戦投入。
頼もしい盾役とし、先導させて進んで行く。
ああ、感動。
もろあのゲームそのもの。
荒廃した悪魔世界を行く主人公みたい。
少し歩くと早速敵が襲って来た。
即座にチェック。
ちなみに地下3階では、魔物のレベルと出現の頻度が格段に上がるらしい。
フレデリカのクラン、スペルビアも当然魔物を倒したのであろうが、それ以上に際限なく湧き出て来るようであった。
だが!
待てども待てども出現したのは……
俺の好みに合わない、召喚対象にはならないものばかりだった。
巨大蟻《ジャイアントアント》、巨大蟷螂《ジャイアントマンティス》、巨大甲虫《ジャイアントビートル》、巨大蜘蛛《ジャイアントスパイダー》、そして巨大蛙《ジャイアントトード》……
すなわち昆虫、節足動物、そして両生類という俺の苦手な範疇《はんちゅう》のみ。
虫軍団希望の人にはウエルカム! と叫びたい陣容だろうが……俺は駄目。
悪いが、全てパスさせて頂いたのである。
この中では巨大甲虫、すなわちカブトムシがまだマシ。
しかし大きな問題があった。
実は俺、日本生まれの素朴かつ武骨なデザインのカブトムシが好きなのだ。
色も黒(赤黒含む)が好み。
何か質実剛健という趣があるから。
だが迷宮に出現したのは、派手なつくりと色の外国産カブトムシだった。
召喚するなら愛着がなければ駄目!
と、いうのが俺の拘りである。
外国産のカブトムシ好きの方には申し訳ないが、そう言うしかないのだ。
うう、カッコイイ従士欲しいっ!
虫以外の魔物よ、頼むから出て来てくれっ!
俺は心の中で慟哭しながら戦った。
こうして地下3階の戦闘は、今迄で一番白熱したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
1時間後……
俺の背後に居たジュリアが、ため息をつく。
「はぁ……これじゃあ私達のクランとしての戦闘訓練が出来ないね……まあ女子としても気持ち悪い相手だから旦那様に任せて正解ではあるけど」
肩を竦めるジュリアの傍らで、アマンダも苦笑している。
ジュリアが嘆くのも無理はない。
アモンに代わる盾役の俺が、襲って来る魔物を殆どひとりで倒してしまったのだ。
その理由とは、ケルベロスの強さを確かめたかったのと、召喚の指輪を生かすために必要以上に頑張ったから。
結局、俺は中二病全開。
ひとりで戦う事に熱中してしまった。
あれだけスタンドプレーは駄目だと思っていたのに……
「御免……確かにこれじゃあ訓練にならない。一旦、召喚目的の戦闘を中止して、連携のトレーニングをする事にしようか」
「それが良いかも……」
そのような理由で、以降はクラン全員参加の戦闘に戻したのだ。
まあ相変わらずヴォラクは見ているだけではあるが。
こうして……
とりあえず夢に見た俺の従士募集は、当分中止となってしまったのであった。
何故なら、いよいよ憧れの召喚魔法を使って我が忠実なる従士をゲットだから。
邪神様に改造された俺に召喚魔法は授けられなかった。
というか魔法に関してはゼロに近い能力。
相変わらずしょぼい生活魔法しか使えない。
その代わりに違うチートはいろいろ貰えたけど、魔法に関しては高望みせずに来た。
だけどラッキーな事が起こった。
イザベラの姉レイラの夫、義理の兄となった悪魔エフィムが魔道具『召喚の指輪』授けてくれたのである。
エフィムは使用マニュアルを次のように述べた。
『まず指輪に魔力を込める。そして戦った敵に勝って止めを刺す前に支配と唱えて成功すれば、指輪内に封じ込める事が出来るぞ。なおかつ10体迄、召喚対象に出来るのだ』
おお! 感動した。
これぞ、まさしく古の王が使った悪魔や魔物を使役する伝説の指輪。
何という中二病的な素晴らしいアイテムだろうか!
この俺が何と憧れの召喚士になれるのである。
それを……いよいよ使うのだ。
だが、今の俺はクランリーダー。
仲間を差し置いて目立ち過ぎるスタンドプレーは厳禁。
その為無茶は出来ないが、新婚のアマンダ辺りには恰好良い所を見せておきたいのは本音である。
よっし、早速、ファースト従士ケルベロスを召喚だ。
「じゃあ、皆行くぜっ! ケルベロス! 出でよっ!」
指輪の力は期待通り、絶大だった。
古のソロモン王の指輪に匹敵するというスグレモノ。
魔力波が立ち昇って巨大な影が現れたのだ。
おお、感動!
