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第663話「おお! これはまさに神の祝福!!」
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リオネルが人間族の商会役となり行う実地研修は、
様々なパターンで繰り返し行われた。
ハーブ買い付けの次は、リオネルが人間族仕様の日用品の売り込み、
対して公社職員達が商談を行い、駆け引きを楽しんだのである。
研修を見物していた女神ミネルヴァも面白がって参加。
大いに盛り上がりを見せた。
しかし人間族役がリオネルのみでは、悪い意味で慣れが出る。
公社職員達が経験を積み、交渉がスムーズに運べるのは利点だが、
良い意味での緊張感が薄れてしまうのだ。
だが、心配ご無用。
こうなる状況もリオネルは想定済みである。
リオネルとヒルデガルドは研修を中座し、商館の会議室で打合せを行う。
「特別地区のプレオープンに向け、更なる準備を行いましょう」
「?? プ、プレオープン……ですか? それって一体何でしょう……」
「はい、プレオープンとはですね」
補足しよう。
プレオープンとは、正式なオープン前に店舗をオープンする事で、
お披露目やオペレーションの見直しなどの目的がある。
ここでリオネルが言うプレオープンは、開国前に特別地区を限定公開する事だ。
リオネルがそのように説明すると、ヒルデガルドが納得し、頷く。
「成る程……という事は開国前にしかるべき人々をお招きし、この特別地区をお披露目するのですね?」
「はい、その通りです。ちなみにプレオープンは最低2回以上は行いたいと思います」
「プレオープンを最低2回以上……ですか?」
「はい、俺が考えるに、プレオープンにお招きするのは、王国のお偉いさん達、そして交易実務に携わる商会の方々ですね」
「成る程……アクィラ王国の王族、貴族へ1回、商会の幹部社員へ1回の最低計2回、特別地区を開国前に見せるという事ですか?」
「ええ、王族、貴族へは純粋なお披露目です。そして商会の幹部社員へはお披露目は勿論、プラクティスとして公社職員達が彼ら彼女達と事前の下交渉も行います」
「成る程! 成る程! 相手によりプレオープンの持つ意味が変わるのですね?」
「です! 必要があれば回数を増やします。そしてこのプレオープン実施までにやるべき事、準備する事は山ほどあります。交易実務に関し、公社職員が様々な研修を継続して経験を積むのは勿論、この特別地区の施設面の再確認と足りない部分の補足を行うのです」
「な、成る程! 良く分かりますわ!」
「はい、そしてトラブル回避と、もしもの際の迅速な収束の為、合意したルールの明文化、共有化の徹底を行い、警備も強化し万全にすべきですね」
「トラブル回避と、もしもの際の迅速な収束の為、合意したルールの明文化、共有化の徹底を行い、警備も強化し万全にすべき……ですか?」
「はい、イエーラはずっと鎖国政策を継続して来ましたからアールヴ族はこれまで接触のなかった他種族に対し、全く未知の相手という不信感に加え、必要以上の緊張感を持つと思いますし、それは相対する他種族も同じなのです」
「まあ、そうでしょうね」
「こちらの不信感は相手の不信感を招くのは勿論、嫌悪感にもつながりやすいですし、互いに必要以上の緊張感を持つとちょっとしたきっかけや何かの行き違いで不慮の大事故が起きやすい」
「不慮の大事故が起きる……怖いですね」
「はい、怖いです。なので大事故を出来うる限り防ぐ為の対策と、万が一起こってしまった時の対処方法をしっかり立てておくのが必須です。公社職員達へしっかりと伝える為、マニュアル作成も考えておきましょう」
「もろもろ分かりました。では具体的にどうすれば宜しいでしょうか?」
