14 / 37
第14話「癒し系の彼女」
しおりを挟む
【大門寺トオルの告白⑦】
バジル部長を『伯父』と呼んだ女性は、優しく微笑んでいる。
でも部長を見て……
どうして、いきなり逃げようとしたのだろう?
まあ、いっか。
細かい事は。
と、俺がつらつら考えていたら、部長が彼女に何か囁き、改めて紹介してくれる。
「ちょうど良かった。紹介しよう、この子は私の姪フルールだ」
部長に目くばせされた、彼女……フルールさんは俺に笑顔を向け、
「はじめまして! 私、フルール・ボードレールです。男爵ボードレールの娘でバジルの姪です。……職業は聖女です」
へぇ!
爽やかな第一印象。
「はきはき」と元気な挨拶をする子だなと思う。
でもこの子……バジル部長の姪っ子さんなんだ。
俺もすかさず返事を戻した。
「こちらこそ、初めまして。もしかしたらバジル部長からご紹介があったようですが、改めて名乗ります。自分はクリストフ・レーヌです。爵位は子爵ですよ」
俺は挨拶をしながら、改めてフルールさんを見た。
か、可愛い!
す、凄く可愛い!
ええっと……
フルールさん、身長は結構あって160㎝半ばくらいか。
体型は「すらり」として足が長い。
うっわ!
華奢な身体に似合わない大きな胸。
明るい栗色のロングヘア。
切れ長の目に、綺麗な鳶色の瞳。
目鼻立ちは、はっきりしていて端麗な美人。
黒髪じゃないところを除けば、リンちゃんにとても良く似ている。
笑うと目が垂れてしまう癒し系で、首を傾げる仕草も。
それ以上に、声が凄くそっくりなんだ。
俺がフルールさんに見とれているのに気が付き、バジル部長が悪戯っぽく笑う。
「ふふ、彼があの、クリストフ・レーヌ君だ」
あの?
あの、って……
一体、何でしょう、部長。
その意味ありげな笑いは?
フルールさんも、微笑んで頷く。
「お噂はかねがね……」
だから、その『噂』って何?
凄く、気になるんですよ。
俺がそんな心配をしていたら、バジル部長がフォローしてくれた。
「クリス君は男気にあふれ、誠実な上、優秀な騎士だぞと、よく姪に話していたのさ」
ほっ……何だ。
女子に声かけまくりな『超軽薄合コン野郎』と、
陰口叩かれていなくて良かった。
まあ、俺トオルと違い、硬派なクリスならそんな事は言われないか……
俺が少し複雑な表情をしていたら、
可笑しかったのかフルールさんは、
「うふふふ」
と、口に手をあてた。
ああ、!
良いなぁ!
フルールさんの屈託のない笑顔に、俺は癒される。
笑うと、余計可愛い~
でも、外人女子なのに、声も雰囲気も本当にリンちゃんそっくりだ。
だから、フルールさんを見ると結構思い出して……辛い。
折角忘れようとして、立ち直りかけた矢先だから。
うん、ここは話題を変えよう。
さっきから気になっていた事があるから。
「ええっと、レーヌ子爵様って、もしかして……あの有名な副長さん……」
「はい、王都騎士隊の副長をやってます。かしこまらず気楽にクリスと呼んで下さい。フルールさんは聖女って? じゃあ……もしかして、この後、宝剣の間で」
「はい! 私、食事会に参加します」
おお、彼女は……
フルールさんは食事会、否、合コンのメンバーじゃないか。
じゃあ、彼氏居ない率がぐ~んとアップ?
これは大が付くチャンスかもしれない。
これってもしかして運命の出会い?
リンちゃんと離れ離れになった俺へ、この異世界の神・創世神様の加護が与えられた!?
本当に、こんなラッキーはそうない。
例えは正しくないかもしれないが……
捨てる神あれば拾う神ありって言うじゃない。
ありがたい!
俺と懇意なバジル部長の姪というのも、
フルールさんとの距離を縮め、親しくなるのに、追い風となるやもしれない。
これは……
リンちゃんと会った時よりもず~っと手応えがあるかも。
うん!
完全に吹っ切れた!
リンちゃんよ、俺の事を忘れてどこかの誰かと幸せになってくれと切に願う。
それに俺自身だってそう。
ブラック企業勤務で、貧乏リーマンの大門寺トオルより、
子爵家当主で将来有望な王都騎士隊副長クリストフ・レーヌの方が断然、有望株だもの。
こうなるとフルールさんとの話は弾みに弾む。
でも……ひとつ心配になった。
硬派なイメージで通ってるクリスが、
トオルみたいなナンパな男というイメージに変わっても良いのかと。
つらつら俺が考えていたその時。
「じゃあ私はこれで……後はふたりで話すと良い」
バジル部長は俺とフルールさんの橋渡しをした後、
満足そうな笑みを浮かべ、そそくさと去ってしまった。
おお、さすが部長!
凄く気が利く。
他人の幸せをアシストするばかりで、全くついていない人生の典型だった俺。
でも今は、追い風がびゅんびゅん吹いている。
もう!
この風に……乗るしかないっ!
せっかく知り合えた可愛いリンちゃんと離れ離れになった異世界転生なんて、最悪の不幸だと思っていたけど……
雨降って地固まるかな?
フルールさんの癒し笑顔を見ながら……
俺は来るべき幸せを確信していたのであった。
バジル部長を『伯父』と呼んだ女性は、優しく微笑んでいる。
でも部長を見て……
どうして、いきなり逃げようとしたのだろう?
