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第613話「しれしれっと明かされるリオネルの持つ能力」
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ヒルデガルドが感嘆の声を発した通り、リオネルが作った料理の味は、
相当なものであった。
リオネルに対する深い愛情と思い入れが加味されているのは間違いない。
そのせいで、料理が数倍美味に感じているのかもしれない。
だが、生まれてからこれまで食べた料理の中で一番美味しかったと、
自分もぜひ習得したいと、ヒルデガルドは最高レベルの称賛をしたのである。
またエステルも、経験した高級レストランの料理に、
勝るとも劣らないと正直に感想を述べた。
多分、関係のない第三者が食べたとしても称賛の声は出ただろう。
凝り性で研究熱心、そして経験を重ねて来たリオネルの料理は、
もはやプロレベルに達していたのだ。
さてさて!
そんなこんなで、食事が終わり、3人でお茶を飲みながら、
デザートのケーキを味わいつつ、明日以降の打合せを行う。
ここでリオネルから提案。
「ヒルデガルドさんは冒険者ギルド総本部の各所を見学し、ショッピングもし、だいぶ人間族の社会にも慣れたでしょう。そろそろ、冒険者ギルド本部を出て、彼女をワレバッドの街中へ連れて行こうと思います」
「わお! リオネル様! ワレバッドの街中へ行くのですか! いよいよ次のステージへ進むのですね! 本当に楽しみですわ!」
リオネルの『提案』を聞き、菫色の瞳をキラキラさせ、
期待に胸をふくらませるヒルデガルド。
ここでエステルが反応。
挙手し、言う。
「以前にも申し上げましたが、ヒルデガルド様がワレバッドの街中へ出る際には、国賓への扱いとして冒険者ギルドの方で護衛をつけさせていただきます。これは遠方の領地巡回中のローランド様と魔法鳩便でやりとりをした上での命令です」
エステルの言葉を聞き、リオネルは、
「はい、エステルさん。いずれタイミングを見て、護衛の件はご相談しようと思っていました。ただ勝手を言って申し訳ありませんが、ヒルデガルドさんの周りを大勢の冒険者達で囲むとか、あまり物々しくというか、仰々しくしたくはないですね」
「成る程、分かります。周囲に護衛がたくさん居たら、街の散策を楽しめませんからね」
「ええ、とは言ってもヒルデガルドさんは最上級レベルの国賓です。大いに気を遣う冒険者ギルド、いえソヴァール王国の立場も理解できますので、護衛をつけて貰う事は了承します」
「ご了承して頂きありがとうございます、リオネル様。明日はブレーズ様もクローディーヌさんもおりますし、予定もそんなにきつきつではないと聞いておりますので、朝一番で私から話を入れ、スケジュールを調整し、時間を決め、一緒にご相談させて頂くという事で構いませんか?」
「はい、構いません。急なお願いを聞いて頂き、こちらこそありがとうございます。であれば俺とヒルデガルドさんは、ホテルのレストランで朝食を摂り、その後はこの部屋で待機しています。打合せの時間はそちらの指示に合わせますよ」
「了解です。明日の朝、私の方で確認し、すぐそちらへご連絡が出来ると思いますので、何卒宜しくお願い致します」
いくつかのやり取りを交わし……話はまとまった。
現在の時間は午後9時前。
あっという間に時間が経ってしまった。
まもなくエステルを自宅へ送る馬車がホテルの駐車場へ到着する。
と、その時、タイミングよく魔導通信機の内線が鳴った。
やはりというか、ホテルのフロントからで、早めに駐車場へ馬車が来たようだ。
これで本日はお開き。
エステルは深々と頭を下げる。
「ヒルデガルド様、リオネル様、いろいろお疲れ様でした。そしてごちそうさまでした。ではまた明日。本日はこれで失礼致します」
「ありがとうございます。本日もお疲れ様でした。エステルさん、私、駐車場までお見送り致しますわ」
「俺も一緒に見送ります」
「いえいえ、そんな!」
という事で、恐縮するエステルを、リオネルとヒルデガルドは、
馬車が待つホテルの駐車場まで見送ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……翌朝、ホテルのレストランで美味しい朝食を摂ったリオネルとヒルデガルド。
約束通り、部屋で待機。
ただその時間も決して無駄にはせず、ワレバッドの観光案内を手に、
リオネルはヒルデガルドへの『情報提供』を行っていた。
そんなこんなで、時間は午前10時前。