「はい、まずはイェレミアスさんを交え、打合せを行いましょうか。そして対策を立て、実施します。ヒルデガルドさんのお祖父様はイエーラを旅立って数十年間、人間族と接して来ましたから、その間いろいろと葛藤もあったでしょう」
「ですね!」
「イェレミアスさんは、旅をしているうち、冒険者となり、人間族への理解を深め、遂には親友と呼べる相手も得ました。その経験から忌憚のない貴重な意見を伺えると思います」
「はい! 私もおじいさまのお話とご意見をお聞きしたいです! すぐ、フェフの官邸へ連絡を取りますわ」
研修出席後、イェレミアスはソウェル代行として溜まった政務をこなすべく、
官邸へ戻っていた。
ヒルデガルドは思う。
最近の祖父はいつも笑顔、張り切って政務に邁進していると。
ヒルデガルドとリオネルがむつまじく協力し合い、
次々とイエーラが良くなって行くのがたまらなく嬉しいようだ。
またヒルデガルドがプレゼントした人間族仕様のトリプルベッドで良く安眠出来て、
食欲も旺盛だという。
「リオネル様、絶好のテスト機会になると思いますので、練習中の長距離念話を使ってみますね。おじいさまの執務スケジュール表によりますと、今は休憩中だと思いますから」
再び補足しよう。
心と心の会話――念話は、会話対象との相性、そして術者の魔力の強さで成功率が左右され、普通に会話をするくらいの近距離ほど成功しやすい。
当然、中距離、遠距離と、会話対象との距離が離れるほど、難易度は著しく増す。
現世と遥かに離れた異界に居るティエラのような精霊と、
念話で話す事の出来るリオネルの念話能力は桁外れのひと言だ。
「はい、分かりました。頑張ってください」
『うふふ♡ 頑張りま~す! 修行の良き成果が出るようご期待くださいね!』
ヒルデガルドは嬉しそうに念話で言葉を返し、早速念話を送ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
目を閉じ、数回頷くヒルデガルド。
しばし経って、彼女は満足そうに、にっこりと笑う。
……イェレミアスとの長距離念話は上手く通じたらしい。
念話でリオネルへ話しかけて来る。
『お聞きください、リオネル様! 大成功です! 上手く話す事が出来ましたよ! おじいさまがたいそう驚いて大喜びしていましたわ! 私が念話を習得してまだ日が浅いのに、長距離念話を使えるまで上達したのかと!』
『おお、それは良かったです。頑張って来た甲斐がありましたね』
『はい! リオネル様の日頃の御指導の賜物です。そしておじいさまは今から3時間以降であればいつでもOKだと、私達の都合に合わせ、スケジュール調整をするとおっしゃっていましたわ!』
『そうですか。ではとりあえず公社職員達へ今打合せした事を伝えましょうか』
『はい!』
……という事で、リオネルとヒルデガルドは、会議室を出て、
ミネルヴァが人間役となって続行中の研修の場へ。
アクィラ王国の王族、貴族達、そしてアクィラ王国の商会幹部社員達を招き、
プレオープンを行う事、その趣旨を伝えた。
話を聞き、全員が納得。
遂に仲間内だけではなく、交易を行う相手と直にやりとりをする!
あちこちで歓声が聞こえ、モチベーションがとんでもなく上がり、
公社職員達は来るべき日に備え、研修を続行する事を誓い合う。
そして上機嫌のミネルヴァはといえば、とんでもなくサプライズで、
ありがたい言葉を告げてくれた。
「うふふ、皆、私の教えを受けてやる気満々ね! 結構結構!」
と言い、
「よおっし! 決めた! ご褒美として、ティエラが地の加護を与えたのと同様、私もイエーラへ、特にこの特別地区へ加護を与えるわ。神殿もあるしね、うふふふふ」
おお!
これはまさに神の祝福!!
商業教授の御礼に、専用の神殿を作り、ミネルヴァを奉る事は決まっていたのだが……何と何と何と!
