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第14話「冒険者禁止?」

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 大空亭1階食堂、午前9時……
 めでたくジュリアとカップルになった俺。
 邪神様の信仰心も上がったし、出だしとしては好調。
 いや、こんな可愛い彼女が出来たから絶好調だ。

 とりあえず今後の事を話しましょうと、ジュリアから申し入れがあった。
 なので、ふたりして大空亭のテーブルに座っている。

「と、いうことで……トールはこれからどうするの?」

 どうするのって……
 情けないが、俺にはこの先のアテなどない。
 ジュリアという彼女が出来たのだって、凄いイレギュラー。
 嬉しさ一杯で、他の事を考える余裕ナッシング。
 お前なんか、爆発しろ?
 はい、逆の立場だったら、絶対に俺もそう叫びます。

 俺が「ぼうっ」としていたら、ジュリアからはっぱをかけられてしまう。

「あたしは、これからトールと一緒に暮らすんだよ。……ちゃんと考えてくれなきゃダメ!」

 はぁ……そうですか?
 俺は叱られ、ポカンとしてしまった。

 ジュリアの話を聞けば、この世界で彼と彼女の間柄になるという事は、たとえ結婚はしなくてもふたりで生計を立てて暮らして行くという事らしい。

 急に生活感が立ち込めて来た。
 彼女が出来るってこんな感じ?
 何か、前世と違~う。
 でもちゃんと考えなくてはならない。
 これからの、俺達の将来かぁ……
 
 ジュリアは今後の人生設計を、俺と一緒に考えたいようだ。
 女性はどの世界、いつの時代でも現実的という事だろうか?
 そこで俺はこの世界に来て、やってみたい職業のイメージを彼女へ伝えてみる。

「俺、最初に言ったように冒険者になろうかと思っている……つまりトレジャーハンターだな」

 トレジャーハンターとはありとあらゆる未知の場所におもむき、宝を探す冒険者の事だ。
 ……例えば廃墟や遺跡の奥深く隠された古代文明の遺産、険しい山の中に隠された財宝、海なら沈没船の探索など、一般世間から隠されたお宝を探し出すのである。
 昔の映画や小説の冒険者のイメージを思い浮かべた俺はその格好良さに興奮してずっと憧れていた。
 これぞまさに、俺が中二病の証拠でもある。

「冒険者? でもさ、トール。凄いお宝なんて中々見つからないよ」

 夢よ叶えと、入れ込む俺に対してジュリアは冷静だ。
 生と死が隣り合わせの、この異世界で生きている女性だけの事はある。

「冒険者の前に立ちふさがるのは、厳しい自然に無慈悲な魔物。迷宮なら怖ろしい罠。そんな大きい危険があるのに対して、大きな見返りは滅多にないから……信頼性の凄く高い情報を掴んで確証を得た時は、人生を賭けてみるのも『あり』だけどね」

 俺の危険な夢を、頭から否定しないのがジュリアの良い所だ。
 加えて、彼女には提案したい職業があるらしい。 

「ならさ、……ものは相談なんだけど……あたしが宿屋の仕事の傍らにやっていた仲買人ブローカーの方が全然美味しい仕事だと思うよ。こっちだって度胸と物を見る目がないと勤まらないけど」

 仲買人?

 俺がそう思っていろいろ話を聞くと、ジュリアは借金返済のお金を貯める為にいろいろな人から不用品を仕入れて転売し、利益を出していたそうだ。

 いわゆるブローカーという奴か、はたまたジャンク屋の事か?
 確かにそれだと冒険者に比べて危険はまだ少ないが……
 この世界に来て憧れの冒険者になろうと思っていた俺の願望はどうなる?

「じゃあ……冒険者は諦めた方が良いのかな?」

 俺が男の子らしい気持ちをほんの少し話した時である。
 ジュリアは顔を歪め、泣きそうな表情になってしまったのだ。

「だ、だってトールに万が一の事があったら……あたし……」

「え?」

「何でこんな気持ちになっちゃったんだろう……あたし、あんたの事……やっぱり凄く好きなんだもん」

 あれ!?
 あれれれれ!
 俺の事、そんなに心配してくれるんだ!?
 好きだって言ってくれるんだ、俺の事。
 それも凄く好きだなんて!
 今迄の人生で、一番感動したよ!
 可愛いな、俺のジュリア!

 ジュリアに心配された俺は彼女に対して急に愛しさが込み上げて来た。
 真っ赤になったジュリアは、ばつが悪そうに無理矢理話題を変える。

「と、ところでさ、仲買人でも冒険者でもしっかりと稼ぐには大きな街に行った方が良いよ、例えば冒険者の街と呼ばれるバートランドとかね」

「え!? ぼ、冒険者の街!? そ、それ、どこ? どこにある?」
 
 勢い込んで聞く俺にジュリアは若干引き気味だ。

「凄い食いつきようだね。 で、でもトールがこの前言った通り、暫くはこの村の近辺で生活して慣れてから旅立った方が良いよ。それにゆくゆくは大きな街で仲買人をやるとしてもあたし、まずはこのタトラ村の為に貢献したいんだ」

 タトラ村に貢献?
 ふ~ん……偉いなジュリア。
 お前はこんなに若いのに凄くしっかりした娘だ。
 ……今更だけど……この子っていくつなんだろう?

 俺が何か聞きたそうにしているのでジュリアも反応する。

「何?」

「お前の年齢って?」

「もう! あたしだって15歳だからもう完全に大人だよ!」

 うは~!
 たった15歳でもう大人なのか!

 片や俺は17歳……
 2つも歳上の俺は……この体たらく……
 もっともっと、しっかりしなければ。
 邪神様から命じられた使徒としての務めだってある。
 
 俺は頑張ろうと、改めて決心していたのであった。 
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