「るるるるる」と魔導通信機の呼び出し音が鳴り、リオネルが受話器を取った。
連絡を入れて来たのはエステルである。
「おはようございます! エステルです! お疲れ様です、朝食はお済みでしょうか」
「リオネルです、おはようございます、お疲れ様です、朝食は済んでいます」
「了解です。お待たせ致しました。ではご連絡致します。たった今、ブレーズ様のスケジュール調整が終わりました。本日のお打合せが可能となりましたので1時間後の午前11時から、サブマスター室にてのお打合せで構いませんか?」
「一瞬、待ってください」
リオネルは言い、ヒルデガルドに11時から打合せだと告げ、彼女は頷き、
了解を取った。
「大丈夫です。では11時少し前にサブマスター室へ伺えば宜しいですかね?」
「いえいえ、おふたりを呼びつけるようにいらして頂くなどとんでもない! 30分後にブレーズ様、クローディーヌさん、そして私エステルの3名でホテルのスイートルームへお迎えにあがります」
……という事で、30分後ブレーズ以下3名が迎えに来て、
あいさつをし合い、リオネルとヒルデガルドはサブマスター室の応接へ。
早速、打合せが始まった。
真剣な表情のブレーズは、
「こちらはあくまでヒルデガルド様の安全が第一。万全の警備体制をしき、快適な散策が行えるようバックアップしたいと考えております」
対してリオネルも、
「ブレーズ様のお考えに賛同します。まずヒルデガルドさんの一番の護衛担当者は自分ですが、具体的な護衛方法についてお話しさせて頂きます」
リオネルは更に話を続ける。
「まず索敵のスキルを最大限発揮し、悪意を持つ危険人物、不審者が居ないかをチェックします。現時点で自分は、周囲5㎞の悪意の波動をチェック出来ます」
周囲5㎞の悪意の波動をチェック可能!!??
上位ランカーの索敵能力でもせいぜい百から数百メートルだ。
あぜんとするブレーズ達をよそに、リオネルは話を続けて行く。
「危険人物、不審者に対しては、威圧、フリーズ等のスキルで無力化、無傷で排除し、確保する手立てを考えております。補正がかかっている為、レベル50の自分より格上のオーガキングは完全停止、ドラゴン、巨人族にも結構な効果がありましたので、人間族等には充分に有効だと思います」
しれしれっと明かされるリオネルの持つ能力。
ブレーズ達は絶句状態。
「……………………………………………………」
だが、まだまだそれらは一端に過ぎない。
口止めしているからヒルデガルドは無言でにこにこと聞いているだけだし、
リオネルも夢魔法、転移魔法、飛翔魔法等を、
ここでぺらぺらと明かすつもりもない。
「ワレバッドの街中で剣、斧、やりなどの武器や属性攻撃魔法を使うのは法律により厳禁なので、万が一、他に守る手立てが全くない緊急事態の場合以外、武器魔法は使いません」
「……………………………………………………」
「平時の場合に敢えて使うのなら、素手の格闘術及び、武器なら、こん棒くらいでしょうか」
「……………………………………………………」
「まあ、いざとなったらヒルデガルドさんを抱え、自分は現場から速攻で離脱します。その間にそちらで不審者を確保し、逮捕してください。自分はワレバッドの街中ならば隅から隅まで知り尽くしていますし、時速70㎞以上で5時間以上走れますから、多分ですが誰も追っては来れません」
「……………………………………………………」
とんでもない身体能力も語るリオネル。
こちらもまだまだ隠してある能力があるが、驚かせるには充分だった。
し~んとする室内にリオネルの声だけが響いている。
「という事で、こちらの希望を言うのなら、護衛はせいぜい10名以内、俺とヒルデガルドさんから10mくらいは離れて頂くのが理想です」
ここまで話したリオネルは、ブレーズをまっすぐに見据え、
「いかがでしょうか? それらを踏まえ、警備体制のご検討を何卒宜しくお願い致します」
と言い、にっこりと微笑んだのである。
相当なものであった。
リオネルに対する深い愛情と思い入れが加味されているのは間違いない。
そのせいで、料理が数倍美味に感じているのかもしれない。
だが、生まれてからこれまで食べた料理の中で一番美味しかったと、
自分もぜひ習得したいと、ヒルデガルドは最高レベルの称賛をしたのである。
またエステルも、経験した高級レストランの料理に、
勝るとも劣らないと正直に感想を述べた。
多分、関係のない第三者が食べたとしても称賛の声は出ただろう。
凝り性で研究熱心、そして経験を重ねて来たリオネルの料理は、
もはやプロレベルに達していたのだ。
さてさて!
そんなこんなで、食事が終わり、3人でお茶を飲みながら、
デザートのケーキを味わいつつ、明日以降の打合せを行う。
ここでリオネルから提案。
「ヒルデガルドさんは冒険者ギルド総本部の各所を見学し、ショッピングもし、だいぶ人間族の社会にも慣れたでしょう。そろそろ、冒険者ギルド本部を出て、彼女をワレバッドの街中へ連れて行こうと思います」
「わお! リオネル様! ワレバッドの街中へ行くのですか! いよいよ次のステージへ進むのですね! 本当に楽しみですわ!」
リオネルの『提案』を聞き、菫色の瞳をキラキラさせ、
期待に胸をふくらませるヒルデガルド。
ここでエステルが反応。
挙手し、言う。
「以前にも申し上げましたが、ヒルデガルド様がワレバッドの街中へ出る際には、国賓への扱いとして冒険者ギルドの方で護衛をつけさせていただきます。これは遠方の領地巡回中のローランド様と魔法鳩便でやりとりをした上での命令です」
エステルの言葉を聞き、リオネルは、
「はい、エステルさん。いずれタイミングを見て、護衛の件はご相談しようと思っていました。ただ勝手を言って申し訳ありませんが、ヒルデガルドさんの周りを大勢の冒険者達で囲むとか、あまり物々しくというか、仰々しくしたくはないですね」
「成る程、分かります。周囲に護衛がたくさん居たら、街の散策を楽しめませんからね」
「ええ、とは言ってもヒルデガルドさんは最上級レベルの国賓です。大いに気を遣う冒険者ギルド、いえソヴァール王国の立場も理解できますので、護衛をつけて貰う事は了承します」
「ご了承して頂きありがとうございます、リオネル様。明日はブレーズ様もクローディーヌさんもおりますし、予定もそんなにきつきつではないと聞いておりますので、朝一番で私から話を入れ、スケジュールを調整し、時間を決め、一緒にご相談させて頂くという事で構いませんか?」
「はい、構いません。急なお願いを聞いて頂き、こちらこそありがとうございます。であれば俺とヒルデガルドさんは、ホテルのレストランで朝食を摂り、その後はこの部屋で待機しています。打合せの時間はそちらの指示に合わせますよ」
「了解です。明日の朝、私の方で確認し、すぐそちらへご連絡が出来ると思いますので、何卒宜しくお願い致します」
いくつかのやり取りを交わし……話はまとまった。
現在の時間は午後9時前。
あっという間に時間が経ってしまった。
まもなくエステルを自宅へ送る馬車がホテルの駐車場へ到着する。
と、その時、タイミングよく魔導通信機の内線が鳴った。
やはりというか、ホテルのフロントからで、早めに駐車場へ馬車が来たようだ。
これで本日はお開き。
エステルは深々と頭を下げる。
「ヒルデガルド様、リオネル様、いろいろお疲れ様でした。そしてごちそうさまでした。ではまた明日。本日はこれで失礼致します」
「ありがとうございます。本日もお疲れ様でした。エステルさん、私、駐車場までお見送り致しますわ」
「俺も一緒に見送ります」
「いえいえ、そんな!」
という事で、恐縮するエステルを、リオネルとヒルデガルドは、
馬車が待つホテルの駐車場まで見送ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……翌朝、ホテルのレストランで美味しい朝食を摂ったリオネルとヒルデガルド。
約束通り、部屋で待機。
ただその時間も決して無駄にはせず、ワレバッドの観光案内を手に、
リオネルはヒルデガルドへの『情報提供』を行っていた。
そんなこんなで、時間は午前10時前。
「るるるるる」と魔導通信機の呼び出し音が鳴り、リオネルが受話器を取った。
連絡を入れて来たのはエステルである。
「おはようございます! エステルです! お疲れ様です、朝食はお済みでしょうか」
「リオネルです、おはようございます、お疲れ様です、朝食は済んでいます」
「了解です。お待たせ致しました。ではご連絡致します。たった今、ブレーズ様のスケジュール調整が終わりました。本日のお打合せが可能となりましたので1時間後の午前11時から、サブマスター室にてのお打合せで構いませんか?」
「一瞬、待ってください」
リオネルは言い、ヒルデガルドに11時から打合せだと告げ、彼女は頷き、
了解を取った。
「大丈夫です。では11時少し前にサブマスター室へ伺えば宜しいですかね?」
「いえいえ、おふたりを呼びつけるようにいらして頂くなどとんでもない! 30分後にブレーズ様、クローディーヌさん、そして私エステルの3名でホテルのスイートルームへお迎えにあがります」
……という事で、30分後ブレーズ以下3名が迎えに来て、
あいさつをし合い、リオネルとヒルデガルドはサブマスター室の応接へ。
早速、打合せが始まった。
真剣な表情のブレーズは、
「こちらはあくまでヒルデガルド様の安全が第一。万全の警備体制をしき、快適な散策が行えるようバックアップしたいと考えております」
対してリオネルも、
「ブレーズ様のお考えに賛同します。まずヒルデガルドさんの一番の護衛担当者は自分ですが、具体的な護衛方法についてお話しさせて頂きます」
リオネルは更に話を続ける。
「まず索敵のスキルを最大限発揮し、悪意を持つ危険人物、不審者が居ないかをチェックします。現時点で自分は、周囲5㎞の悪意の波動をチェック出来ます」
周囲5㎞の悪意の波動をチェック可能!!??
上位ランカーの索敵能力でもせいぜい百から数百メートルだ。
あぜんとするブレーズ達をよそに、リオネルは話を続けて行く。
「危険人物、不審者に対しては、威圧、フリーズ等のスキルで無力化、無傷で排除し、確保する手立てを考えております。補正がかかっている為、レベル50の自分より格上のオーガキングは完全停止、ドラゴン、巨人族にも結構な効果がありましたので、人間族等には充分に有効だと思います」
しれしれっと明かされるリオネルの持つ能力。
ブレーズ達は絶句状態。
「……………………………………………………」
だが、まだまだそれらは一端に過ぎない。
口止めしているからヒルデガルドは無言でにこにこと聞いているだけだし、
リオネルも夢魔法、転移魔法、飛翔魔法等を、
ここでぺらぺらと明かすつもりもない。
「ワレバッドの街中で剣、斧、やりなどの武器や属性攻撃魔法を使うのは法律により厳禁なので、万が一、他に守る手立てが全くない緊急事態の場合以外、武器魔法は使いません」
「……………………………………………………」
「平時の場合に敢えて使うのなら、素手の格闘術及び、武器なら、こん棒くらいでしょうか」
「……………………………………………………」
「まあ、いざとなったらヒルデガルドさんを抱え、自分は現場から速攻で離脱します。その間にそちらで不審者を確保し、逮捕してください。自分はワレバッドの街中ならば隅から隅まで知り尽くしていますし、時速70㎞以上で5時間以上走れますから、多分ですが誰も追っては来れません」
「……………………………………………………」
とんでもない身体能力も語るリオネル。
こちらもまだまだ隠してある能力があるが、驚かせるには充分だった。
し~んとする室内にリオネルの声だけが響いている。
「という事で、こちらの希望を言うのなら、護衛はせいぜい10名以内、俺とヒルデガルドさんから10mくらいは離れて頂くのが理想です」
ここまで話したリオネルは、ブレーズをまっすぐに見据え、
「いかがでしょうか? それらを踏まえ、警備体制のご検討を何卒宜しくお願い致します」
と言い、にっこりと微笑んだのである。
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