この特別地区は正式に上級女神の加護により、守られる事となったのである。
「リオネル、ヒルデガルド。私は引き続き研修を行うから、貴方達はその間フェフへ行って、イェレミアスと話して来ると良いわ。私の与えた加護の事も伝えておいてね」
「ミネルヴァ様! 何から何までありがとうございます! 今後とも宜しくお願い致します!」
「ミネルヴァ様の大いなる御加護に、イエーラのソウェルとして心からの感謝を申し上げます」
リオネルとヒルデガルドは、ミネルヴァへ深く礼を述べると、
特別地区に用意してあったミネルヴァの神殿を、
更にバージョンアップする事を指示した上で、転移魔法を発動。
あっという間に、フェフの官邸へ帰還したのである。
様々なパターンで繰り返し行われた。
ハーブ買い付けの次は、リオネルが人間族仕様の日用品の売り込み、
対して公社職員達が商談を行い、駆け引きを楽しんだのである。
研修を見物していた女神ミネルヴァも面白がって参加。
大いに盛り上がりを見せた。
しかし人間族役がリオネルのみでは、悪い意味で慣れが出る。
公社職員達が経験を積み、交渉がスムーズに運べるのは利点だが、
良い意味での緊張感が薄れてしまうのだ。
だが、心配ご無用。
こうなる状況もリオネルは想定済みである。
リオネルとヒルデガルドは研修を中座し、商館の会議室で打合せを行う。
「特別地区のプレオープンに向け、更なる準備を行いましょう」
「?? プ、プレオープン……ですか? それって一体何でしょう……」
「はい、プレオープンとはですね」
補足しよう。
プレオープンとは、正式なオープン前に店舗をオープンする事で、
お披露目やオペレーションの見直しなどの目的がある。
ここでリオネルが言うプレオープンは、開国前に特別地区を限定公開する事だ。
リオネルがそのように説明すると、ヒルデガルドが納得し、頷く。
「成る程……という事は開国前にしかるべき人々をお招きし、この特別地区をお披露目するのですね?」
「はい、その通りです。ちなみにプレオープンは最低2回以上は行いたいと思います」
「プレオープンを最低2回以上……ですか?」
「はい、俺が考えるに、プレオープンにお招きするのは、王国のお偉いさん達、そして交易実務に携わる商会の方々ですね」
「成る程……アクィラ王国の王族、貴族へ1回、商会の幹部社員へ1回の最低計2回、特別地区を開国前に見せるという事ですか?」
「ええ、王族、貴族へは純粋なお披露目です。そして商会の幹部社員へはお披露目は勿論、プラクティスとして公社職員達が彼ら彼女達と事前の下交渉も行います」
「成る程! 成る程! 相手によりプレオープンの持つ意味が変わるのですね?」
「です! 必要があれば回数を増やします。そしてこのプレオープン実施までにやるべき事、準備する事は山ほどあります。交易実務に関し、公社職員が様々な研修を継続して経験を積むのは勿論、この特別地区の施設面の再確認と足りない部分の補足を行うのです」
「な、成る程! 良く分かりますわ!」
「はい、そしてトラブル回避と、もしもの際の迅速な収束の為、合意したルールの明文化、共有化の徹底を行い、警備も強化し万全にすべきですね」
「トラブル回避と、もしもの際の迅速な収束の為、合意したルールの明文化、共有化の徹底を行い、警備も強化し万全にすべき……ですか?」
「はい、イエーラはずっと鎖国政策を継続して来ましたからアールヴ族はこれまで接触のなかった他種族に対し、全く未知の相手という不信感に加え、必要以上の緊張感を持つと思いますし、それは相対する他種族も同じなのです」
「まあ、そうでしょうね」
「こちらの不信感は相手の不信感を招くのは勿論、嫌悪感にもつながりやすいですし、互いに必要以上の緊張感を持つとちょっとしたきっかけや何かの行き違いで不慮の大事故が起きやすい」
「不慮の大事故が起きる……怖いですね」
「はい、怖いです。なので大事故を出来うる限り防ぐ為の対策と、万が一起こってしまった時の対処方法をしっかり立てておくのが必須です。公社職員達へしっかりと伝える為、マニュアル作成も考えておきましょう」
「もろもろ分かりました。では具体的にどうすれば宜しいでしょうか?」
「はい、まずはイェレミアスさんを交え、打合せを行いましょうか。そして対策を立て、実施します。ヒルデガルドさんのお祖父様はイエーラを旅立って数十年間、人間族と接して来ましたから、その間いろいろと葛藤もあったでしょう」