まあ、いっか。
細かい事は。
と、俺がつらつら考えていたら、部長が彼女に何か囁き、改めて紹介してくれる。
「ちょうど良かった。紹介しよう、この子は私の姪フルールだ」
部長に目くばせされた、彼女……フルールさんは俺に笑顔を向け、
「はじめまして! 私、フルール・ボードレールです。男爵ボードレールの娘でバジルの姪です。……職業は聖女です」
へぇ!
爽やかな第一印象。
「はきはき」と元気な挨拶をする子だなと思う。
でもこの子……バジル部長の姪っ子さんなんだ。
俺もすかさず返事を戻した。
「こちらこそ、初めまして。もしかしたらバジル部長からご紹介があったようですが、改めて名乗ります。自分はクリストフ・レーヌです。爵位は子爵ですよ」
俺は挨拶をしながら、改めてフルールさんを見た。
か、可愛い!
す、凄く可愛い!
ええっと……
フルールさん、身長は結構あって160㎝半ばくらいか。
体型は「すらり」として足が長い。
うっわ!
華奢な身体に似合わない大きな胸。
明るい栗色のロングヘア。
切れ長の目に、綺麗な鳶色の瞳。
目鼻立ちは、はっきりしていて端麗な美人。
黒髪じゃないところを除けば、リンちゃんにとても良く似ている。
笑うと目が垂れてしまう癒し系で、首を傾げる仕草も。
それ以上に、声が凄くそっくりなんだ。
俺がフルールさんに見とれているのに気が付き、バジル部長が悪戯っぽく笑う。
「ふふ、彼があの、クリストフ・レーヌ君だ」
あの?
あの、って……
一体、何でしょう、部長。
その意味ありげな笑いは?
フルールさんも、微笑んで頷く。
「お噂はかねがね……」
だから、その『噂』って何?
凄く、気になるんですよ。
俺がそんな心配をしていたら、バジル部長がフォローしてくれた。
「クリス君は男気にあふれ、誠実な上、優秀な騎士だぞと、よく姪に話していたのさ」
ほっ……何だ。
女子に声かけまくりな『超軽薄合コン野郎』と、
陰口叩かれていなくて良かった。
まあ、俺トオルと違い、硬派なクリスならそんな事は言われないか……
俺が少し複雑な表情をしていたら、
可笑しかったのかフルールさんは、
「うふふふ」
と、口に手をあてた。
ああ、!
良いなぁ!
フルールさんの屈託のない笑顔に、俺は癒される。
笑うと、余計可愛い~
でも、外人女子なのに、声も雰囲気も本当にリンちゃんそっくりだ。
だから、フルールさんを見ると結構思い出して……辛い。
折角忘れようとして、立ち直りかけた矢先だから。
うん、ここは話題を変えよう。
さっきから気になっていた事があるから。
「ええっと、レーヌ子爵様って、もしかして……あの有名な副長さん……」
「はい、王都騎士隊の副長をやってます。かしこまらず気楽にクリスと呼んで下さい。フルールさんは聖女って? じゃあ……もしかして、この後、宝剣の間で」
「はい! 私、食事会に参加します」
おお、彼女は……
フルールさんは食事会、否、合コンのメンバーじゃないか。
じゃあ、彼氏居ない率がぐ~んとアップ?
これは大が付くチャンスかもしれない。
これってもしかして運命の出会い?
リンちゃんと離れ離れになった俺へ、この異世界の神・創世神様の加護が与えられた!?
本当に、こんなラッキーはそうない。
例えは正しくないかもしれないが……
捨てる神あれば拾う神ありって言うじゃない。
ありがたい!
俺と懇意なバジル部長の姪というのも、
フルールさんとの距離を縮め、親しくなるのに、追い風となるやもしれない。
これは……
リンちゃんと会った時よりもず~っと手応えがあるかも。
うん!
完全に吹っ切れた!
リンちゃんよ、俺の事を忘れてどこかの誰かと幸せになってくれと切に願う。
それに俺自身だってそう。
ブラック企業勤務で、貧乏リーマンの大門寺トオルより、
子爵家当主で将来有望な王都騎士隊副長クリストフ・レーヌの方が断然、有望株だもの。
こうなるとフルールさんとの話は弾みに弾む。
でも……ひとつ心配になった。
硬派なイメージで通ってるクリスが、
トオルみたいなナンパな男というイメージに変わっても良いのかと。
つらつら俺が考えていたその時。
「じゃあ私はこれで……後はふたりで話すと良い」
バジル部長は俺とフルールさんの橋渡しをした後、
満足そうな笑みを浮かべ、そそくさと去ってしまった。
おお、さすが部長!
凄く気が利く。
他人の幸せをアシストするばかりで、全くついていない人生の典型だった俺。
でも今は、追い風がびゅんびゅん吹いている。
もう!
この風に……乗るしかないっ!
せっかく知り合えた可愛いリンちゃんと離れ離れになった異世界転生なんて、最悪の不幸だと思っていたけど……
雨降って地固まるかな?
フルールさんの癒し笑顔を見ながら……
俺は来るべき幸せを確信していたのであった。
0
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
最強騎士は料理が作りたい
菁 犬兎
ファンタジー
こんにちわ!!私はティファ。18歳。
ある国で軽い気持ちで兵士になったら気付いたら最強騎士になってしまいました!でも私、本当は小さな料理店を開くのが夢なんです。そ・れ・な・の・に!!私、仲間に裏切られて敵国に捕まってしまいました!!あわわどうしましょ!でも、何だか王様の様子がおかしいのです。私、一体どうなってしまうんでしょうか?
*小説家になろう様にも掲載されております。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる