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第148話「誹謗中傷」

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 アマンダの話を聞いて彼女の境遇を徐々に知ると、嫁ズは親近感が湧いて来たらしい。

 冒険者ギルドへの道すがら、まず社交的なジュリアが積極的に話し掛けている。
 そしてイザベラも、最後にソフィアも……

 アマンダは話し方も柔らかいし、性格も穏やか。
 あっと言う間に嫁ズと打ち解けていた。

 元々、宿屋の女将をやっていたくらいだ。
 芯も強くて、しっかり者。
 商人としての適性は俺なんかより、全然あるだろう。

 そんな事を考えると、俺は嬉しくなって来る。
 頼もしい仲間の誕生だし、夜は……ムフフだ。

 やがて冒険者ギルドに着いた俺達はすぐ中に入ろうとしたが、何故かアマンダが逡巡《しゅんじゅん》した。
 俺は彼女の態度が気になり、一瞬考える。
 
 あ!
 ピンと来た。
 確かに思い当たる節があった。

「もしかして?」

「気が付きましたか?」

 このベルカナの街の冒険者ギルドのマスター、クリスティーナ・エイルトヴァーラが頭の中に浮かんだのだ。
 アマンダはエイルトヴァーラの血を引く一族である。
 果たしてアマンダとクリスティーナとの間柄は?

「彼女は父の妹、すなわち私にとっては叔母にあたります」

「だよねぇ」

 まあ、普通に考えればそうだ。
 母違いという事だけで、現在失踪中のフレデリカと一緒だもの。

「しかし、あちらはそう思っていないようです」

「そう思っていない? 何故?」

「…………」

 俺の問いに、アマンダは答えなかった。
 アマンダとあの美しいギルドマスターの間柄は……何か複雑な状況であるようだ。
 やはりアールヴの『いわれ』の問題だろうか?
 
 暗く寂しそうな表情を隠さないアマンダ。
 俺は、そんな彼女を励ましてやる。

「大丈夫さ、俺達は家族なのだから」

「家族……」

「そうさ! 家族はお互い助け合って生きて行くんだ」

「助け合って……」

「何かあったら俺達がお前を守る、絶対に守る。その代わり、誰かが困ったら今度はお前が守ってやるんだ」

「はいっ!」

 俺の力強い言葉を聞いてアマンダは安心したらしい。
 いつもの爽やかで元気な笑顔に戻って、こくりと頷く。

「よし! 行くぞ!」

 俺達は開かれた入り口から冒険者ギルドの中へ入って行った。
 
 昨日、冒険者ギルドを訪れた時にギルドの営業概要とギルド法なるものを教えられていた。
 その概要によると、冒険者ギルドは朝の午前8時から営業が開始される。
 開場前には多くの冒険者が入り口に並ぶらしい。
 そして入り口が開くと一斉にダッシュし、自分のランクを誇示しながら、受付カウンターに並んでギルドの職員に仕事の斡旋を求めるのだ。

 職員からの紹介のみでなく、壁面にも夥しい数の依頼書がランク別に掲出されていて、朝には更新されている。
 こちらの依頼を受けて仕事をする事も出来るが、職員が直接紹介する案件の方が条件に恵まれている事が多い。
 それが理由で、冒険者の大部分は受付カウンターで仕事を得ようとするのだ。
 
 という事で、新たな仕事が紹介される割合が圧倒的に多いのが朝。
 まあそうだろうと、聞いて納得。
 
 ここから先は、俺の想像だけど……
 
 仕事をなるべく朝に請けて、夕方までにさっさと終了。
 夜は親しい女達と美味い酒を飲む!
 酔うとお互い盛り上がって絶好調!
 そしてイチャイチャした後は……彼女達と夜中までお楽しみへ!

 これこそ、俺のイメージするハーレムファンタジー的冒険者の生活……
 なのであるから。

 ちなみに、俺達が来た今の時間は午前9時30分過ぎ……
 さすがにピークは過ぎてはいるが、まだまだ仕事を探す冒険者達の数は多かった。
 そのような中に目立つ俺達一行が登場したものだから、当然注目を浴びてしまう。

 特にアマンダに視線が注がれている。
 集中していた。
 
 俺の嫁だぞ!
 美しいだろう?
 可愛いだろう、
 どんなもんだい! 
 って言いたいが、何か様子が変だ。
 
 冒険者達はアマンダを見て小声で話し合っているのだ。
 だが俺の耳はいわゆる地獄耳。
 そんなひそひそ話も一切全てが聞えてしまう。

 え?
 これは……悪口?
 とんでもない誹謗中傷じゃねぇか!

 俺は陰口を叩く奴等の中で、少し離れた所で「にやにや」している男2人組を見た。
 リョースアールヴの冒険者2人組みである。
 
 実年齢は分らないが、まだ若い方だろう。
 ご他聞に洩れず端正な顔立ちをしていたが、笑い方に品が無い。
 冒険者の中でも、こいつ等の話は抜きんでて聞くに堪えないものであった。
 
 俺の類稀たぐいまれな聴力のお陰で、奴等の話は「ばっちり」聞こえた。
 なので、俺はつかつかと近寄った。

 男達は一体何だ? というような表情だ。
 俺が華奢に見えるせいか、舐めているのかもしれない。
 
 奴等の真ん前に出て俺は腕組みをし、キッと睨みつけたのであった。
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