「ですね!」
「イェレミアスさんは、旅をしているうち、冒険者となり、人間族への理解を深め、遂には親友と呼べる相手も得ました。その経験から忌憚のない貴重な意見を伺えると思います」
「はい! 私もおじいさまのお話とご意見をお聞きしたいです! すぐ、フェフの官邸へ連絡を取りますわ」
研修出席後、イェレミアスはソウェル代行として溜まった政務をこなすべく、
官邸へ戻っていた。
ヒルデガルドは思う。
最近の祖父はいつも笑顔、張り切って政務に邁進していると。
ヒルデガルドとリオネルがむつまじく協力し合い、
次々とイエーラが良くなって行くのがたまらなく嬉しいようだ。
またヒルデガルドがプレゼントした人間族仕様のトリプルベッドで良く安眠出来て、
食欲も旺盛だという。
「リオネル様、絶好のテスト機会になると思いますので、練習中の長距離念話を使ってみますね。おじいさまの執務スケジュール表によりますと、今は休憩中だと思いますから」
再び補足しよう。
心と心の会話――念話は、会話対象との相性、そして術者の魔力の強さで成功率が左右され、普通に会話をするくらいの近距離ほど成功しやすい。
当然、中距離、遠距離と、会話対象との距離が離れるほど、難易度は著しく増す。
現世と遥かに離れた異界に居るティエラのような精霊と、
念話で話す事の出来るリオネルの念話能力は桁外れのひと言だ。
「はい、分かりました。頑張ってください」
『うふふ♡ 頑張りま~す! 修行の良き成果が出るようご期待くださいね!』
ヒルデガルドは嬉しそうに念話で言葉を返し、早速念話を送ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
目を閉じ、数回頷くヒルデガルド。
しばし経って、彼女は満足そうに、にっこりと笑う。
……イェレミアスとの長距離念話は上手く通じたらしい。
念話でリオネルへ話しかけて来る。
『お聞きください、リオネル様! 大成功です! 上手く話す事が出来ましたよ! おじいさまがたいそう驚いて大喜びしていましたわ! 私が念話を習得してまだ日が浅いのに、長距離念話を使えるまで上達したのかと!』
『おお、それは良かったです。頑張って来た甲斐がありましたね』
『はい! リオネル様の日頃の御指導の賜物です。そしておじいさまは今から3時間以降であればいつでもOKだと、私達の都合に合わせ、スケジュール調整をするとおっしゃっていましたわ!』
『そうですか。ではとりあえず公社職員達へ今打合せした事を伝えましょうか』
『はい!』
……という事で、リオネルとヒルデガルドは、会議室を出て、
ミネルヴァが人間役となって続行中の研修の場へ。
アクィラ王国の王族、貴族達、そしてアクィラ王国の商会幹部社員達を招き、
プレオープンを行う事、その趣旨を伝えた。
話を聞き、全員が納得。
遂に仲間内だけではなく、交易を行う相手と直にやりとりをする!
あちこちで歓声が聞こえ、モチベーションがとんでもなく上がり、
公社職員達は来るべき日に備え、研修を続行する事を誓い合う。
そして上機嫌のミネルヴァはといえば、とんでもなくサプライズで、
ありがたい言葉を告げてくれた。
「うふふ、皆、私の教えを受けてやる気満々ね! 結構結構!」
と言い、
「よおっし! 決めた! ご褒美として、ティエラが地の加護を与えたのと同様、私もイエーラへ、特にこの特別地区へ加護を与えるわ。神殿もあるしね、うふふふふ」
おお!
これはまさに神の祝福!!
商業教授の御礼に、専用の神殿を作り、ミネルヴァを奉る事は決まっていたのだが……何と何と何と!
この特別地区は正式に上級女神の加護により、守られる事となったのである。
「リオネル、ヒルデガルド。私は引き続き研修を行うから、貴方達はその間フェフへ行って、イェレミアスと話して来ると良いわ。私の与えた加護の事も伝えておいてね」
「ミネルヴァ様! 何から何までありがとうございます! 今後とも宜しくお願い致します!」
「ミネルヴァ様の大いなる御加護に、イエーラのソウェルとして心からの感謝を申し上げます」
リオネルとヒルデガルドは、ミネルヴァへ深く礼を述べると、
特別地区に用意してあったミネルヴァの神殿を、
更にバージョンアップする事を指示した上で、転移魔法を発動。
あっという間に、フェフの官邸へ帰還したのである。
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