身体が打ち震える。
大袈裟じゃなくて、これ本当。
中二病全開の俺は、ずっと召喚の言葉を言ってみたかった。
現れたケルベロスは3つの首を振りたて、堂々たる体躯、尾は毒蛇。
すっげぇ頼もしい!
「う? へ、蛇? トール……ちょっと良い?」
青ざめたジュリアが挙手。
意見が出されてしまう。
「あのさ、悪いけどあの子擬態させてくれる?」
「へ?」
「なるべく可愛いのが良いわ。ねぇ頼んでみてよ、従士様へ」
すると、
「そうだね、私はジュリアに賛成! 可愛いのが良い」
「妾《わらわ》もじゃ」
「じゃ、じゃあ、私も……御免なさい、旦那様」
ああ……嫁ズ全員の希望で、ケルベロスの見た目をシベリアンハスキーへ変更。
これはこれで精悍な感じだが……
本来の姿に比べてスケールダウンした感じで、ちょっちガッカリ。
でもケルベロスは元気だ。
俺のやる気が乗り移ったように気合が入っていた。
怖い顔をして唸ってる。
こうなったらすぐ実戦投入。
頼もしい盾役とし、先導させて進んで行く。
ああ、感動。
もろあのゲームそのもの。
荒廃した悪魔世界を行く主人公みたい。
少し歩くと早速敵が襲って来た。
即座にチェック。
ちなみに地下3階では、魔物のレベルと出現の頻度が格段に上がるらしい。
フレデリカのクラン、スペルビアも当然魔物を倒したのであろうが、それ以上に際限なく湧き出て来るようであった。
だが!
待てども待てども出現したのは……
俺の好みに合わない、召喚対象にはならないものばかりだった。
巨大蟻《ジャイアントアント》、巨大蟷螂《ジャイアントマンティス》、巨大甲虫《ジャイアントビートル》、巨大蜘蛛《ジャイアントスパイダー》、そして巨大蛙《ジャイアントトード》……
すなわち昆虫、節足動物、そして両生類という俺の苦手な範疇《はんちゅう》のみ。
虫軍団希望の人にはウエルカム! と叫びたい陣容だろうが……俺は駄目。
悪いが、全てパスさせて頂いたのである。
この中では巨大甲虫、すなわちカブトムシがまだマシ。
しかし大きな問題があった。
実は俺、日本生まれの素朴かつ武骨なデザインのカブトムシが好きなのだ。
色も黒(赤黒含む)が好み。
何か質実剛健という趣があるから。
だが迷宮に出現したのは、派手なつくりと色の外国産カブトムシだった。
召喚するなら愛着がなければ駄目!
と、いうのが俺の拘りである。
外国産のカブトムシ好きの方には申し訳ないが、そう言うしかないのだ。
うう、カッコイイ従士欲しいっ!
虫以外の魔物よ、頼むから出て来てくれっ!
俺は心の中で慟哭しながら戦った。
こうして地下3階の戦闘は、今迄で一番白熱したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
1時間後……
俺の背後に居たジュリアが、ため息をつく。
「はぁ……これじゃあ私達のクランとしての戦闘訓練が出来ないね……まあ女子としても気持ち悪い相手だから旦那様に任せて正解ではあるけど」
肩を竦めるジュリアの傍らで、アマンダも苦笑している。
ジュリアが嘆くのも無理はない。
アモンに代わる盾役の俺が、襲って来る魔物を殆どひとりで倒してしまったのだ。
その理由とは、ケルベロスの強さを確かめたかったのと、召喚の指輪を生かすために必要以上に頑張ったから。
結局、俺は中二病全開。
ひとりで戦う事に熱中してしまった。
あれだけスタンドプレーは駄目だと思っていたのに……
「御免……確かにこれじゃあ訓練にならない。一旦、召喚目的の戦闘を中止して、連携のトレーニングをする事にしようか」
「それが良いかも……」
そのような理由で、以降はクラン全員参加の戦闘に戻したのだ。
まあ相変わらずヴォラクは見ているだけではあるが。
こうして……
とりあえず夢に見た俺の従士募集は、当分中止となってしまったのであった。
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